水槽の選択2(水槽総合)
  


02.05.30 02.06.27補筆


 

 前稿では、水槽のポイントをひとつずつ挙げてみていきましたが、ここでは、水槽をタイプごとに検討してみようと思います。

 

■ 様々なタイプの水槽

 販売されている水槽には、ごくごく一般的な四角い水槽から、複雑な形状に成形された水槽まで、様々なものがあります。以下、それらの代表的なものを見てみましょう。

 

【スタンダードな水槽】

 現状、長方形のガラス水槽が、もっとも多く売られています。次にポピュラーなのが、長方形のアクリル水槽でしょう。

 長方形の水槽の中で、最もよく売れているタイプは、ガラスの60センチ水槽(幅60奥30高36)です。製造数が多いために、もっとも安価でもあります。

● オールガラス水槽
 最近人気があるのが、ADAのフチ無し水槽(=いわゆる“オールガラス水槽”)です。「キューブガーデン・クリア」、「キューブガーデン・P(プールタイプ)」、「キューブガーデン・H(ハイタイプ)」、「キューブガーデン・C(キューブタイプ)」といったラインナップになっており、5面のガラスをシリコンボンドで接着しただけのシンプルなデザインが特徴です。

ADA『キューブガーデン(旧ウィルドグラス)60−P』
(幅60奥30高36、底値5500円程度)です。
 この水槽は、透明度の高い5枚のガラスをシリコンボンドで貼り合せてあるだけで、フチなどが無いため、とてもすっきりした外観になっています。
 輸送されてくるときは、水槽の上下のそれぞれ4隅に発泡スチロールがクッションとしてあてがわれ、その上下からダンボール箱でサンドイッチにされてきます。
 この画像は、到着して上側のダンボール箱と発泡スチロールだけを取り除いたところです。

画像提供:ZEEBさん

 

 新しい「キューブガーデン(旧ウィルドグラス)」は、底面の4辺に、このようにシリコンが多く盛られたものがあるようです。

情報・画像提供:zabbyさん

 

 旧『ウィルドグラス プールタイプ(新キューブガーデン・P)』を使った水草レイアウト水槽(幅90奥45高45、実売価格24500円程度)です。
 ADA社はこのタイプの水槽ではシリコンの接着部が目立たないことを強調していますが、写真撮影時にフチが目立たなくなるかどうかは、光の当て方次第だと思います。光の当て方によっては、半透明の枠がついた水槽と大差なく目立ちます。
 メタルハライドランプなどを使い、水槽の上面を開放状態にして水槽を楽しむなら、この(新)キューブガーデンが総合点で一押しです。

レイアウト・画像提供:あげいんさん(美しいレイアウトが多数掲載されています)

※ ADAの以前のラインナップでは、“キューブガーデン”という名称はガラス一体成形の水槽につけられており、上述の水槽には“ウィルドグラス”という名称が付されていました。しかし、2002年度からは、旧キューブガーデンがカタログからはずれ、旧ウィルドグラスが“キューブガーデン”という名称に変わっています。

 

● 『ニッソー NEWスティングレー NS-106』

 前面の左右が曲げガラス加工されている水槽です。全体にしっかりした作りで、発売されてから年数が経っていることもあり、信頼性も高いです。また値段もほどよくこなれています。
 サイズは幅60奥30高36で、重量は7キロほどあります。

【スタンダードな水槽についての私の意見】

 フチ有りタイプなら、お勧めは上の『ニッソー NEWスティングレー NS-106』です。信頼性が高く、安いお店なら3980円で買えます。

 フチ無しタイプなら、『ADA キューブガーデン』シリーズがお勧めです。幅60奥30高36の『プールタイプ』が安いお店だと5500円ぐらいです(フタ用のフックが付属しています)。より透明度が高い『キューブガーデンクリア』の同サイズでも16000円ぐらいです(フック付属)。

 値段の安さで選ぶなら、「フチ有り」で、そのフチが太いタイプです(下の画像参照)。古い型の水槽なので、ときどき目玉商品として安売りされています。1980円ぐらいです。一度、950円で売られているのを見たこともあります。

 

 

 

【 オールインワン水槽 】

 濾過器や照明器が最初から水槽に組み込まれているタイプです。
 このタイプの水槽は、最初にそれだけ購入すれば、必要な器具の主なところが一通り付属してくるため、入門的な水槽としてよく売れているようです。

