HPを別窓で開く
 

 : 小さなクネクネした生き物が水槽の中に湧いています。駆除した方が良いのでしょうか。駆除方法も教えてください

 水草水槽をセットして2ヶ月ぐらい経ちます。ここまでは順調だったのに、昨日の夜、水槽を覗いていたら、ガラスに白いウネウネ・クネクネした小さな奴がたくさんついているのを発見してしまいました。水面の近くからクネクネしながら水槽の底に落ちていくのもいました。大きさは5mmぐらいで、白っぽい色です。これは魚やエビに悪い影響を与えないのでしょうか。駆除した方が良いのですか?駆除した方が良いならすみませんが駆除方法をご教授ください。


 : 「見て気持ち悪い」という以外はほぼ無害です。給餌を中心に水槽のバランスを見直すことで自然と減る方向へもっていくのが良い方法だと思います。

1. 現物を見ることができない状況で判断することはできませんが、いわゆる「ミズミミズ」でしょう。
 この、アクアリウムの世界で「ミズミミズ」と呼ばれている生き物ですが、本当のところは、ミズミミズであったり、アブラミミズだったり、イトミミズだったり、大型の線虫だったりプラナリアだったりします。アクアリウムの世界で苔でない藍藻や藻をまとめて「コケ」と呼んでいるのと同じです。ご質問の生き物ですが、大きさ・色・動きから判断すれば、いわゆる「ミズミミズ」のうちの本当のミズミミズのように思えます。しかし、もしかしたらイトミミズの小さいものかもしれませんし、ヒルである可能性もあります。そこのところはやはり現物を見ないと判断できません。ただ、正確な判断ができなくても水草水槽を維持する上では大した問題になりません。どれであっても対策はほぼ同じだからです。だから、まとめて乱暴に「ミズミミズ」と呼ばれているのだと思います。

2. さて、これらが『魚に悪い影響を与えるかどうか』ですが、私の経験から言えば、「心配要らない」です。また多くのベテランの方々が「いても影響は無い」と考えておられます。たまに「魚やエビに集まって食っているのを見た」といった報告も目にしますが、クネクネが大量に発生している水槽の中で、死にかけてほとんど動けなくなったエビや死んでしまった魚に集まっていた、というの場合がほとんどのようです。夜の寝ている間に襲われる可能性というのも考えられないことはないですが、特に心配が必要な確率では起きません。もちろん、積極的に魚やエビを襲うことに対する心配も要りません。

3. 次に『駆除する必要があるか』ですが、これは水槽の維持に対する考え方次第だと思います。このような小さな生き物は、水槽の中で水質を悪化させるのではなく、逆に、水質を急速に悪化させる物(魚の餌の食べ残しなど)を速やかに分解する役目を果たしています。したがって、水槽の中が安定しない場合にはあえて導入したいぐらいの“有益なもの”です。調子良く回っている水槽の中には目立たない量ながらほぼ確実に存在している生き物たちです。したがって、水草水槽の維持について「多様な生き物によって強固なバランスが保たれた水槽にしたい」と考えておられるならば、徹底的に駆除する必要はないでしょう。大発生しているならばその原因を取り除けば済む話しで、発生してしまった方をコントロールする必要性は低いでしょう。
  しかし、「水槽の中は魚と水草だけの綺麗な水槽にしたい。クネクネしたものは生理的に受け入れられない」という場合もあって当然です。見るのも嫌な水槽など、持っている意味がありません。自分の好む状態に仕上げることこそ水草水槽の最大の楽しみです。したがって、このような考えで維持されている場合には駆除した方が良いでしょうね。

