水草水槽のセッティング4・・・上部フィルター編

完成までの道のり 1
  


02.04.02 02.04.05修正


 

 1.水槽のセットが終わったら、いよいよ水草の植栽です。

 植栽については、いくつか知っておくべきことがあります。

 A.最初に植えた水草は枯れ易い

 B.最初に植えたときに枯れた種類も、あとで植えると順調に育つことが多い

 C.「光のあたりにくいところ」「水流が強いところ」の2つに着目する必要がある

 の3つです。上部フィルターでセットする水草水槽にはこのような特徴があるのです。

 

Aについて

 最初に植える水草は、あまり順調に育ちません。それまで売られていた、あるいは育成されていた環境と、新しく植えられた上部フィルターでセットされた水槽での環境が、大きく違い過ぎるためだと考えられます。

 したがって、最初に植える水草には適応力に優れた種類を選ぶのが、「コツ」です。
 具体的には、

・ハイグロフィラ ポリスペルマ
・ヘテランテラ
・ロターラ ロトンディフォリア
・ウィローモス
・サジタリア ピグマエア

などです。


Bについて

 育成条件の幅が狭い水草は、この上部フィルターでセットしたばかりの水槽に植えると、多くが枯れてしまいます。
 そして、そのたくさんの水草が枯れてしまった状態を見て、多くの方が「あ〜、上部フィルターでは水草水槽は無理だぁ〜」と判断してしまっているように思われます。そして、もしそうなら、それは「早計」と言わざるを得ないでしょう。

 このタイプの水草水槽では、新しく導入された水草には、上述のように、強い適応力が要求されます。このとき、水がいわゆる「こなれた状態」になっていないと、水草は、「条件の大変化」と「こなれていない水」のダブルパンチを受けることになり、絶え切れなくなるのです。
 しかし、これがセットから相当の日にちが経過していて、水が「こなれた状態」になっていると、「条件の大変化」だけに耐えればすみます。
 したがって、最初に植えてだめだった種類でも、セット後、相当の時間が経過した水槽に植えてやれば、今度は順調に育つとこうことがよくあるのです。

 ちなみに、いわゆる「こなれた状態」の水というのは、pHがやや低下し、KHが低目で、様々なバクテリアやプランクトンがそこに住んでいる状態の水です。多くの場合、やや黄色がかっています。詳しい研究がされていないようなので、はっきりは言えませんが、おそらく植物の色素などが入っていると思われます。また、水の分子の並び方なども最初とは変わっていると言われています。


Cについて

 水槽上面の後ろ半分に濾過槽が置かれて蛍光灯が前半分にしかないという状態なので、当然のことながら、後ろ半分には光があたりにくくなっています。
 また、水の吸水口付近や排水口の下あたりは、たいへん水流が強いです。
 したがって、この2つのことをよく考慮した種類選定と配置が求められます。
 具体的には、排水口の下には、ヤマサキカズラやアヌビアスのように、光がそれほどあたらなくても育ち、かつ、硬い草体をもっていて水流に負けない種類の水草を配置します。また、水草を植えずにそこには石や流木を配置するというのも良いです。
 背面付近には低光量に耐えられる水草を植えるか、あるいは、思い切って「植えない」ということも考える必要があります。

 

2.では次に、時間の経過を追った実際の水槽を見てみましょう。

 

(1) 植栽の翌日

 どんな草が最初の植栽に向いているかを示すため、枯れるのがわかりきっている種類も含めて、様々な種類を植えてみました。自分のためにセットするときには、もちろんこんな無茶なことはしません。

 水草は、他の水槽で殖え過ぎているものをもってきました。

 土の左右が盛り上げてあるのは、単に「好み」の問題で、「コツ」ではありません。平坦でも問題ありません。

 前列に見えているウィローモスは、川原で拾ってきた石にウィローモスを糸で巻きつけたものです。
 ウィローモスがついていない石は、左右を盛り上げた土の崩れ留めのために埋め込んであるものです。
 この土留めの石は、表面にはあまり見えていませんが、実際は小さ目のものが20個ほど使われています。

左側、最後列から前へ

・(10センチ幅の無植栽地帯)
・ハイグロフィラ ポリスペルマ
・ロターラ ロトンディフォリア
・グリーン マクランドラ
・ロターラ マクランドラナローリーフ
・パンタナル レッド カボンバ
・ケヤリソウ
・サジタリア ピグマエア
・フローティング ルドウィジア
・ハイグロフィラ ロザエネルヴィス
・ウィローモス
・サジタリア ピグマエア
・フィランサス フルイタンス(浮草)

中央

・アマゾンチドメグサ
・リスノシッポ

右側、最後列から前へ

・クリプトコリネ キリアータ
・シペルス ヘルフェリ
・ロターラ マクランドラ ナローリーフ
・ハイグロフィラ ロザエネルヴィス
・アンブリア
・ヘテレンテラ
・サジタリア ピグマエア

 

