■GOOD AQUA■
水草水槽のセッティング・・・ダイジェスト編2

基礎知識を仕入れよう
  


 

 基礎知識と一口に言っても、その量は膨大です。したがって、そのすべてをここで挙げるのは難しいです。
 そこで、以下では、「これだけは知っておかないと、だれかに質問するにも困る」と思われるレベルで区切って挙げてみました。
 また、「どの本にも載っていない(載せにくい)こと」も書いておきました。

 

 

【 酸素と二酸化炭素の循環 】

○ 酸素(O2)は、水中の動物と水草の両方の呼吸によって消費され、二酸化炭素(CO2)に変えられます。

○ この二酸化炭素は、主に照明点灯中の水草によって酸素に変えられます(光合成)。

○ 共生水槽の中では、この2つの働きのバランスが、自然に作り上げられ、保たれるようになります。

○ ただし、二酸化炭素を人為的に添加すると、水草の生長を促進させることができます。酸素はその二酸化炭素を使って行われる光合成によって十分に生成されるので、通常、添加の必要はありません。

○ 実際の水槽の中では、バクテリアをはじめ、様々な生物が循環に複雑な変化を与えていて、このような単純な循環経路ではありません。

 

【 窒素の循環 】

○ 水槽には、主に「餌」という形で窒素の化合物が投入されます。このうち一部は魚によって身体に摂り込まれますが、大部分は糞=アンモニアとなって排出されます。

○ 排出された猛毒のアンモニアは、水槽内のバクテリアによって、これまた猛毒の亜硝酸に変えられ、さらに別のバクテリアによって硝酸塩に変えられます(餌→アンモニア→亜硝酸→硝酸塩)。

○ 硝酸塩は、共生水槽ではその多くが水草に吸収され、一部が別のバクテリアによって窒素に変えられ空気中に逃がされます。そして一部が水槽内にそのまま留まります。

○ うまく回っている共生水槽では、水草や植物プランクトンの一部が、またはその多くが、動物プランクトンなどに捕食されます。そして、その動物プランクトンも魚の餌になります。
 そのよう循環ができ上がった水槽では、餌をやる必要も少なくなってくるので、窒素の循環の環がほぼつながった状態で落ちつきます。

○ この「窒素の循環」については、魚主体の飼育が主流であった昔の情報が、いまだにそのまま流通していて、「窒素は硝酸塩の形で蓄積し続け、pH値も下がり続けるので、換水が必要になる」などと説明されていることがよくあります。
 しかし、実際に維持してみると、一旦バランスができ上がった水槽では、そんなことにならないことにすぐに気付きます。
 変な情報に惑わされないためには、硝酸塩量を定期的に測定し続けることが有効です。

○ 但し、窒素の循環の経路全体については、まだまだわかっていないことがたくさんあります。

 

【 水質 】

○アクアリウムの世界で、みなが使っている主な指標は以下の通りです。

水温
 : 最適な値は生体の種類によって異なってきますが、アマゾン産のものなら、だいたい25〜27度が適当です。

pH(ペーハー、ピーエイチ)
 : 「7」が中性、それ未満が酸性、それを超えるとアルカリ性を表します。最もよく使われる指標で、この趣味をしている人の多くがこのpHを測っています。
 アマゾン産の生体を飼う場合には6ぐらいになるように調整することが多いです。
 ちなみに、値が「6」なら酸性度は「7」の10倍、「5」なら酸性度は「7」の100倍となります(1違うと、水質がぜんぜん違う!ということ。)。
 本気でこの趣味に取り組む気でいるなら、高くても良い機器を買うべきです。最初は頻繁に使うからです。お勧めは、新電元の「PHモニターKS701」(実売約9700円)か、「PHモニターKS723」(実勢約13000円)です。
 お手軽で済ますなら、テトラの液体試薬(50回分)「テトラテストpH(淡水用)」(実勢約1300円)で良いと思います。

KH(ケイエイチ)
 : 炭酸塩硬度を表す指標です。水草の育成を確実にするなら、測定が必要になります。
 この指標も多くの人が測っていると思います。
 水中の陰イオンの量(主に炭酸水素イオン)を測定しており、これで水の硬度を知ることができます。
 また、この値は水中に溶けている二酸化炭素の量によっても変動するので、二酸化炭素の溶け具合を知る目安にもなります。
 アマゾン産の水草を育てる場合には、この値が低くなくてはならない場合が多く、4以下、できれば0〜1になるように水を調整します。
 測定には、テトラの液体試薬「炭酸塩硬度試薬」(実勢約1000円)を使うことが多いです。

GH(ジーエイチ)(ADA社ならTHがこれにあたります)
 : 総硬度を示します。このGHも水の硬度を知るための指標ですが、こちらはイオン化しているものもそうでないものも含めてカルシウムとマグネシウムの量を測っています。
 アマゾン産の生体には、だいたい3以下であることが望ましいです。
 この指標は、アクアリウムを始めるときに、これから使うつもりの水道水や井戸水について必ず調べるべきもので、この値が最初から10を超えるような地域については、軟水器を購入するのをお勧めします。GHの高い水を水槽に入れてから毎回低く調整するのはたいへん面倒かつ困難です。
 いったんアクアリウムを維持し始めれば、あまり測る機会はありません。GHの値を変化させるもの、たとえば岩石などをレイアウトに使っている時に測るぐらいです。ふだんは専らKHの方を測ります。
 測定には、テトラの液体試薬「総硬度試薬」(実勢約1000円)を使うことが多いでしょう。

