水草水槽のセッティング4・・・上部フィルター編

うまく完成させるコツ
  


02.03.20


 
 水草水槽にはあまり向いていないと言われる上部フィルターを使っても、そこそこに「見れる」水草水槽は作れます。
 偶然にうまくいくこともありますが、いくつかの知識とコツをつかんでおけば、より確実に作れます。

 以下その知識とコツを列挙してまいりますが、要点は、こうです。

 「上部フィルターを用いる水草水槽では光の量が厳格に制限される。
したがって、他の要素はこの光の量に合わせなければならない。
そしてその結果、水槽内の変化は緩やかになるので、それに合わせた対応が必要になる」

 

 ではもっと詳しく説明してみたいと思いますが、内容の一部については実際の手順の中で説明した方が分かり易いので次稿以降にも載せてあります。

 

1.常に「光」の量の制限を意識する

・・・ 上部フィルターを水槽の上面に置くのですから、当然、設置できる照明器具の種類や数が通常より少なくなります。この事実は、上部フィルターを用いる水草水槽を維持する上であらゆるところで関わってくるため、しっかり認識しておかねばなりません。「上部フィルターでは水草水槽は無理」と考えている人の多くは、この事実をあまり重視していないように思います。

 

2.常に「光」・「栄養」・「CO2」のバランスを意識する

・・・ これは上部フィルターを使った水草水槽に限ったコツではありませんが、ここでは特に重要になります。常にバランスを考えながら水槽の手入れすることが必須となるからです。

 

3.「栄養」と「CO2」の量は「光」の量に合わせるようにする

・・・ 上の1と2から必然的に導き出されるコツです。光の量に厳格な制限がある以上、他の2つの要素は光の量に合わせて考えなければなりません。光の量に釣り合わないぐらい多くの栄養(肥料)を投入したり強制的に大量のCO2を添加しても「百害あって一利無し」です。この手の失敗はよくしてしまうので特に注意が必要です。

 

4.バランスはやや低位で維持されることを分かっておく

・・・ コツ1〜3の帰結です。
「ネイチャーアクアリウム」に代表されるような強光量・高栄養・頻換水・CO2多添加で維持される水草水槽では、栄養・CO2・光の3つの要素のバランスが高位で維持されます。一方、上部フィルターを用いる水草水槽では、上述の通り「光」の量に厳しい制約があるために、前者と比較するとやや低位でバランスが保たれることになります。この点を十分に分かっておかないと、バランス点を無理に引き上げるような暴挙についでてしまいます。

 

5.すべて長めのスパンで見て判断する

・・・ 「光」・「栄養」・「CO2」のバランスがやや低位で維持されるのですから、水槽の中の変化は、高位でバランスが保たれている水槽よりも緩やかになります。たとえば、「植栽後の葉の生え変わり」、「コケの発生から収束」、「水質の悪化・安定」などが少し長めのスパンで起きます。したがって、たとえ何か状態が悪くなることがあってそれがなかなか回復しなくても、あせってはダメです。回復するにも時間が長めにかかるのです。あせって手を入れると回復が絶望的状況に自分で追い込んでしまいかねません。。

 

6.CO2の発生を促し、かつ、放散を防止する

・・・ 「魚を多めに収容すること」と、「微生物を死なせるようなことは一切避けること」の2つでCO2の発生量を確保します。換水や不必要な底床掃除などは微生物を減らしてしまうので極力行わないようにします。
 また、発生したCO2を逃がさないように水の空気との接触を減らす工夫も大切です。(CO2を逃がさない工夫については、「知識と実践の壷」の中にある“●上部フィルターでCO2を逃がさない工夫”をご参照下さい)
 上部フィルターの水草水槽では、強制的に添加してまで溶存CO2量を増やさなくても、水槽内で順調にCO2発生していてかつ逃がしていなければ、それだけで光の量に十分見合う量を確保できます。既述のように光の量が少なめなのでCO2の量も少なめでバランスがとれるのです。
 CO2を強制的に添加すれば、しないときよりも各段に水草の生長が速くなりますが、必ずしも必須のものではありません。CO2が順調に発生しているような安定した水槽では、強制添加をすることでかえってバランスがくずれることが多いです。CO2の不足の症状が見られた場合、まずは自然なCO2の発生を促す対策と放散の防止策を施し、それがうまくいかないときに、はじめて強制添加に踏み切るようにします。

 

7.2灯式の蛍光灯を使う

・・・ 既述の通りこのタイプの水槽では光量の制限がネックになります。したがって蛍光管が1本しかついていない1灯式蛍光灯器具より、2本ついた2灯式の蛍光灯を使った方がうまくいきます。1灯式か2灯式かの差は、2灯式と3灯式の差よりもはるかに大きいものです。ぜひ蛍光灯だけは、2灯式のものを。

 

8.土系の底床材を使う

・・・ 底床は、ADAの「アクアソイル」シリーズか赤玉土を使います。
 水槽セットには海産の砂やセラミックのものがついている場合が多いので、ここをご覧の方の中にはすでにこういったものを敷いてしまっているかもしれません。 
 しかし、海産の砂でいろいろな種類の水草を育てるのはベテランの方でも簡単ではありません。「いまさらめんどう臭いがなぁ〜」という気持ちはわかりますが、ぜひ、中身をいったん外に全部出して土系の底床材に取り替えてください。
 お勧めは、「アクアソイル アマゾニア」です。赤玉土などは若干維持が難しかったりするからです。
 1灯式蛍光灯&海産砂という組み合わせだと、弱酸性を好む一般的な水草にとっては二重苦です。ベテランの方ならともかく初心者の方には維持するのがとても難しいと思います。

 

9.弱酸性を好む水草を最初から植えない

・・・ CO2の強制添加をしていないので、pHの降下はもっぱら底床の土の効果に依ることになります。したがって、土がpHを上げる物質を吸着してpHが下がってくるまでは、弱酸性を好む水草は植えない方が安全です。
 ただし、枯れるのを覚悟の上で最初からいろいろな種類を植えておくのも良いです。同じようにセットした水槽でも、育つ水草は異なります。最初から植えておくと、その水槽に合った種類が生き残り、かつその環境に適した草体に育ちます。

 

10.後景を工夫したレイアウトにする

・・・ 上面の後ろ半分には上部フィルターがくるので、その下になるレイアウトの後景部分はどうしても光が不足しがちです。したがって、レイアウトを考えるときは後景に工夫が必要です。具体的には、ミクロソルムやクリプトコリネのような光量が少なくても平気な水草を配置したり、後景に植栽しないスペースを設ける、などです。
 また、上部フィルターから水が落下してくる真下には、その水流と水圧を考慮した水草の配置が必要です。具体的には、アヌビアスや一部のクリプトコリネのような硬い草体の水草を配置する、石を配置する、などの工夫です。

 

 



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