 ただし、このオールインワンタイプには、重大な欠点があります。それは、夏場の水温上昇です。
 初心者の方の勘違いによくあるのが、「“熱帯魚”だから、暑さには強い」というものです。しかし、“熱帯”の意味は、1年を通して日本の冬のように低温にならない、という意味であって、熱帯魚は決して高温に強いわけではありません。熱帯魚の代表的な産地であるアマゾン川では、熱帯魚は1年を通じて25〜28度程度の水温で暮しています。したがって、日本の夏場の30度を超える水温には耐えられない魚が数多くいます。
 この点、オールインワン水槽は、照明の熱やポンプのモーターの熱が水槽内にこもりやすい構造のため、特に高温になりがちで、熱帯魚を飼育する上で致命的な欠陥をもっていると言えます。
 オールインワン水槽を購入するにあたっては、この点を十分留意しておかねば痛い目にあいます。

 しかし、逆に言えば、熱がこもる問題をクリアーできるのなら、魅力的な水槽セットとなります。たとえば、年中無休のお店で店頭に水槽を置くような場合です。1年を通じてエアコンで室温が調整されている環境なら、このような水槽が、見映の点からもお勧めです。

● 『ルームメイト』
 オールインワン水槽は、90年代のはじめに大ヒットした製品です。その後、各社から様々なオールインワン水槽が発売されましたが、そのオールインワン水槽というものを一般に定着させる役目を担ったのが、ニッソーの『ルームメイト』です。

『ルームメイト901』(265*280*365、17L)
 底面と背面がスノコ状になっていて、その両方で濾過を行う構造です。底面にはヒーターも、背面にはモーターも備わっています。
 他のオールインワン水槽と同じく、夏場の水温上昇が激しく、高温に強くない生体はみなやられてしまいます。
 そこでうちでは、夏場は水槽ごと北向きの部屋へ移動させ、フタを開けて扇風機の風をあてて使っています。水槽を丸ごと簡単に移動できるのが、このタイプの水槽の良いところでもあります。
 このR901がよく売れたため、のちに、改良型の901Nや、2回り大きい902(40L)も発売されました。

● 『 cute
 部屋の角に設置しやすいように、奥が90度の角をもった扇形の水槽があります。メーカーはいくつかを組み合わせて使うのも勧めています。

 コトブキ 「cute(キュート)」 ※
 幅30奥30高36、25W

 インテリア性は高いですが、フタを解放した状態で扇風機の風を当てることなどが難しいため、やはり夏場の水温上昇に悩まされがちです。


● 『パラドーム』1

 コトブキ 『PARADOME 950R』
 幅90奥50高50  約200L
 オールインワン水槽の高級機種です。水景を迫力のある見え方にすることに注力されている水槽で、前面は手前へせり出すようなドーム型に、そしてその両端は曲げ加工がされて水槽の継ぎ目がないようにしてあります。また、通常よりも深さがありるのも特徴です。
 レイアウト・画像提供:yokooさん


● 『NEWスティングレー 3シリーズ』
  “E-310”などの名が冠されているので“3シリーズ”と呼ばれる水槽です。

 ニッソー製で、こちらもオールインワン水槽の高級機種とも言うべき水槽です。 ※
 上面の後ろ半分に濾過槽があり、前半分には蛍光灯と集中コントロールパネルがあります。タイマーも標準装備されています。
 この機種は上面前半分がフタになっており、ここを開けるとエサやりも簡単にできます。また、風をあてて熱気を逃がすのもわりと簡単にできます。加えて、格好良いです!


● フランスで売られている水槽の1つ

 幅80奥25-30高40、80L、20W1灯
 前面が湾曲しているタイプの水槽です。
 ヨーロッパでは、日本に比べるとインテリア製を重視するため、様々な形の水槽が売られています。ただし、逆に機能性は少し犠牲になっているものが多いようです。
 特に照明については、蛍光灯が充実しているものが少ないようです。

