■GOOD AQUA■
水草水槽のセッティング・・・ダイジェスト編〜1

水草水槽はおもしろい
  


 

 “アクアリウム・水槽”に何を入れて楽しむかは人それぞれですが、一般には

1.魚だけ(あるいは水草だけ)を入れて楽しむ方法
2.魚と水草を一緒に入れて楽しむ方法(一般的に「水草水槽」と呼ばれているもの)

という2つの楽しみ方に大別されるでしょう。

 このうち「2」の一般的な“水草水槽”では、魚・エビ・水草のいずれかが水槽の“主役”として楽しまれているのが現状です。たとえば最近流行の『ネイチャーアクアリウム』では魚があくまでも主役であり水草はその舞台としての役割を果たす、とされています。


 しかしこのコーナーで解説しようとしているアクアリウム(水槽)はちょっと違っています。このコーナーの水槽では「水槽内の生き物全部が主役」となります。すなわち

3.魚と水草に加えて植物ブランクトンや動物プランクトンなど様々な生き物も含めて楽しむ方法

について解説しています。



 水槽内の生物すべてが調和を保ちながら共生している水槽に、私は『調和水槽』あるいは『ハモニアス アクアリウム(HAMONIOUS AQUARIUM)』という名前をつけています。
 みなさん、水草水槽の中には「魚が酸素を消費して二酸化炭素を生産し・そして水草がその二酸化酸素を消費して酸素を生産する」という循環ができ上がることはよくご存知だと思います。『調和水槽(ハモニアス アクアリウム)』は、その酸素-二酸化炭素の循環に加え、水槽の中に食物連鎖といった物質の循環をできるだけ多く実現することでより高い完成度の生態系を実現させようとする水槽です。この水槽では、いったん水槽内がうまく回り始めたなら、以降あまり手をかける必要がなくなります。現在一般的な水草と比較すると魚の餌やりも換水も数分の1の頻度で済むようになります。(※1)

 ただ、この『調和水槽』、水草や魚やミジンコなどの育て方の知識に加え、一般的な水草水槽の維持についてもある程度知識が無いと難しい部分があります。たとえば、コケが発生し始めたときにそのコケを放置しておいたら数日後にどのような状態になるかある程度予想できる知識が無ければそのコケをすぐに排除すべきなのか放置すべきなのか判断できません。またたとえば、ミジンコが水槽の中に見つからない場合、その原因が水槽内の環境にあるのかミジンコの餌の不足にあるのか、あるいは自分がミジンコを減らしてしまうようなことをしてしまったことにあるのか、そこのところが判断できなければ適切な対処もできません。
 ですから、まずこのコーナーでは『調和水槽』の一歩手前の『半調和水槽』とも言うべき水槽を作ってみようと思います。完成された『調和水槽』のように魚の餌やりや換水を減らせるようなところまで仕上げるのは難しいですが、魚も水草もミジンコなどの微生物もすべてが主役にできる面白い水槽であることは間違いありません。そして、水槽がうまくまわり始め水槽内の完成度が上がってくれば自然に「調和水槽」に移行していく可能性が高い楽しみの多い水槽です。

※1
魚と水草のバランスがとれた水槽は、従来から「バランスト アクアリウム」、「平衡水槽」、「ネイチャー アクアリウム」あるいは「ナチュラルアクアリウム」といった名前で呼ばれています。また同様の意味で「調和水槽」という呼び名も使われています。
このうち、熱帯の魚や水草を主体にして作られる「バランスト アクアリウム」や「ネイチャー アクアリウム」と、今から作ろうとしている「(半)調和水槽(=ハモニアス アクアリウム)」とは、「“水槽内のすべての生き物が主役”と捉える」点、そして「“調和を作る”という観点から発想する」点で根本的な違いがあります。また器具を極力用いない方向の「平衡水槽」や「(従来の)調和水槽」とは、「調和を考える範囲が酸素-二酸化炭素の循環や窒素の循環だけに留まらない」ところで一線を画すことになります。
(この部分は“アクアリウム”の変遷についてある程度知識をもっていないとよくわからない話しかもしれません。始めたばかりの人にとっては特に必要のない知識なのでなので、一読されてよく分からなければ飛ばして次へ進んで下さい。)




 さて、この「半調和水槽」、“どこがおもしろいのか”というと、「“全部”がおもしろい!」というのが私の正直な意見です。

 離れたところから水槽を眺めてみると、美しい魚がきらめく気泡をつけた鮮やかな水草をバックに泳ぐ姿が見られます。それは人工物では決して再現できない素晴らしい景色です。
 また逆に、水槽にぐっと顔を近づけて中を覗きこんでみると、そこには様々な生き物がお互いにバランスを保ちながらその一生を送っている姿が観察できます。
 水槽の中では、卵が産みつけられ、稚魚が生まれ、育ち、そしてまた卵が生まれる、そんな生命の循環が休むことなく回り続けています。ある時期に特定の生き物が大発生したと思えば、今度はその生き物を捕食する別の生き物が大発生し、そしてまた別の生き物がそれを捕食しながら殖えて・・・といった大自然のダイナミックな営みが繰り広げられるのをわくわくしながら観察できるのです。 では、水槽からすっかり離れてしまった場合はどうでしょうか。
 実は、この水槽なら、頭の中だけで楽しむことも十分に可能なのです。毎日起きる水槽の中の様々な現象を、「なぜああなるのかな?こうだからかな?」と推測して楽しむのです。
 また、「今度のレイアウトはああしてみようか、こうしてみようか・・」とあれこれ想像するのもとても楽しいはずです。

 このように、今から作る水槽はその小さな部分から大きな部分まで、すべてが私たちを楽しませてくれます。目を楽しませてくれるだけでなく、知的好奇心まで刺激してくれるのです。

 どうでしょう、この驚きに満ちた素晴らしい水槽、実際に自分の部屋にセットしてみたいと思いませんか?

 ただし、注意してください。私たちがこれからすることは、水槽の中の生物たちが調和を作り上げるための「土台を用意すること」だけです。私たちが調和した生態系を作り上げることは不可能です。用意された土台の上に調和を作り上げるのは、水槽の中の生物たちの分担です。私たちのしごとは、彼らがしごとをし易いようにサポートすることです。決して、自分で生態系を作り上げたり、それをコントロールしてやろうなどと考えてはいけません。それは、間違い無く、「無謀な挑戦」です。
 あくまでも「土台作り」に徹してあとは水槽自体の調和をとろうとする力に委ねること、これが大切なポイントです。


 では、いよいよ実際のセッティング方法です。

01.10.08
04.10.24改訂



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