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 : ソイルでセットしたのですが濁りが取れません。大磯砂の方が透明な水になりますか?

 ショップの店員さんから「立ち上がりが大磯砂よりも早い」と薦められて、ソイルでセットしました。でも2週間経っても水槽の中がスッキリしません。何となく白く濁った感じが続いています。濾材の一部を活性炭に替えてみたのですが、少し濁りが薄くなっただけで、やはり何となく濁っています。液体の麦飯石を使ってみましたが効果がありませんでした。ソイルだと“土”だから、大磯砂の水槽よりも少し濁っていて普通なのでしょうか。水の透明度を上げたいなら大磯砂に変えた方が良いのでしょうか?水槽は60センチ水槽で、フィルターはecco2231、2日に1度1/3の換水、亜硝酸は検出されなくなったので濾過バクテリアは足りていると思っています。


 : 濾過に関わる微生物が足りていない状態なのだと思います。いったん水槽内が順調に回り始めれば、水の透明度はソイルでも大磯でも同じになるはずです。

 ショップの水槽や写真などでご覧になったことがあると思いますが、順調に循環し始めた水槽の水はスッキリと透明で、顔を近付けて目を凝らしてみても濁りはありません。それは底床材にソイルを使おうと大磯砂を使おうと同じことです。頭の中だけで考えれば、ソイルは、土を水に入れるのですからその粉塵で濁りが続きそうな気もしますね。しかし実際は「ソイルだから透明度が低い」というようなことはありません。同じように透明になります。

  その理由は、微生物の働きがソイルの場合も大磯砂の場合も同じだからです。初心者の頃は、「水槽というのは、その汚れはフィルターの中の濾材に引っ掛けてられて濾し取られる仕組みになっている」と考えがちですが、実のところそれは少し違っています。
 水槽内の大きなゴミは、フィルターの中のスポンジやウールで濾し取られるのですが、アンモニアや亜硝酸に関して言えば、濾材の目に引っ掛けられるのではなく、硝化バクテリアによって分解・浄化される仕組みになっています(この点はすでにご理解されていますね)。また、フィルターの中を含め水槽内には様々な微生物が棲みついています。水中を浮遊する微細なゴミ=濁りの原因となっているものは、その微生物たちが捕集し、塊に変え、水を透明にする仕組みになっています。
 水の透明度を考えるとき、重要なのは微生物が捕集してくれる仕組みです。 水槽内のあらゆる場所・・・ガラス面や水草の葉面、底床の表面、フィルターの濾材の表面などに、微生物がたっぷりと繁殖してはじめて、水の透明度が確保されるようになります。
 もし微生物の存在を実感したければ、ためしにガラスの内側や、濾材の表面を指でこすってみてください。何かヌルヌル・ネバネバしたものを感じるはずです。それは微生物の分泌物です。それが水の汚れを取ってくれています。この仕組みは底床材がソイルであろうと大磯砂であろうと同じことです。

 さて、水の濁りを解消するには微生物の働きが重要、ということは、逆に考えれば、その微生物が少なければ水の濁りが発生する、ということですね。ご質問の水槽も、最大の問題は微生物が十分に繁殖していない点だと想像されます。「濾材の一部を活性炭に替えてみた」とのことですが、活性炭には水を透明にする効果がある反面、立ち上げ中に濾材を交換するということは、せっかく濾材の表面に棲みつき始めた微生物を失うということです。
 また、設置直後はともかく、2週間経過しても「2日に1度1/3の換水」というのは多過ぎるように思います。換水には濁りを排出する効果がある反面、微生物も排出してしまうと同時に中に残った微生物にもダメージを与えてしまうという側面があります。それで症状が収まってきているなら良いのですが、そうでないならば、しばらく換水は控え目にした方が良いように思います。

 他にも、微生物の繁殖を妨げるようなことはしておられないでしょうか。一度丁寧にチェックしてみてください。
 ソイルを使っている場合、よくある失敗は、“水草の植え替え”です。そもそもソイルを使う場合、水草は抜かずに、底床より上の部分をカットするだけで整えていくのが基本です。つまり、ソイルは、水草の植え替えをしないことが前提の底床材なのです。にもかかわらず、水草を底床から抜き取って再び植えてしまう人がけっこういらっしゃいます。特に水槽を設置したばかりの頃は、そのような知識がありませんし、レイアウトが思うようにならないために頻繁に水草を抜いてはまた挿す、ということを繰り返してしまいがちです。そうすると、底床の表面にできた微生物の膜を壊してしまいますし、水草の浄化作用も弱ってしまいます。さらに、それはキーパー自らが粉塵を巻き散らせて濁りの原因を作っているのと同じだと言えます。
 ですから、しばらくは水草の抜き挿しは厳禁です。また、水槽が落ち着いてからもソイルの水槽ではできるだけ水草は抜かないようにしましょう。
 あとは、細かなことの積み重ねで微生物の増殖を図ることが重要です。たとえば、ガラス面のコケ取りや濾材の洗浄を控えるといったことです。ガラス面にも微生物はびっしりと繁殖しますから、そこをガシガシ掃除してしまえばコケとともに微生物も当然減ってしまいます。私の場合、水槽の立ち上げ期にはガラスのコケ落としは前面しかしないことにしています。濾材は、詰まって水が止まってしまった時以外洗うのを控えます。加えて、経験上、テトラの『アクアセーフ』のような粘膜保護剤を多めに使うと微生物の増殖に向いた環境になるためか水槽の立ち上がりが早くなるので、ふだんは使っていなくても立ち上げ期にはよく用います。

 ところで、麦飯石の液体を入れられたようですが、それはまったくお勧めできません。たとえ一時的に濁りが収まったとしても、根本的な解決=微生物の増殖には直接つながらないからです。また本当の麦飯石ならば水の硬度が上がってしまい水草の育成に支障が出る可能性があります。さらに、いったん水槽に入れたら水槽から出せないものを入れるのは危険です。あとで自分で調整しようとしたときに取り出せないようでは困ります。硬度物質を放出する石の粉を水槽に入れるなどということは、硬度物質を吸着させるためにソイルを使っているのに、その環境を自分でぶち壊してしまうようなものです。

  よって、ご質問の水槽では、まず、「微生物を減らすようなことをしていないか」、「濁りの原因を作っていないか」をチェックし、その上で微生物の増殖を待つのが最善策だと思います。今の時点で大磯砂に替えるというのは、底床面に定着し始めているであろう微生物を壊滅させてしまうことになるので止めておくべきです。
  ソイルは、粉塵を巻き上げるようなことをしたとき一時的に濁りやすくなりますが、微生物の強力な働きによって大磯砂の場合と同じ程度の透明度まですぐに戻されます。良質のソイルの場合、大磯砂よりも微生物が繁殖し易いようで、むしろ大磯砂の場合よりも透明度が高く維持されることも珍しくありません。


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