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水草水槽のセッティング・・・ダイジェスト編5

毎日の世話
  


 

<水質の測定>

 水草水槽を維持していく上で、水質の管理の指標として特に重要なのは、pHとKHと亜硝酸量の3つです。そこで、この3つの指標について、理解をしておきましょう。

1.亜硝酸のチェック

 水槽内では、生物の死体や排泄物から、魚やエビにとって猛毒であるアンモニアが発生します。そして、このアンモニアはさらにバクテリアに分解されて亜硝酸となります(この亜硝酸も猛毒です)。そしてこの亜硝酸も、別のバクテリアに分解され、硝酸塩に変えられます(硝酸塩はほぼ無毒です)。
 いったん安定した水槽の中では、この一連の変化がスムーズに起きていて、魚やエビは安全に暮らせるようになっています。
 しかし、水槽をセットしたばかりのときは、水槽内にバクテリアが十分に定着していないために、アンモニアと亜硝酸の蓄積が起き易いです。したがって、アンモニアと亜硝酸の量をよく監視しておく必要があります。
 ただし、実際のところは、亜硝酸の量だけチェックし続けていれば、特にアンモニアの量は測る必要はあまりありません。理由は以下の通りです。

 水槽をセットした時点からバクテリアが定着して水質が安定するまでの、アンモニア亜硝酸硝酸塩の蓄積の状態を模式的に表すと、下の図のようになります。
 つまり、亜硝酸を継続的に測定していて亜硝酸が増え始めたなら、アンモニアが分解されて亜硝酸になるのですから、それはアンモニアの蓄積が減り始めたのを示すことになります。
 また、亜硝酸の量が減り始めたなら、亜硝酸は分解されて硝酸塩になるのですから、それは硝酸塩の量が増え始めている合図になります。
 したがって、このように亜硝酸の量だけをチェックしておけば、アンモニアと硝酸塩の増減がだいたい判断できるのです。よって、アンモニアの量を測る必要性が低いわけです。

 しかし、水槽の中の状態が、この図のように推移することを確かめるために、あえてアンモニアや硝酸塩の量も測ることは、もちろん勉強にはなります。
 したがって、もし余裕があるなら、私はこの2つも測定することをお勧めします。そうすれば、本に書いてあることと異なった結果も発見できるはずです。確かな目を養うためにはたいへん有益なことだと思います。

 さて、亜硝酸の測定ですが、水槽セット後に亜硝酸の量がいったん増加したのち、また低下し尽くすまで、セットした翌日から1日おき、または2日おきぐらいで測定し続けると良いでしょう。

 ところで、セットしてから1〜2週間ぐらいするとコケが発生し始めるので、このコケを除去&防止するためにエビを導入することが多いのですが、亜硝酸の量があまりに多過ぎると、エビが死んでしまいます。
 したがって、エビの導入のタイミングは、この測定結果とコケの生え具合の両方を見ながら判断することになります。

 

2.pHKHのチェック

 ソイルを底床に使っている水槽では、セットしてから日毎にpHとKHが低下するのが普通です。これはソイルがその土粒の表面に硬度物質を吸いつけることが主因です。
 そして、そこで換水をすると、pHとKHが一時的に上昇します。これは、新たに硬度物質が水槽内に持ち込まれるからです。

 南米産の生体を水槽に入れるつもりのときは、このpHとKHは低い方がよいので、セット初期にpHとKHがいったん下がったら、その付近の値で維持するように心掛けます。具体的には、換水時に一度に大量に水を入れ換えない、また、換水自体も必要最小限にする、などに気をつけます。

 pHとKH、特にpHについては、水槽をセットしてからは以降ずっと、測り続けることになるのが普通です。ただし、維持の技術が上達してくると魚や水草の調子を見れば、器具で測らなくてもpHが分かるようになります。
 そのためにも、最初のうちは頻繁に測って、「pHがこの値だと、この水草はこうなる」といったことを積極的に記憶するように心掛けると良いでしょう。

 

