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 : 大磯砂などの海産砂を使う前、酸処理することは必須なのでしょうか

  大磯砂(フィリピン砂)を敷いて水槽を立ち上げました。けれど水草の調子がイマイチで困ってます。いろいろ勉強したら、pHを測らないといけないみたいなので測ってみたら7.5でした。pHが高い原因は底床に使った大磯砂以外になさそうです。やはり酸処理せずに使ったのが悪かったのでしょうか。買ったショップで「大磯に混じっている少量の貝殻で水質が変わるようなことなんかあり得ない」と言われたのでそのまま使ったのですが・・。
  入れているのは、カーディナルテトラ、ブラックファントム、トニナ、ロターラ・ナンシヤン、リスノシッポ、ケヤリソウなどです。


 : 一概に必須とは言えません。必須かどうかは、どのような生体を育成するかによって変わってきます。


  ご質問には考えないといけない点が3つ含まれていますね。
 まずは一つ目、“大磯砂など海産の砂は水をアルカリ性にするかどうか”です。
 現在、水槽用に売られている海産の砂(大磯砂など)は、水槽にそのまま用いればほぼ間違いなく水槽の水をアルカリ側に傾けます。「あり得ない」というアドバイスを受けたそうですが、それこそ「あり得ないはなし」です。
 こういうことは、議論するよりも実際に確かめてみればすぐに分かる事柄です。水槽に水と砂を入れ、1年間ほど定期的にpHと硬度を計測するだけの話しです。これを砂と水の種類を変えながら6回ほど繰り返せばそれなりに信頼できる結果を得られるはずです(私はそうしています)。ごくわずかしか貝殻が混入していない砂でも水槽の水をアルカリ側に傾けるのに十分な影響力をもっているのが分かります。
 
 次に、「海産砂=アルカリ側に傾ける」ということを前提に、「水槽にとって必須かどうか」の問題です。
 この点は、「水槽の中でどんな水質を好む生体を、どう飼育するか」によって決まります。
 要・不要についての議論はときどき見られますが、議論の多くは、「どんな生体をどう育てるか」の前提を混乱させてしまっています。前提を固定すれば、次のように一定の結論が出ます。

    ○低硬度と弱酸性を好む水草の育成→ほとんどの海産砂で必須
    ○中性〜弱アルカリ性を好む水草の育成→望ましいが必須ではない
    ○低硬度と弱酸性を好む魚の飼育→望ましいが必須ではない
    ○低硬度と弱酸性を好む魚の繁殖→ほぼ必須
    ○中性〜アルカリ性を好む魚の飼育→ほとんどの場合で不要
   
 実際には、さらに「今入っている魚や水草を取り出してまで処理を行う必要があるのか」とか、「ソイルと入れ替えた方が良いのではないか」、「今の水草は綺麗に育たないまでも、まったく育たないものなのか」といった問題もあります。しかし、これらは各飼育者の考え方で決まるものですね。
 現状、「水草の調子がイマイチ」ということですが、この状態が我慢の範囲内であれば、わざわざ底床を取り出す必要はないと思います。しかし、「もっと綺麗に育てたい」ということであれば思い切って底床を取り出して酸処理するか、ソイルなどに入れ替える方が良いと思います。

 最後に3つめ。
 酸処理をするのは、水をアルカリ側に傾けるカルシウム分を溶かし取るためであることは上述の通りです。逆に言えば、カルシウム分が無ければ水をアルカリ側に傾けられることもないわけで、そもそも酸処理は必要ない、ということになります。
 市販されている海産の砂は、自然下で採取されてくるものなので製品ごと、ロットごとに品質が異なっています。貝殻やサンゴがたくさん混じっているものもあれば、ほとんど入っていないものもあります(なので、必要な酸の量にもけっこう幅があります)。さらに、流通量が少ないながらも、“まったく入っていないもの”も実際にあります。
 したがって、飼育方法としてはカルシウム分の酸処理が必要であっても、購入した現物に貝殻などが入っていなければ、当然のこと、酸処理は不要です。
 「ざっとで見た感じでは貝殻や珊瑚が入っていないけれど、酸処理しないでいいのか不安だ」という場合は、数日間水に浸けておきpHが急上昇しないか確かめる、あるいは、酸の中に1時間ほど浸けておいて砂粒の表面に泡がつくなどしていないか確かめることで判断がつきます。


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