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 : 大磯砂など海産砂のカルシウム分の除去に適した酸

 
『南国砂』という名前で売られていた砂で水草水槽をセットしたのですが、セットしたあとで、このような砂だと水草の大半が育ちにくいということを知りました。仕方がないので、いったん砂を取り出して貝殻を取り除こうと思っているのですが、酸で溶かす場合はどんな酸を使うのが良いのでしょうか。インターネットで調べると、塩酸や硝酸の他に食酢でされている方もいらっしゃるようですが、本当に食酢でもカルシウムが無くなりますか?お薦めを教えていただけないでしょうか。


 : 食用の酢かクエン酸をお薦めします。

 
 貝殻や珊瑚砂のカケラといったカルシウム分を取り除くには、これらが溶ければ良いのですから、酸ならたいていのものが使えます。しかし、処理するのは水草水槽に使う底床材です。酸の強弱や匂いの有無、入手しやすさ、費用の多寡、取り扱いの難しさなども考慮する必要があります。
 これらの点を踏まえて現在一般に用いられているのは、主なところで、硝酸と塩酸、酢酸(氷酢酸や『富士酢酸』、食用の酢など)、クエン酸の4種類です。
 これらの中で私がお薦めするのは、食用の酢とクエン酸です。

 食酢は、米酢でも穀物酢でも、りんご酢でも構いません。何でもOKです。たいした違いはありません。クエン酸も、食用のものでも工業用のものでも構いません。効果は同じです。
 食酢とクエン酸は処理に時間や手間がかかるなど弱点がありますが、海産砂を処理するのには十分な能力がありますし、安くすみます。加えて、手軽に扱えて大きなリスクが無いのが重要です。酸で海産砂のカルシウムを除去する目的は、あくまでも「水草水槽をうまく作ること」であって、所詮は個人的な趣味の話しです。得られる利益は「趣味で持っている草が育てやすい」というだけです。これに比較して、強酸を使用する場合、そのリスクは極めて大きく、扱いを誤ると皮膚に重度の炎症が生じたり、失明したり肺水腫を招いたりします。自分は扱い方を心得ていたとしても、目を離した隙に家族の誰か(特に幼い子供)が不用意に触れてしまうかもしれません。客観的な視点から比較すれば、強酸の使用は、得られる利益と負うリスクのバランスが極めて悪いと言わざるを得ません。
  よって、私は食酢かクエン酸を薦めします。

  この2種の違いですが、ポイントは<入手のしやすさ>と<匂い>です。食酢は匂いが比較的強く、町中のアパートでそのまま放置すれば隣室から苦情がくるレベルです。必ず食品ラップなどでフタをしておかねばなりません。それでも攪拌の際にはフタをとらないといけないので、そのたびに匂いが拡散します。ただ、どこのスーパーでも置いてありますし100円ショップでも500ml入りが買え(砂利15kg程度ならば8本ぐらい)るので、入手がきわめて容易なのが長所です。
  クエン酸は、大きなドラッグストアーならたいてい置いてありますが、地方の薬局だと取り寄せ扱いで何日か待たないとけいないことも珍しくありません。ただ、クエン酸には食酢のような強い匂いがありません。また、送料が別途必要になりますが通販で買うことも可能です。
  したがって、隣家や家族への匂いに配慮しないといけない町中で行うならクエン酸が良いと思います。一方、「庭に置いとけば問題ない」という環境であるならば食酢がお薦めです。どんな田舎でもお酢なら間違いなくすぐに手に入ります。

 ところで、もし、一人で住んでいらして、かつ、強酸の扱い方を心得ておられるのならば、強酸を使う方がリスクの大きさを超える利益を得られると思います。必要ならば強酸で処理することも検討して良いように思います。ただし、その場合でも、私は硝酸ではなく塩酸をお薦めします。
  塩酸と硝酸は、どちらも危険な薬品である点では同じですが、比較すると、
・硝酸は塩酸よりも有機物との反応が激しく、皮膚に付着するとより重篤な結果を招いたり、濃いものが木片や布に触れると発火する危険性が高い
・塩酸なら使用後に重曹(炭酸水素ナトリウム)で中和させ食塩にして容易に流すことができるのに対し、硝酸は中和で硝酸塩ができてしまうので、これを安易に大量に流してしまうと環境汚染の問題を深刻化させかねない
といった違いがあるからです。


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