 さて、このような水質管理を前提に、以下、水槽をセットしてからの維持についてを時系列的に見てまいりましょう。

 

<セット当日>

1. まず、照明と二酸化炭素添加装置の調整をしましょう。

 照明は、1日に8〜14時間ぐらい点灯するようにタイマーをセットします。とりあえずは、10時間でセットしてみましょう。このとき、1日の中で最低8時間は真っ暗な時間ができるように気をつけます。そうしないと、コケの発生や水草の生長不良などの問題が発生します。

 二酸化炭素の大型ボンベは、絶対に子供が倒したりしないように、きっちりと固定しておいて下さい。これは大切なことです。
 二酸化炭素の添加は、点灯時〜点灯1時間後ぐらいに開始し、消灯1〜2時間前に停止するようにタイマーをセットします。
 添加量は、この時点では、ほんのわずかにしておきます。細かい気泡が一筋、チョロチョロ出ているぐらいで十分です。後日、水草が育って二酸化炭素の消費量が増えてきたときに、徐々に添加量も増やしていきます。

2. セットした後、数時間したら、必ず水漏れがないかのチェックを行います。フィルターや水槽回りをよく見て、水がにじんできているところがないか確認します。ヒーターやサーモの電線を水が毛管現象で伝って漏れてくることもあります。

3. サーモスタットの設定温度が26度前後になっているか、温度計も26度前後を指しているかチェックします。

4. 次に、微生物の発生を促す処置を行います。
 市販のバクテリア剤があれば、ここで投入します。市販のバクテリア剤については、そのバクテリア自体が繁殖して水槽にすみ着くような製品はあまりないと思います。一時的に水槽の中で活動するだけのものが多いはずです。ただし、そのバクテリアを餌にして他の生物が繁殖することを期待できるので、入れないよりは入れた方が良いと、私は思います。

 私の場合、その他に、パン作り用のドライイーストや、釣り用のサナギ粉、赤ちゃん用の粉ミルク、きな粉などをそれぞれ1〜2つまみ、水槽水で溶いて投入することが多いです。これらは、微生物の餌となります。
 このようなものを水槽に入れると、1〜2日後に水が激しく白濁することがよくあります。この白濁は、様々な微生物が急激に大量に発生したためです。顕微鏡で観察すると、色々な生き物が泳ぎ回っているのが観察できます。
 そして、この白濁をそのままにしておくと、続いてこれらの生物を捕食する別の生物が急速に増殖します。このとき、水はまだ白濁したままです。
 そしてこの捕食者たちは、やがて餌となる微生物を食べ尽くし、自分たちも数を減らしていきます。そうなると、水槽の水の透明度が急速に回復します。

5. ミジンコなどのプランクトンを増やしたい場合は、別容器で殖やしてから水槽に投入するのも良いです。

 その方法ですが、まず、田んぼや畑の乾いた土、あるいは腐葉土や、花壇の土を大さじ2杯ぐらい用意します。このとき、水の中の土は避けた方が良いと思います。寄生虫などの持ち込みの危険性が高いからです。
 採ってきた土は、塩素を抜いた3リットル以上の水に入れ、日当たりの良い場所で26度以上に保ちます。そうすると、何日かした時点で、肉眼で見えるぐらいのプランクトンが湧いてきます。これをスポイトで吸いとって水槽に移すわけです。

6. 最後に、水槽水のpHとKHの値をチェックしてメモしておきましょう。

 

<翌日>

1. 最初に、水漏れがないか、ヒーターが誤作動していないかのチェックを再び行います。

2. 二酸化炭素の添加量もチェックします。新品のスピードコントローラーだと、つまみが緩んできて添加量が急増したりしていることがあるからです。

3. pHとKHの値もチェックしておきましょう。ソイルの働きで、pHもKHも低くなっているはずです。

 

<3日目>

 フィルターに、活性炭やそれに類するものを入れている場合、2日経つと、水が「スッキリ」とは言えないまでもだいぶん澄んでくるはずです。
 もしこの時点でも水の濁りがひどい場合は、フィルターの吸い込み口や吹き出し口に近いところに活性炭のネット入りのものを置いてみて下さい。
 換水はお勧めしません。

