■GOOD AQUA■

色々なスタイルを知る
  


02.12.18


 

1.<費用><手間><美観>の3点から見た場合

 現在広く楽しまれている水草水槽を、まずは費用・手間・美観という観点から見てみましょう。 
 

(1)お金はうまく節約 & 手間はそこそこ & 水槽内の美しいレイアウトを実現

 ネット上の色々なサイトや掲示板を見て周ると、この楽しみ方をされている方が一番多いように思います。
 自分で作れるものやホームセンターなどで調達できるものは、水槽専用の高価な商品を買わずに済ましたり、消耗品をリサイクル可能なものに入れ替えるなどして、出費を抑えるように心掛けています。その工夫については様々なサイトに情報を見つけることができます。
 また、そのような工夫には当然のことながらある程度の手間がかかります。したがって、この楽しみ方をするには、ある程度の時間的余裕がなければならないでしょう。
 この楽しみ方をする場合、「美しい水草水槽」は、水槽の中の美しいレイアウトを指すのが一般的となります。水槽の外側=すなわち水槽周りのキャビネットや部屋のインテリアといった、比較的まとまったお金が必要となる大掛かりな部分は後回しにされるように思います。

 この楽しみ方をされている方の傾向としてはさらに・・
・ 水槽やその中に設置する器具は、美しさよりは「耐久性」や「使い易さ」が重要
・ 水回りの配管や水草の肥料などは主にホームセンターで調達
・ 水槽台や照明器具などは見た目よりも実用性を重視
・ 水槽の中の美しさはよく話題にするが、水槽の外側にはあまりこだわらない
・ ホームセンターに買い物に行ったり自作したりする時間がそれなりに持てる
・ 書籍やネット上のサイトなどでの情報収集に積極的
・ 水槽内の生態系などの“しくみ”についても興味を持っている
・ 水槽にかける手間そのものをある程度楽しんでいる

といったところが挙げられるでしょう(もちろん画一的ではありません)。 

 
(2)お金も手間もできるだけ節約 & 水槽内のレイアウトはそこそこ

 お金を節約しようとすれば、1で見たようにそれなりに手間がかかってしまいます。したがって、この「手間」も少なくしようとすれば、手間がかかる「回数」を減らすぐらいしか方法がありません。すなわち、いったん水草水槽を設置してしまえば、あとはできるだけ手間がかからない方向を目指すわけです。
 具体的には、添加剤や換水、餌やりといった日々の手間を必要最小限に留めるために、毎日少量の肥料を加えるのではなく緩効性の肥料をまとめて底床化に埋める、添加剤は極力使わない、換水は自分の目で必要なタイミングを見極める、餌は水槽内で自然発生するものを最大限に利用する、トリミング(剪定)が頻繁に必要な水草はレイアウトに使わないといった方法です。
 そして、このような方向を目指す以上、収容できる水草の種類や魚種にはある程度の制約がでてきます。したがって、水槽内のレイアウトにもある程度の妥協が必須となります。
 また、この方向を突き詰めていくと、一切の手間が要らない「パーフェクトアクアリウム」というものに行き着くことになりますが、現実の問題として趣味の範囲ではそこまで突き詰めるのは極めて困難なので、ある程度の手間は必要、ということになるでしょう。

 この楽しみ方をされている方の傾向としてはさらに・・
・ 週末にしか手を掛けられない忙しい社会人や受験生が好む(そういう人向き)
・ 水草や水槽内の生態系よりも「魚の飼育」が主眼である
・ 魚が水草の中を泳いでいるのを単にボーッと眺めて癒しを得るのが好き
・ レイアウトは手間のかからないエキノドルスやクリプトコリネなどの水草がメイン
・ 「一時的に忙しくなって水槽に時間が割けなくなったが水槽は手放したくない」というときに、この手間のかからないスタイルでその忙しい時期を乗り切る