(2) この後、「2日空けて1/3の換水」を2回繰り返しました。
 この水槽では貧栄養の赤玉土を使っていますが、もし栄養の豊富な「アクアソイル アマゾニア」を使用するなら、2回だけでなく、「3日空けて」そして「4日空けて」と、徐々に換水と換水の間隔を空けながら、長く換水を続ける必要があります。そうしないと、栄養過多になって、コケだらけになってしまします。このあたりは、ちょっとした水槽の条件の違いで必要な換水のタイミングや量が変わるので、「様子を見ながら」と言うしかないです。

 

(3) 20日後

 2回の換水の後、何もせずそっとしておいた水槽の様子です。この水槽には、ここまで肥料は、底床下も含めてまったく入れていません。「うまく成功させるコツ」で述べたように、このタイプのセットでは、光の量が少ないので、水草の生長がはっきりと見られないこの時点で肥料を入れると、光の量とのバランスがとれないからです。
 また、この時点では魚やエビも入っていません。

 画像ではわかりにくいですが、水槽全体を藍藻が覆ってしまっています。もちろん、前面のガラスにもべったりとついてしまったのですが、中の写真が撮れないので、前面ガラスについた藍藻だけは三角定規でこすり落とし、1/3換水を1回行いました。
 前面の土が掘れてしまっているのは、水をバケツで、ザバーッと入れたせいです。ならすとまた粉塵が舞い上がるし、めんどうだから放ってあります。

 20日経過したところで、セット初期には育ちにくい水草が悲惨な状態になってしまっています。藍藻にも覆われているので、実物はもっとすごいことになっていました。

 アップで見ると、下のような状態です。

赤玉土の表面に藍藻が入り込んできています。
底床の表面全体に薄く藍藻が広がり、底床から発生してくるCO2が閉じ込められてしまっています。
左側奥に植えられたケヤリソウです。生長が止まり藍藻がべったりついたために、「徹夜あけで脂が浮いて固まってしまった頭」のようになってしまっています。
左側手前にあるウィローモスは、少し生長してきていますが、やはり藍藻に覆われてしまっています。
ウィローモスの左に横たわっているのは、わかりにくいですが、「かつて パンタナル レッド カボンバ であったもの」です。
中央やや右寄りに植えられているリスノシッポの様子です。元の草体は完全に生長が止まり、真っ黒になってしまっています。その根元から新芽が伸びて来てはいますが、それも先が藍藻に覆われてしまって、生長不良でピンク色になってしまっています。

 で、ここで、何をすべきかというと、何もしません。ヘタにいじると、せっかく水槽自体の力でバランスをとろうとしているのを、じゃましてしまうことになりかねないからです。

 

(4) 52日後

 「52日」というのには、意味はありません。たまたま撮影の時間ができたのがこの日だった、というだけです。

 

 

 この頃になると、セット初期には育ちにくい水草の種類が決定的になっています。

 左後方の光があたりにくいところに植えられたロターラの仲間はほとんど全滅状態です。フローティングルドウィジアは浮いてしまい、また、ケヤリソウは枯れて真っ白になっています。

 ケヤリソウの手前にあったハイグロフィラ ロザエネルヴィスは生長が止まっていますし、中央右寄りにあるアマゾンチドメグサは、茎が腐って千切れてしまっています。
 右側に植えられたロターラ マクランドラ ナローリーフは、なんとか生き延びていますが、葉はほとんど残っていません。

 一方、ヘテランテラとウィローモス、シペルス、クリプト キリアータなどは順調に生長を続けています。右側のアンブリアも大きくなってきています。

 また、藍藻がすっかりおさまっています。
 この水槽では、藍藻がおさまるのに、約6週間かかりました。

 ここまでのところ、水槽にはまったく手を入れていません。換水も施肥も行っていません。

 ところで、「52日」と言えば、外部密閉式フィルターを使いCO2を添加している水槽だと、もう、ある程度は格好がついてくる頃です。
 それに比べると、この水槽はこのように悲惨極まりない状態です。
 したがって、水草水槽のことがよく分かっていない方がこの状態を経験すると、
「2ヶ月経ってもこんなん状態や。上部フィルターを使って水草水槽なんか無理なんや〜。」と思い込んでしまうのです。

 しかし、最初の「上部フィルターで水草水槽」で述べたように、このタイプの水草水槽は、完成までに時間が長めにかかるのです。
 この時点で最悪の状態になっているということは、ここから水槽内が安定に向かうということなのです。

 それなのに、この時点で、「上部フィルターでは無理だ」と判断してリセットしてしまうのは、あまりにももったいな過ぎます。

 ここでもう1度、「うまく成功させるコツ」で挙げた“すべて長めのスパンで見て判断する”というコツを思い出してください。

 さて、この水槽には、ここでビーシュリンプを20匹と、ブラックモーリー1匹、ペンシルフィッシュ2匹を投入しました。枯れた草を食べて肥料にしてもらいたいからです。

 



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