 右の画像は2日後の様子です。
 

 

<4〜5日目>

1. まず、pHとKHの値をチェックします。
 こうしてチェックしておいた値は、うまく立ち上がらなかったときにその原因を突き止める重要な手掛かりにもなります。

2. 亜硝酸の値は必ずチェックします。

※ エビや魚をまだ入れていなくても、ソイルを使っていると、ソイルに含まれている有機物からアンモニアや亜硝酸が発生することがあります。

3. このあたりで、1/4程度の換水を1度行います。絶対に多過ぎてはいけません。

 換水の方法ですが、まず、サーモ&ヒーターのプラグ、フィルターのプラグ、電磁弁のプラグの3つをコンセントから抜きます。
 次に水を汲み出します。
 そして、塩素抜きを済ませた26度の水を静かに注ぎ込みます。
 最後に、プラグを全部元に戻して下さい。
 これで換水の完了です。

4. 換水後にも、pHとKHの値をチェックしておきましょう。

 

<1週間後>

1. 1週間ぐらい経つと、右の画像のように、生長が速い種類の水草の頭が突出してきます。このような種類の水草は、始めから背丈を短くして植えておいてもよさそうですが、あえて伸びさせることで、水槽セット直後の水質の浄化や安定が期待できます。
2.  セット後1週間経って、生長が速い水草は、その仕事(水質浄化)の半分が済んでいます。
 そこで、他の草とのバランスも考えて少しトリミング(剪定)します。このトリミングの作業は、特に伸びている水草がなければ必要ありません。
 画像の水槽の場合、中央に植わっているラガロシフォン=マダガスカリエンシスのみ、上半分をハサミで切りました。左の画像ぐらいの量です。
 この時点でのトリミングのは、ハサミで刈り込む方法だけにしておきます。水草を抜き取ってあらためて挿し込む方法は、肥料の巻き上げ→コケの大発生となる可能性が高いから避けます。
 どうしても背を低くしたい場合は、茎の途中をピンセットでつまみ、その部分を折り込むようにして土に突っ込むとよいでしょう。

 (右の画像はトリミング後の様子です。) 

 

3. 日程的には、このあたりで藻類の除去と予防のためにエビを導入すると良いです。
 ただし、pHと亜硝酸量を測ってからです。亜硝酸が安全圏内で、かつ、pHがあまり下がり過ぎていないことを確かめてから導入します。

 エビの匹数ですが、ヤマトヌマエビなら20匹程度、ミナミヌマエビなら80匹程度が適当です。
 この時点で導入するエビですが、1匹も死なせずに全部を育て上げるというのは、残念ながらたいへん難しいです。大切に扱っても、2/3ぐらいに減ってしまうのが普通だと思います。ですから、このエビの数にはその分を見込んであります。

 エビを水槽に泳がせるには、「水合わせ」という作業が必要です。
 買ってきたエビは、容器やビニール袋に入れた状態で、ゆっくりとゆっくりと水槽の水を加え、水温と水質を水槽のそれに近づけていきます。この作業には、できれば数時間、短くても1時間はかけてください。
 そして、最後にその袋や容器の中の水は捨てて、エビだけを水槽に入れます(減った分の水は水槽に補充しておきましょう)。

4. 次に、二酸化炭素の添加量が水草の量に見合っているか、チェックします。

5. もちろんpHと亜硝酸もチェックしておきます。

 

<1〜3週間後>

 この間にすることは、水質を測定すること・もし死んでしまったエビがいたら速やかに取り除くこと・二酸化炭素の添加量を調整すること、ぐらいです。あまりいろいろいじると、かえって立ち上がりが遅れてしまうことがあるので、注意してください。

 