といった特徴が見られます。
  

(3)お金も手間も惜しまない & 水槽の中も外も美しく

 水槽の中だけでなく外側まで美しくしようと思えば、けっこうな額のお金がかかります。水槽のキャビネット(水槽台)だけでも、木製の美しいものを購入しようとすれば何十万円という額になります。加えて、天上から吊るすペンダント型の照明器具や夏場のクーラーにもこだわれば、簡単に100万ぐらい超えてしまいます。
 水槽の器具の1つ1つについても、見た目を重視したピンセットから餌やり器、水質測定具といったものまで揃えていけば、車1台分ぐらいの出費になります。
 さらに、迫力のある大きな水槽を置くために床下の補強や湿度・温度対策を部屋に施したり、水槽を置くための専用の部屋を作ってしまうことも珍しくない方向性なので、ある程度のお金を趣味に掛けることのできる社会人でないと実行するのが難しい楽しみ方かもしれません。
 また、この楽しみ方では、水槽の中の美しさも外側と同様に追求されることが多く、頻繁な手入れが必須とされていることがほとんどです。具体的には、日々少しずつ水草の栄養剤を何種類か添加したり、餌をまめに与えたり、1週間か2週間に1度必ず定量の換水を実行する、といった手入れです。したがって、時間的にも余裕のある生活が送られている人でないと難しい楽しみ方だとも言えます。

 この楽しみ方をされている方の傾向としては・・
・ 時間とお金にある程度余裕のある社会人が多い
・ 水槽周辺のインテリアまで変更できる“持ち家”に住んでいる人が多い
・ 水槽に掛ける手間そのものを楽しんでいる
・ 水槽内の生態系や生体の繁殖といったことよりも「水槽のインテリア性」を重視する
・ カメラやサイトのデザインなど、水槽のインテリア性を記録・公開する方法にもこだわりを持つ
・ 器具の1つ1つにまでデザイン性を求める

といったことが見られるように思います。

 

 

2.まったく異なる水草水槽のバリエーション

 上のような楽しみ方の差は、“一般的な水草水槽”という枠の中で現われる維持する人の“姿勢”や“考え方”といったところから出てくるものです。
 しかし、水草水槽の楽しみ方の中にはもっと根本的に違った楽しみ方も存在します。設備からしてまったく異なってくるので、一目見てすぐに違いが分かるようなバリエーションです。 
  

(A)大きな水槽で水草水槽を作る

 水槽のインテリア性を重視する方に多いのが、幅120センチから180センチぐらいの大きな水槽を1本、デーンと居間に設置して楽しむスタイルです。
 このような水槽では、中に自然下に近い環境が再現され易くなるので、魚の自然な繁殖を観察できる機会が多くなります。
 また、小さな水槽を何本も維持している場合に比べて、水槽の維持が1度でできるので手間があまりかからないという特徴があります。
 但し、水槽が大きい分、一旦水槽の中でトラブルが発生した場合(たとえば藍藻が大発生した、など)や、底床を入れ替えたい時などは、たいへんな労力が必要になります。
 大きな水槽を1本設置する場合は、その設置場所の補強や、頑丈でデザイン性にも優れたキャビネットを用意しなければならないなど、いくつか留意点があります。 

  
(B)小さな水槽をいくつも並べて楽しむ

 幅30センチぐらいの水槽を棚にいくつも並べて楽しむスタイルもあります。
 水槽ごとに底床や水草の種類を変えて比較しながら水草の生長を楽しむ人もいますし、水草の産地ごとのコレクションを楽しむのにも向いています。
 また、魚が主役の場合にもこのようなスタイルが好まれることがよくあります。たとえば、卵生メダカやグッピー、アピストグラムマといった種類の魚を飼う場合です。
 これらの魚種については、「コレクション」を楽しむ方が多く、水槽ごとに分けて飼育する必要があるので、必然的に小さな水槽をいくつもキープすることになります。
 卵生メダカやグッピーについては、水槽の中に底床を敷かず、水草を浮かせておくだけの場合が多いのですが、アピストグラムマは底床を敷いて流行の南米産の水草と組み合わせて育てられることが比較的よくあります。
 したがって、最初から自分が「コレクション」を楽しむつもりだと分かっている場合は、大きい水槽を1本買うのではなく、小さいのをいくつも購入する方が良いことになります。 
   

