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 : 魚に与える餌の量は、どのくらいが適量でしょうか。

 魚に与える餌の量のことを教えてください。立ち上げて3ヶ月ほどの水槽でテトラたちの調子も良い状態なのですが、最近黒いコケが増えてきました。それと、敷いてある大磯砂の中に赤っぽい汚れが溜まってきました。何となく与えている餌が多かった気がしています。でも、そんなに多く与えていなかったつもりです。みなさんはどのくらい与えていらっしゃるのでしょうか。初心者の質問なので分かりにくいと思いますが、どうぞよろしくお願いします。与えている餌の容器には「1日に最低2、3回、数分で食べつくす量を与えてください」と書いてありますが、それよりは少なく与えています。 


 : 水草水槽に入れる魚ならば、魚の消化器官の大きさと水を含んだ餌の大きさを想像し、その大きさを合わせるようにすれば給餌の極端な過不足を避けられます。

 どのくらいが適量かを示すのは、実はたいへん難しいことです。様々な要素で多くなったり少なくなったりするからです。たとえば、
 ・肉食性が強い魚なのか草食性が強い魚なのか
 ・飼っている水温は高めか低めか(高いと多く必要)
 ・魚は幼魚か成魚か(幼魚には高タンパクのものが多く必要)
 ・水流などで遊泳量(運動量)が多い環境か
 ・水槽の中の微生物は多いか少ないか
 ・水槽の中にコケが多いかどうか(多くの魚種が空腹ならコケも食う)
 ・油膜が多い水槽かどうか(メダカの仲間などはいわゆる油膜も食う)
 ・どのくらい効率の良い消化器官を持っているか(ディスカスなどは消化器官が複雑)
といった要素がすべて絡んで、「適量」が決まってきます。こういった要素を総合的に考慮すれば、高栄養の餌を少量ずつ頻繁に与えるのが良い場合もありますし、逆に、貧栄養の餌を回数を減らして1度にたくさん与えるのが良い場合もあります。また、付随して、換水など水槽の維持の仕方なども考慮に入れなければなりません。
 つまり、どのくらい与えたら「適量」かは、水槽1本1本で大きく異なるものなのです。ベテランの方々は、こういった要素と経験とを組み合わせて総合的に「適量」を導き出しておられます。
 しかし、判断材料が与えられても初心者の方が自分で導き出すのは難しいですよね。そこで、「何分で食べ尽くす量」といった表現が一応の目安として用いられているのだと思います。ただ、こういった表記には以前から疑問が出されています。と言うのも、実際、「数分で食べ尽くす量」というのを観察してみると、びっくりするぐらい大量です。「えっ、毎回こんなに与えてええんかいな?」と思うはずです。そして、その素直な感想は正解です。「数分で」=すなわち2〜5分で食べ尽くす量は明らかに多過ぎます。特に初心者の方の水槽には魚が多めに入っていますから、魚たちは競い合って餌を食います。そこに餌を与えたら、あっと言う間に食い尽くすため、「2〜5分で食い尽くす量」となると驚くほどの量になります。さらにそれを「1日に最低2、3回」も入れ続けたら水槽の水はすぐに富栄養状態になます。結果、キーパーは頻繁な換水に追われるようになるか早晩水槽自体が崩壊するかのどちらかの事態に直面するでしょう。以前、確かめるために、実験用の60センチ水槽を立ち上げたことがありますが、「1日に最低2、3回、数分で食べつくす量」を忠実に実践したところ、1ヶ月でpHの低下に悩まされるようになり、底床や濾材は餌の赤い色で覆われてしまいました。よって、この目安は“ゆっくり餌を食べる魚種が少量泳いでいる”といった水槽にだけ当てはまる、と考えた方が良いと思います。実際与える場合はもっと少なく抑えるべきです。
 ではどのくらいの量を与えれば良いのか、となると、それは上述のように水槽1本1本の事情によって大きく変わってくるのですが、私がアドバイスするときは、だいたい次のような基準を示しています。
 1.与える餌が水を含んで膨らんだ状態を想像する(実際に水をかけて確かめるとなお良し)
 2.対象の魚を見てその胃腸の大きさを想像する
 3.「胃の大きさ×匹数」=膨らんだ餌の大きさ になるように餌の量を決定する
まずは、このようにして決めた量を1日に2回与えます。そして、
  4.その後、魚が太り過ぎていないか・痩せてきていないかを2週間ごとに観察し、与える量を再調整
というようにすれば、極端に与え過ぎになったり少な過ぎになったりはしないはずです。そして、多くの場合、再調整を何度も続けていくと必要な餌の量がどんどん減ってくるはずです。時間の経過とともに水槽の中にミジンコなどが増えてきて、魚はそれで栄養を補完し始めるからです。
  上記の基準に従い実際に魚の胃腸の大きさと膨らんだ餌とを突き合わせてみると、グッピーやテトラの仲間の成魚にフレークフードを与える場合、1匹あたりの量は1cm四方のものが1枚ぐらいになるはずです。そして、それを収容している匹数分だけ水槽に投入すると、数分どころか1分もかからず欠片の1つ1つまで食い尽くしてしまうと思います。それだと餌を与える楽しみの時間が少なく何かモノ足りない気がするかもしれませんが、そこは我慢しましょう。それと、魚の胃腸の大きさを想像するときは、あくまでも“適当”で大丈夫です。胃なんて無い魚もいますし、腹部を見て「これぐらいかな」と想像できれば目安として十分です。


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