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 : pHやGHの試薬などを買って水質を測ることは必要でしょうか

まだ水槽をセットしてから1ヶ月の初心者です。熱帯魚屋さんに行ったら、店員さんにpHやGHを測る薬を買った方が良いと言われました。お金の持ち合わせが無かったのでそのまま帰ってきてしまいましたが、そういうものは本当に必要なのでしょうか。以前金魚を飼っていた時は、無くてもみな元気に飼えていました。 


 : 「水槽をどのように楽しみたいと思っているか」、それ次第です。

 水の性質はpHやGHを含む数多くの要素で決まります。ためしに、お住まいになっている市町村の水道局のサイトを開いてみて下さい。水質検査の結果が公表されているはずです。カドミウム・水銀・セレン・鉛・シアンといった項目から、亜鉛・鉄・銅・ナトリウム・マンガンといった項目まで様々並んでいるのが分かるでしょう。これらは人間の飲用に供される水の性質を把握するためのものですが、魚や水草も人間と同様です。
 魚や水草を健康に育てようと思えば、当然、数多くの項目・指標をもって水の性質を把握しておかねばなりません。そうでなければ簡単に彼らを死なせてしまいます。人間よりも小さく、四六時中水の影響を全身で受け続けているのですから当たり前です。
 しかし、通常、アクアリウムの維持で用いられているのは水道の蛇口から供給される人間の飲料水です。つまり、水槽の維持者に代わって水道局が数多くの項目を測定し、安全であることを確認してくれている水、ということです。そのおかげで、水槽の維持者は水を水槽に入れるたびに水質検査をしないで済みます。
 ただ、水槽に入れた後で大きく変化し、かつ、水草や魚に深刻な影響を与える項目もあります。その代表的なものが、pHや水温、GH、KH、アンモニア、亜硝酸といった項目です。そこで、水槽を維持している人は、最低限としてpHやGHといった項目だけは自分で測定し続け、水質を把握しているのです。すなわち、水槽の水質は、“水質を決めている項目のうち生き物にとって重要な項目については水道局が、加えて、水槽の中で変動する項目のうち特に重要な項目については水槽の維持者が測定している”という、2段構えで把握されることになります。

 では、絶対にpHやGHを測らないと育てられないか、と言うと、必ずしもそうではありません。「飼育を始めてから一度も測定したこはないけれど元気に飼えている」という実例はいくらでもあります。それには理由があります。
 まずは、上述の点です。水道水を使っている限り、自分では何もしていなくても重要な部分はちゃんと水道局が検査・調整して供給してくれています。次に、水草や魚の適応力です。本来好む水質から少々外れた水質になっていても、生き物の方が身体を調整し、ある程度の範囲でなら適応してくれます。水質の変化が緩やかに起きている場合ならば驚くほど広い範囲で適応力をみせます。さらに、飼育方法の確立という点も大きいでしょう。現在は、「この場合には、この底砂にこんな濾過器をつけてこのように水を入れる。餌はこんなものをこれぐらい与える」といった一般的な方法論がだいぶん普及しました。ですから、その一般的な方法論にしたがっている限り、水草や魚が飼えないような水質になること自体が少なくなっています。
 したがって、基本的な水質検査がなされた水で、一般的な方法論に従い、適応力のある一般的な生体を飼育することを目的に、普通に楽しむ限りにおいては、あえて自分で水質検査を行う必要性は低いと言えます。よって、維持者がこのような目的・楽しみ方を目指しているならば、pHやGHの試薬の購入は「どっちでもいい」という程度のものです。
 一方で、アクアリウムの楽しみ方には、適応範囲の狭い生体を育てたり、育成環境に独自の工夫を加えたりする楽しみ方もあります。たとえば、アマゾン産の弱酸性の軟水でしか綺麗にならないの水草を育てたり、一定の硬度でないと卵を産まない魚を繁殖させたりすることに挑戦する楽しみ方です。ネット上を見る限りこのような楽しみ方をされている人が一番多いように思います。このような楽しみ方をするのならば、pHやGHの変化を把握することが当然必要です。水道の蛇口から出る水はふつう少しアルカリ側に傾いた水ですから、弱酸性を要求する水草などを育てようとすれば、pHを測りながら水を酸性側に調整しなければなりません。逆に言えば、測らなければきちんと調整できない、ということです。つまり、こういった楽しみ方をするならば、pHやGHの試薬や測定器具は必須と言えるでしょう。


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