(C)水中部分に加えて水上部分を楽しむ

 「アクアテラリウム」等と呼ばれる水槽を楽しむスタイルです。水槽の水を少なめにして水に浸かっていない部分を作り1つの水槽の中で水中部分と陸上部分の両方を同時に観察できるようにした水槽で楽しみます。
 カエルやカメなどと水草・魚を同時に飼育することができますし、水草一つをとっても水中での姿と水上での姿の両方を観察できるところが面白いです。
 その他、陸上部分を作るのではなく水槽の上面を開け放って水面から伸び出て来る水草の水上葉や花を観察する楽しみ方もあります。こちらは一般に「オープンアクアリウム」と呼ばれています。
 どちらも、よくある水中のみで水草を育てる場合とは揃えるべき道具が異なります。 
 

(D)クリプトコリネ等のコレクションを楽しむ

 水草の種類に「クリプトコリネ属」というグループがあるのですが、このクリプトコリネには熱心なファンが世界的中にたくさんいます。他の水草と同様に水中でのレイアウトや育成を楽しむ他、コレクションも盛んです。色々な種類を1株ずつ小さな鉢に植え半水中状態で並べて楽しむ方法が人気があります。また同様のスタイルは「エキノドルス」や熱帯性スイレンのコレクションでもしばしば採られます。
 このような方向に興味がある場合は、将来的なことも考えて最初からそれに合った設備を整えましょう。

 

 

3.典型的なスタイル

 日本における水草水槽の歴史はまだまだ浅いものです。しかし、ある程度確立されたスタイルがすでにいくつか存在します。
 ここではそれらについて、参考のために簡単に触れておきます。知っていると、こういう分野の話しに出遭ったときに理解し易いでしょう。 
 

(ア)バランスト アクアリウム

 誰かが確立したスタイルというわけではなく、自然発生的に生まれてきた水草水槽だと思われます。あえて元を探すなら、コンラート=ローレンツ博士が著書で紹介しておられる平衡水槽でしょうか。
 維持には頭を使うことが要求されますが、お金と労力の一番かからないスタイルでしょう。
 もともとは、ヒーターやエアポンプといった水槽以外の人工的器具を一切使わず、生体間だけで酸素・二酸化炭素のバランスがとれているアクアリウムを指します。
 つまり、“水槽にその土地で飼える魚と水草を入れた水槽で酸素と二酸化炭素の自然のバランスがとれていれば”、それらはみな「バランスト アクアリウム」ということになります。
 但し、この「バランスト アクアリウム」という言葉は最近よく誤用されていて、「窒素化合物の循環までできている水槽」という意味で使われていることがあります。したがって、昔の資料と最近の資料を読み合わせるときにそのことに注意しておかなければ、読んでいてわけが分からなくなってしまいます。また最近は「バランス“ド”」と書かれことも多くなっていますが、正しくは「バランス“ト”」です。月刊誌でも前はちゃんと「ト」と書いていたのですが最近は「ド」になってしまっています。 
 

(イ)「パーフェクト アクアリウム」

 もともと、淡水のエビと水草などをガラス容器に入れて完全に密封したものなどをこう呼ぶようです。太陽の光エネルギーと熱エネルギー以外、外界からの干渉を排除し、容器内部が独立した生態系を営むアクアリウムです。当然、窒素の循環もその概念に含まれています。ちなみにアクアリムの世界では、「バランスト アクアリウム」と、この「パーフェクトアクアリウム」を混同してしまっている人が多いようです。
 パーフェクトアクアリウムを家庭の趣味のレベルで実現するのはたいへん難しく、設置には相当の知識と技術を要します。
 環境・生態系の研究者グループなどの作ったものが、これまでに何度かマスコミでも紹介されています。また、実際に設置している水族館もあるようですが、学者の方々でもなかなかうまく作れないようです。 
 