<3週間後>

1. 3週間も経つと、水草も相当伸びてきているはずです。
 有茎草はほとんどが水面に達しているのではないでしょうか。
そこで、ここで再びトリミングをします。
 ただし、前のトリミングの時と同じように、水草を抜いて再び土に挿すような方法は避けて下さい。
 有茎草は頭の部分をハサミで切り落とします。例外的にトニナやケヤリソウの仲間のように、頭を切り落とせない性質の草だけは、茎の下の方をピンセットでつまんで土に押し込み、背を低くします。
 この水槽の場合、前面に敷いたグロッソスティグマは、まだ十分に広がっておらず、ところどころに土が見えています。
2. この水槽のpHを測ると、4.5を下回っていました。これは、少し低過ぎます。そこで、pHを上げるために1/3量の水換えを実施しました。

 

<3〜8週間>

1. 画像の水槽とは違って水換えをする必要が無かった水槽にならば、3週間経った時点で魚を入れ始めることができます。
 60センチ水槽(50数リットル)の場合、初心者なら小型のテトラの仲間なら50匹ぐらいは飼えます。
 ただし、いきなり50匹全部を導入してしまうと、排泄物が急増して亜硝酸が増えてしまいます。
 そこで、まずはコケ取り用にオトシンクルスを3匹ほど入れることをお勧めします。
 その後、亜硝酸の値を睨みながら、中4〜5日ぐらいのペースで10匹ぐらいずつ導入していくのが安全だと思います。

 水換えを行った場合は、その後2日間は魚を入れるのは避けます。だいたいその間は、水質が大きく変動するので、魚に余計な負担になるからです。

2. この間も、水質のチェックを続けます。
 もしpHが下がり過ぎたら、1/4〜1/3程度の換水を行います。ただし、換水と換水の間隔は必ず4日以上空けます。換水を頻繁に繰り返すと、バクテリアが壊滅してしまうからです。

3. 必要があれば、トリミングも行います。要領は、これまでと同じです。 

 

<8週間後>

1. ここまで少しずつトリミングを繰り返してきているので、この頃になると、水景の完成には到っていないもののレイアウトがある程度まとまってくると思います。
 魚も数がそろってきて、見ていて楽しい水槽になっているはずです。

2. さて、この時点から後の維持ですが、ここまで行ってきたことの延長となります。
 注視してきた亜硝酸の量も、ここに到るまでに検出限界以下になっているはずです。あとは、定期的にpH値を測って、換水のタイミングを見極めるだけです(下がり過ぎたら1/3程度の換水を行う)。

3. ところで、水槽を維持していると、水草の新芽が白っぽく色抜けしてくることがあります。
 今回のセッティングであれば、8週間経ったぐらいでそんなことにはならないと思いますが、3ヶ月、4ヶ月と経ってくればそのような症状が現われるかもしれません。
 これは肥料の不足のサインなので、症状が見られた時点で肥料を追加します。

 魚に餌を十分に与えている水槽では窒素分が不足することはあまりないので、窒素分を含まない園芸用の「ハイポネックス 開花用」を使います。
 魚に与えている餌が少ない水槽、あるいは、「開花用」では症状が改善されなかった場合は、窒素も含まれている「ハイポネックス 洋ラン液」を使うと良いでしょう。

 施肥の方法ですが、この液肥5mlに「ハイポネックス 活力液」を5mlを加え、水槽の水で80mlになるように希釈します。そして、100円ショップの化粧品売り場においてある注射器を使って、底床の一番底にちょっとずつまんべんなく注入すれば良いでしょう。

 あと、カリ分と鉄分の強化のために、「イニシャルスティック」と「テトラクリプト」を少量、ピンセットで底床に埋め込めば十分のはずです。

※ これら「肥料の量」は、状況を見て増減させます。

 

<9週間後>

 この頃になると、水草の根がしっかり張ってきているので、生長のスピードが速まってきているはずです。
 少しずつトリミングを繰り返して、自分の好きな水景へ、徐々に近づけていきましょう。

 画像の水槽では、右端に植えたアマゾン産ハイグロフィラの一種が、思ったよりも大きい葉を伸ばし、水槽が狭く見えるようになってしまいました。そこで、この水草は、レイアウトから取り除くことにしました。

 

01.11.08



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