4. そして、駆除する場合、その『方法』ですが、残念ながら今のところ「これが決定打だ」というようなものは存在しないと思います。
(1) 完全に除去するためには、水草も底床もフィルターの中のバクテリアもすべて破棄して一からセッティングし直す必要があります。この方法は大きな犠牲を伴うので「クネクネと同居するのは絶対に許せない」という場合に限られるでしょう。
  この点、ひょっとしたら「水槽の中に入れて殺す薬剤は使えないのかな?水槽の中に入れて済むなら簡単だろうに」と、思われるかもしれません。しかし、水槽の中に生き物を殺す薬剤を入れた場合、今度はそれによって死んだ生き物の死骸が水質を急速に悪化させるなど、別の問題が発生してしまいます。さらに、底床の中に潜んでいる分については完全に駆除できない、といった問題もあります。もし底床の中に少しでも生き残っていれば、薬効が切れた頃にまた増殖してきます。よって、結局のところ、完全駆除を行うならば、それなりの覚悟をもって全リセットを行わざるをえないのが現状でしょう。
(2) 「目に触れる分だけを適当に減らせれば良い」ということであれば、クネクネした生き物を捕食する魚を同居させるのが有効です。“腹が減れば”ちょっとずつながら食う魚はたくさんいるのですが、比較的高い効果が見込めるのは、グーラミーの仲間(ハニーやドワーフなど)や、メダカの仲間(黒メダカやアフィオ、カダヤシ、グッピーなど)、サンフィッシュの仲間(バディスやスカーレットジェムなど)、カラシンの仲間(マジナタスやベックフォルディなど)といったあたりです。お腹を空かせた状態を保ってやれば、個体差は大きいですが、そこそこ食べてくれます。これらの魚種の他にもアノマロクロミス・トーマシーやクラウンローチといったスネール駆除に効果がある魚も共通して役立ちます。ただし、プラナリアはおいしくないのか、大部分の魚がほとんど食べません。また、魚を入れても、イトミミズやヒルなど底床の中に潜り込む傾向が強いものは、その活動の中心を底床の上から底床の下に移すだけで、夜になって魚の活動が鈍くなったら大挙して底床の上やガラス面に上がってきたりします。よって、捕食者を使う対処法はあくまでも場当たり的な対症療法のレベルのものだと認識しておいた方が良いでしょう。さらに、クネクネしたものを食べる魚は、当然、他の魚の稚魚やエビも食べます。ですから、繁殖が行われている水槽やエビを飼っている水槽(たいていの水草水槽には入れられていると思いますが)には入れられません。腹がいっぱいならば食べないと思いますが、クネクネ駆除のために餌の量を絞ったりすれば、クネクネを捕食する前にエビを捕食し始めます。ですからこのような方法が使えるのは、一部の水草水槽だけになるでしょう。
(3) 私が最も根本的で現実的だと思える方法は、「水槽の中に入れるものを減らし、同時に水槽内の生き物のバランスをとる」という方法です。
  分解者である生き物がたくさんいるということは、水槽の中にそれだけたくさん分解されうるものがある、ということです。それはたいていの場合、餌のやり過ぎによって溜まったものです。水草水槽の場合、水槽の中にミジンコをはじめ様々な微生物や藻が発生します。そして魚やエビはそういった微生物や藻や、水草の葉の分解されかかったものも食べて生活しています。ですから、ベアタンクで魚を飼っているのと比べると、与えるべき餌の量は必然的に少なくなります。それにもかかわらず餌を毎日大量に与えていると、食べ残しが発生して水槽の中に分解されない(微生物による分解が追いつかない)まま少しずつ水槽に蓄積していきます。また、大量の餌は水槽の中の微生物では追いつかないほど大量の糞も発生させます。残餌や糞を換水や掃除によって順調に外に排出しているうちは水槽を問題なく維持できますが、いったん排出が滞った場合、それらがクネクネしたものを大量発生させる源になってしまいます。つまり、分解者が大量に現れる、ということです。
 したがって、根本的な解決法は単純です。水槽の中の“分解の対象になるもの”=すなわち、残り餌や糞や水草の枯葉などを減らせば良いのです。具体的には、底床やフィルターの中にすでに蓄積してしまっているヘドロ状のものを掃除で徐々に減らし(このとき一気に行うとバクテリアをすべて失ってしまう危険があるので日にち空けて行うことが肝要です)、同時に、与える餌の量を減らす、という方法が最も直接的でしょう。もちろん、「魚がたくさんいるので餌を減らせない」という状況であれば、魚を別の水槽に移して数を減らさなければなりません。また、水草の量を増やして餌の量や魚の量と微生物の量とのバランスをとる、という方法もあります。さらに、水温を上げたり光量を増やしたりして水槽の中の活性・新陳代謝を高め、それで全体のバランスをとる、という解決方法も考えられます。
  この点、濾過装置(フィルター)の増強などでも解決できそうに思えますが、水草水槽ではあまり有効でありません。水草水槽では濾過装置はたいてい過大なものがつけられているので濾過のスペースとして十分な広さが確保されていますし、濾過装置によって分解された物質も結局は水槽の中に戻ってきますから、水槽の中の物質の種類を変えてくれるだけで、物質の量を減らしてくれるわけではありません。よって、問題がコケの発生の問題などに置き換わるだけで根本的な解決になってくれません。
  やはり、水槽の中に入れる物を減らすことと、中の生き物の量のバランスをとることが根本的な解決方法です。この2つをいずれかの方法で実践すれば、水槽の中のクネクネした生き物もそのバランスに応じた数に自然におさまってくるものです。


BACK