(ウ)「ダッチアクアリウム」

 第2次大戦前からヨーロッパにあった熱帯魚飼育の趣味のうち、戦後ドイツ・オランダを中心に盛んになった水草をレイアウトした水槽です。日本にはこのような熱帯魚水槽が無かったため、(オランダ→)アメリカから入ってくる本に載った家具調の華やかな水槽を「ダッチ アクアリウム」と呼ぶ人が現れ、この呼称が一般化しました。
 もともとは、「ヨーロッパで流行している水草レイアウト水槽」というぐらいの意味であって、何か特定の形式が存在するわけではありません。日本で水草水槽に様々なレイアウトや維持方法があり、外国人から「『日本式水槽』とはどんな水槽ですか?」と尋ねられても答えるのに困るように、『ダッチアクアリウム』も向こうに様々存在するレイアウトの一形式であって、イコール『オランダ式水槽、オランダの水槽』ではありえません。
 ちなみに、昔はアメリカで出版された本や日本の雑誌などで、よく記事に「ヨーロッパの水草水槽によく見られる特徴」を挙げた上でそのレイアウトデザインの仕方や育成技術が解説されていることがありました。
 そのうち、「この特徴をもつものが『ダッチ』です」と、それまでとはちょっと違うことを言う人がでてきました。そしてだんだん「この特徴を備えていなければ『ダッチ』ではない」と言う人まで現れてしまい、そのまま現在に至っています。
 そのような立場によると、1.大型の家具調の水槽に、2.有茎草を、3.幾何学的にバランスよくレイアウトして、4.密植し、5.底床内も加温して、6.換水頻度を低くして維持する水槽が「ダッチ」ということになります。同じ水景を長期に渡って維持するのに、トリミングが大変ですが、幾何学的なレイアウトが美しいのが特徴です。熱心なファンも多いスタイルです。
 但し、もちろんオランダにはそうでないスタイルの水槽も多く存在します。最近は洋書を入手し易くなったので、このあたりは簡単に確認できます。 
 

(エ)「アクアート」

 この趣味の世界では著名な山田洋氏の確立したレイアウト形式のことです。
 「アクアート」では、大きく分けて「ヨーロッパ式」と「日本式」の2つのレイアウトスタイルがあり、特に「日本式」は斬新です。
 「日本式」では、盆栽のように、あえて草の生長を抑えて美しさを引き出したり、日本庭園風の石組みが用いられたりします。
 昔、流行で日本の水草水槽がヨーロッパ式の水草レイアウト一色に染まったときに、氏が日本独自のレイアウトスタイルを提唱され、今のようなレイアウトスタイルの礎を作り上げられました。それ以降の日本レイアウトはみな、多かれ少なかれこの「アクアート」の影響を受けていると言えるでしょう。 
  

(オ)ネイチャー アクアリウム、 ナチュラル アクアリウム、 ナチュラル アクアリスティック

 これら3つは特に区別なく使われているようです。
 厳密な意味があるわけではなく、「自然風の水槽」といったぐらいの意味です。確立されたスタイルでもありません。
 水槽という人工の容器の中に生体を押し段階で、すでに「自然」では無くなっているのですから、水槽の中身が「ナチュラル」で無いのは当たり前で、これら言葉の定義をあまり突き詰めても答えはありません。
 前出のバランスト アクアリウムと大きく異なるのは、「器具を使って」バランスを作り出す点でしょう。本来は、自分が「これは『ネイチャー アクアリウムだ』」と言えば、その段階で「ネイチャー アクアリウム」ということになるでしょう。 
 

(カ)「ネイチャーアクアリウム」

 これは(オ)とは別もので、ADA社・天野尚氏の提唱するスタイルです。
 「ネイチャー」と「アクアリウム」の間にスペースが入らず1語で表記されます。
 “どのようなスタイルのことを言うのか”については、ADA社による定義自体が流動的ではっきりしていないのが現状です。「これはネイチャーアクアリウムだが、これは違う」と、示すことはできません。ADA社自体は、最近「ネイチャーアクアリウムは、自然な構図と生態系の概念を大自然から学び、それらを水槽の中に再構成するアクアリウムスタイルです。」としているので、このコンセプトに沿っていれば、「ネイチャーアクアリウム」ということになるのでしょう。
 但し、“ADAの製品を使って”、“ADAの提唱する方法で”設置・維持している水槽は、間違い無く「ネイチャーアクアリウム」です。逆に言えば、ADAの製品を使わずADAが言っているのとは違う方法で設置された水槽は、見た目がどんなに似ていても「ネイチャーアクアリウム」では無いと思われます。
 「ネイチャーアクアリウム」の設置と維持の仕方は、ADAのホームページの“レッツトライ”に載っています。

 



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