水草水槽のセッティング4・・・上部フィルター編

完成までの道のり 2
  


02.04.08


 

(5) 57日後

 投入したビーシュリンプや魚たちのおかげで、枯れたケヤリソウが綺麗に無くなりました。
 また、枯れて真っ黒になっていたリスのシッポから、藍藻にやられていない新芽が生えてきています。ウィローモスとヘテランテラも良い具合に茂ってきました。

 

(6) 81日後

 この頃になると、この立ち上がりの激動期を乗り越えた水草たちが、勢いを取り戻してきます。

 左側を見ると、ロターラ ロトンディフォリアが復活してきています。また、ウィローモスやヘテランテラはさらに勢力を拡大しています。
 中央ではリスノシッポの新芽が伸び、脇芽もでているのがわかります。
 右側については、実は藍藻が復活してきているのが観察されました。そこで、その部分に当る光を遮るためにネグロウォーターファーンを浮かせてあります。

 水草の生長が良くなってきたということは、根の周りにつく植物と共生関係にあるバクテリアが増えたり、濾過が安定してきたり、水草そのものが新しい環境への適合を終えた、ということです。
 すなわち、ここまでが水槽の「下塗り」であり、ここからがその下塗りの上に自分の好みの色を乗せていく段階、ということです。
 したがって、ここまでは基本的に「放置」しておかなければなりませんでしたが、ここからは色々と手を入れて自分の好みに仕上げていくことができます。

 また、水草の生長が良くなってくると、新たに配慮しないといけないことがでてきます。1つは、栄養分の消費であり、1つはCO2の消費です。どちらも、このタイプの水槽でもっとも制約を受ける「光の量」に合わせるよう、コントロールしていかねばなりません。

 この水槽では、この時点で液肥を注射器で底床の下へ注入しました。「ハイポネックス 洋ラン液」と「ハイポネックス 活力液」を4ccずつ水50ccで薄めたものです。ただし、この液肥の濃度・量水槽の状況によって大きく変わるので、様子を見て決定することになります。
 同時にCO2の供給源の1つとして魚を追加し一部入れ替えました。この時点で入っている魚の種類と数は次の通りです。
・アカヒレ8
・メダカ 8
・エンドラーズ ライブベアラー 30
・ファイアーテトラ 9
・カーディナルテトラ 8
・マジナタスペンシル 8
・オトシンクルス ネグロ 1
・ビーシュリンプ 20

 また、同じくCO2の発生量を確保するために、これ以降、魚の餌(「テトラ ステープルフード」)を多め多めに与えるようにし、換水はできるだけ避け、底床掃除は一切しないようにしました。こういう細かい配慮の積み重ねによって、ミジンコなどの微生物の量が増え、CO2の発生量が増します。

 

(7) 93日後

 藍藻の拡大がおさまったので、巨大な浮草を取り除きました。しかし、光があたらなかったために、藍藻だけでなく、水槽の右側にあったハイグロフィラがほとんどダメになってしまい、後ろに植えたクリプト キリアータが見えています。
 また、リスノシッポが更に伸び、ヘテランテラとウィローモスも繁茂しています。

 この頃に注意しないといけないのは、トリミングのタイミングとその仕方です。
 画像のリスノシッポのように、新しい綺麗な芽が水面に達すると、これを摘みとって下半分の汚い草体と植え替えたくなります。
 しかし、このタイプの水槽ではそれは危険です。摘み下ろされた新芽は、急に水面から離されるために受ける光の量が激減し、光合成が十分にできずに、最初のようにまたコケだらけになってしまいがちなのです。
 したがって、この画像ぐらいの長さであれば、まだトリミングは「我慢」です。もう少し長くなってから摘み下ろすようにします。

 この水槽には、ここで、トロピカ社がリリースしているモスの1種を追加しました。藍藻に覆われてしまう危険性が低くなったからです。
 また、適度に光を通しつつ、水中の余分な栄養を吸収してくれるアメリカンスプライトを少量浮かせました。

 

(8) 124日後

 セットから4ヶ月が過ぎ、この水槽の環境に適応した水草が、水面を覆うようになりました。このようになれば、もう水槽内の生態系がうまく回り始めているはずです。右上端に少し見えているマクランドラ ナローリーフや、中央のリスノシッポが、CO2の強制添加無しで綺麗に育っていることでも分かります。これらの水草は、底床内の微生物が発生させるCO2などを利用していると考えられます。

この水槽の底床表面を拡大すると、カイミジンコなどがたくさん観察できます。ただし、これは夜間急に照明をつけたときの画像で、日中はほとんど見つかりません。魚に食われないように底床の中に隠れているからです。

 

換水について:

 ここまで、換水はほとんどしていません。それは、「CO2の発生源の役割を果たす微生物がダメージを受けることをできるだけしたくない」という理由からです。
 ただし、水草の生長に原因不明の不調が現れたときは、例外的に換水を行わなければなりません。おそらくそのようなときは、量を測定していない物質が水の中で過剰になっているからです。また、換水をしたときには、必要な微量元素を補う意味で、「ハイポネックス 活力液」のようなものを入れると水草の生長に効果があります。

肥料について:

 原則として、「足りなくなったら補給する」という姿勢で臨みます。「生長に備えて施しておく」という姿勢だと、失敗する可能性が高いです。

CO2の強制添加について:

 ここで紹介している水槽には強制添加をしていません。水槽内で発生するCO2の量をできるだけ多くし、それを逃がさないようにするだけで、比較的少ない光量に対応するのに十分なCO2量を確保できるからです。
 これは、逆から言えば、「CO2の強制添加をしてはいけない」ということではなく、「CO2の強制添加は不要」ということです。
 したがって、もし経験不足などから維持がうまくいかず、CO2の量を確保することができないようであれば、ためらわずに強制添加をすべきです。「上部フィルターだからCO2がみな逃げてしまう」ということはありません。「CO2がみな逃げてしまう」わけではなく、「外部密閉式フィルターよりも逃げ易い」というだけです。それに、既述の放散を防止する対策を施してあれば、無駄になる量は気にならない程度です。上部フィルターを使っている場合であっても、強制添加をするとしないとでは、水草の生長はまったく違ってきます。
 ただし、あくまでも「比較的少ない光の量に合わせること」を念頭においてその添加量を調整しなければなりません。
 このタイプのセットで使う添加器具としては、私は「発酵式」をお勧めします。CO2の発生量はこれで十分確保できますし、夜間も上部フィルターによる換気のおかげでCO2過剰になりません。また、何より手軽に用意できるところが良いです。

 この水槽は、うまく回り始めているため、最初に植えたときは枯れてしまった水草の種類も、もう植えても大丈夫になっています。そこで、レイアウトにトニナやスターレンジ、パンタナル レッドピンネイトなども追加しました。

 この時の注意点は、やはり「光のあたり方」です。あまりに短いものを植えると光が届きませんし、水槽の奥の方に植えるのも危険です。必ず最初から茎の長いものを、中景から前景に植えるようにします。

 



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