 レイアウト・画像提供:ひげまるさん


● 『NEWアトラスG-3』

 FIVE PLAN 『NEWアトラスG-3』 ※
 幅62.5奥33.5高53.5
 約60L

 ドライ&ウェット濾過に加えて蛍光灯も2本ついていてわりと充実した装備ですが、水草を育てるにはやはり光量が不足しがちです。熱は比較的逃がし易い構造になっています。

【オールインワン水槽についての私の意見】

 オールインワン水槽は、他に買い足すべきものも少なく、また、持ち運びしやすいこと、置き場所をとらないことなど、様々なメリットを持った魅力的な水槽です。したがって、特に初心者の方は、最初の水槽としてこの種の水槽を購入しがちです。
 しかし、実際に使ってみると、上述の通り、夏場の水温上昇が致命的な欠陥となり、水温を下げるためにとても苦労することになります。その苦労に懲りて、別の水槽を買い直す方も少なくありません。夏場は毎日24時間、冷房がきき続けているような場所に置くのでなければ、避けた方が賢明です。その維持の難しさから、ベテランの方でも、オールインワン水槽にはあまり手を出さないと思います。
 また、交換部品の入手のしにくさも問題になるかもしれません。販売しているオールインワン水槽のすべての交換部品を在庫しているようなお店は、まず無いです。
 加えて、飼育の経験を重ねていくと、自分が使いやすいように設備に手を加えたくなる部分が出てくることがありますが、オールインワン水槽だと、その自由度が大幅に制約されます。特に水草水槽にしたい場合、付属している照明器具の光量では物足りなくなり、照明を増設したくなることがよくありますが、実現するのはなかなか難しいです。

 ただし、オールインワン水槽は、なんと言っても、「これを買えば最低限必要なものが全部ついてくる!」、「見た目がスマート!」という2つの大きな魅力があります。
 したがって、上述のような問題をクリアーできる環境にあるのなら、とても優れたセット水槽という見方もできます。

 オールインワン水槽の欠点をクリアーするための実践的な情報を得たい場合は、次のページをお勧めします。★かつかつわーるど★の、<アクアリウムワールド>の中にある“オールインワン小型水槽を極める”というコーナーです。

 

 

 

【 変形水槽 】

 四角い水槽以外にも、さまざまな形の水槽が売られています。

● 六角形の水槽

 ヨーロッパの水槽メーカーからは、様々な形の水槽がリリースされています。そしてこれもその1つです。
 たとえば「ネイチャーアクアリウム」では“水景のみ”を問題にしますが、ヨーロッパでは、水景だけでなくその入れ物である水槽の外観まで含めて、観賞の対象とされる傾向があります。したがって、画像のように、正面から見ると水景に2本の縦線が入るような水槽であっても人気があります。 このあたりは、好みの問題であって、どちらが良い、という問題ではありませんね。 ※

(照明は別メーカー(JAQNO)のものです。)


● アクアテラリウム用の水槽

 水槽の中には、アクアテラリウム用のものもあります。
 画像の水槽では、前面の一部が切り欠いたような形状になっており、奥の上段から水が流れ落ちるところと、下段のアクアリウムの部分がよく観察できるようになっています。※

【変形水槽についての私の意見】

 ヨーロッパ製を中心とした変形水槽は、大きなショップででもないとなかなか実物を見る機会がないと思います。しかし、調べてみると、流通・販売されているものは、意外にたくさんあります。店頭に置かれていないだけで、ショップに置いてあるカタログで注文すれば手に入るものが多いのです。
 変形水槽は、家具調の水槽台と組み合わせると、とても優雅で重厚な雰囲気を演出することができます。最近はオールガラス水槽が全盛で、「フチがあると水景の邪魔になる」と言う方が増えていますが、変形水槽を中心としたフチの有る水槽は、使い方によってすばらしいインテリアになってくれます。
 したがって、フチがあるかどうか、水槽の継ぎ目が見えるかどうかは、あくまでも「好み」の問題と捉えるべきで、どちらが良いかダメかの問題ではないと思います。
 水槽を部屋に置く場合、水槽にいつも顔をひっつけて観賞するわけではないと思います。少し離れたところから水槽全体が視野に入るような状態で楽しむことが多いはずです。
 そのように、実際に水槽を設置した場面を想像してみれば、水槽のフチが少し太いかどうかという問題よりも、水槽全体が部屋の中でどう見えるか、ということの方が重要な要素だということがわかります。
 したがって、最初から、フチのある変形水槽などを選択肢からはずすのではなく、これらも含めて検討するのが良いのではないでしょうか。

 


「※」印の画像は、「ときわ熱帯」さんでnobuhiroさんが撮影して来てくださったものです。
快く画像を使わせてくださった皆さま、どうもありがとうございますm(_ _)m



HOME
 
BACK