アンモニウム
 : 魚の排出物から出る猛毒の物質です。
 水槽をセットしたばかりのときは、アンモニアを分解するバクテリアが水槽内に十分に定着していないので、この値が高くなることがあります。ただし、亜硝酸塩量を測っていれば、特にアンモニア量を測る必要はありません。勉強のために測るのは良いことだと思います。
 測定には、テトラの液体試薬「アンモニア試薬」(実勢約1900円)が良いでしょう。

亜硝酸
 : アンモニアと同じく生体にとって猛毒となります。アンモニアがバクテリアに分解されて発生しますが、これもバクテリアが少ないうちは水槽の中で増えるので、セット初期にはしっかり測る必要があります。はじめて水槽をセットするときは、必ず頻繁に測りましょう。
 測定には、テトラの液体試薬(50回分)「亜硝酸試薬」(実勢約1600円)が便利です。

硝酸塩
 : アンモニア・亜硝酸がバクテリアに分解されてでき上がるのが硝酸塩です。共生水槽では、一部、または多くが窒素肥料として水草に吸収されます。したがって、あまり測ることはありません。ただし、定期的に測っておくと勉強になりますし、正確な知識を持っていれば硝酸塩に関する変な情報に惑わされることもありません。
 測定には、テトラの「試験紙硝酸塩」(実勢約1300円)が手軽で良いです。

・その他
 : その他には、・水道水の残留塩素量、・藻類の発生と深く関わる燐酸塩の量、・水中の導電性物質の量、・溶存酸素の量、・溶存二酸化炭素の量などを測ることがありますが、あまり一般的ではありません。

 

【 全般 】

○ 水槽をセットしたばかりのときには、魚の糞などを分解して無害化してくれるバクテリアたちが、まだ水槽内に十分には繁殖していません。
 したがって、水槽をセットしても、すぐに魚やエビを水槽に泳がせることはできません
 よって、水槽と魚は、同時に買って来てはダメです! 
 先に水槽をセットし、水草を植え、水槽内に水の浄化のためのバクテリアが殖えてから、魚やエビを泳がせます。
 水槽をセットしてから、魚を入れられるようになるまでは、ふつう、55日程度かかります。ここであせって、バクテリアのまだ少ない水槽に魚やエビを泳がせると、必ずと言って良いほど死なせてしまいます。ですからあせりは禁物です。

○ たいへん残念ではありますが、アクアリウムの趣味の世界では、変な商品がたくさん存在しています。購入にあたっては気をつけないといけません。
 もちろん、多くの方が、この現状を憂慮しています。

○ 良心的なショップを見つけることは非常に大切なことです。乏しい知識で変なアドバイスをする店員がいたり、変な商品を言葉巧みに売りつけるショップも、残念ながら多いからです。

○ 水質を良くしたり変化させたりする効果を謳っている商品には、特に注意が必要です。ひどい副作用があったり、逆にまったく効果がないものもあります。

○ 共生水槽のセッティングの場合、水質を変化させるものは、たとえそれが濾材であってもバクテリア剤であっても、基本的に不要です。「水質を変化させないもの」という視点で器具を選ぶのが安全だと思います。

○ アクアリウムの世界では変な情報も多いです。専門誌であっても、「???」な情報が載っていたりします。盲信してはいけません。

○ 意見の対立があるテーマの場合、専門誌が過去に間違った情報を流したことが原因となって、大多数に支持されている意見の方が間違っている、などということもあります。そういう争点を検討する場合、要注意です。

○ 同じようなことですが、誰かが間違った情報を、もっともらしく流し、みながそれを信じたために、ネット上で、「どこのサイトにも書いてある事なのに、実はそれは間違っている」なんていう事柄もあります。自分で実際にやってみて確かめるか、実際にやってみて確かめた人を探すのが賢明だと思われます。

○ 水槽の中で起きている様々な現象は、実はまだほとんど解明されていません。分かっていることの方が少ないのです。
 「水槽の中のしくみはこうなっている!」とか、「水槽の中でそんなことが起きるはずがない!」などと断言している意見には、要注意です。

○ 情報が集約されていて、使い易いのは次の本です。これ1冊をもっていれば、図鑑と飼育法・維持法の重要な情報を一通り得ることができます。
 この本にもところどころ変なことが書かれていたりしますが、そういう箇所は比較的少ないです。総合情報本の中では、今のところこれが一番だと思います。中途半端な本を何冊も買うより、これを1冊買うことをお勧めします。

  「新熱帯魚入門 全面改訂・大増補版」
緑書房 2,800円(込) A4 522p H9.2.10

図鑑(魚1000種+草100種)としての機能の他に、飼育方法や水槽のセットの仕方、魚病の対策方法、水質についての解説など盛りだくさんの内容です。これ1冊あれば、基礎知識をばっちり身につけられるはずです。

※ 以上の他にも、必要とされる基礎知識はたくさんありますが、そのうちいくつかは、あとで「セットしてみよう!」の中でも出てきます。

01.10.10
01.10.18
(GHの説明を訂正)



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