■GOOD AQUA■

自分のスタイルを決める
  


02.12.24


 

 水草水槽に色々な楽しみ方やスタイルが存在することを知ったら、次に、「自分がどのような水草水槽を作ってどのように楽しみたいのか」、頭を整理し、自分の楽しみ方の方向性・スタイルを決定しましょう。

 前稿で例として挙げたのは次の通りでした。

1.<費用><手間><美観>の3点から見た場合
  (1)お金はうまく節約 & 手間はそこそこ & 水槽内の美しいレイアウトを目指す
  (2)お金も手間もできるだけ節約 & 水槽内のレイアウトはそこそこ
  (3)お金も手間も惜しまない & 水槽の中も外も美しく
2.まったく異なる水草水槽のバリエーション

  (A)大きな水槽で水草水槽を作る
  (B)小さな水槽をいくつも並べて楽しむ
  (C)水中部分に加えて水上部分を楽しむ
  (D)クリプトコリネ等のコレクションを楽しむ
3.典型的なスタイル
  (ア)
バランスト アクアリウム
  (イ)
「パーフェクト アクアリウム」
  (ウ)
「ダッチアクアリウム」
  (エ)
「アクアート」
  (オ)ネイチャー アクアリウム、 ナチュラル アクアリウム 等
  (カ)
「ネイチャーアクアリウム」

 これらの中からすぐに「あ、自分のやろうとしてたのは、このスタイルだ!」と見つけられれば問題はありません。
 しかし、「う〜ん、ふつうのきれいな水草水槽だったらそれでいいんだけどなぁ」というような場合は、なかなか決めにくいと思います。

 そこで、以下、水草水槽の経験者として私の個人的な見解をば、適当な順番で書いてみたいと思います(“個人的な”ってところを強調)。
 先に、2と3で具体的なレイアウトスタイルを検討し、それから1の要素を加味して総合的に検討していきます。

 

 まずは、2について見てみましょう。

2.まったく異なる水草水槽のバリエーション
  (A)大きな水槽で水草水槽を作る
  (B)小さな水槽をいくつも並べて楽しむ
  (C)水中部分に加えて水上部分を楽しむ
  (D)クリプトコリネ等のコレクションを楽しむ

 (A)の、大きな水槽で水草水槽を作る、というスタイルは、月刊誌の“お宅拝見”といったコーナーに「〜〜邸の水槽」といった形で時々載っているので、目にしたことのある方も多いはずです。
 インテリアのしっかりしたリビングに家具調のキャビネットを置き、そこに幅2メートルぐらいある水槽を載せると非常に贅沢なインテリアになります。夜、ウィスキーのロックを片手にロッキングチェアーに座って観賞するのも良し、お客さんを招いて見せびらかすのも良し、って感じです。
 但し、このような水槽の場合重量は相当なものになります。したがって床にそれなりの補強が必要になります。よって、設置にあたってはそのあたりのことも考慮に入れなければなりません。
 また、多くの場合、この大きな水槽1本が世話のメインになるので、色々な条件の複数の水槽をもっていないと経験できないこと(例えば、水草の種類ごとの育成条件や、魚の繁殖可能な条件の範囲など)はあきらめないといけません。その代わり、大きな水槽だからこそ自然環境に近い条件を水槽内にることができ、魚の自然下での繁殖行動などを観察できる、といったメリットもあります。インテリア性を重視するか、知識の獲得を重視するか・・・このあたりのことも、水槽の大きさの決定に左右されるのです。
 ちなみに、本やインターネットで見る限り、欧米ではこういった水槽が主流であって、幅60センチ以下の水槽の方が「ミニ水槽」として扱われているようです。

 家具調の水槽台とヨーロッパ(ダッチ)風にレイアウトした水槽の例。この水槽は私が大型水槽をレイアウトするのに凝っていたときのもので、残っている数少ない写真の1枚です。
 私の場合、最近は育成条件を調べたりすることの方が興味があるので今は60センチ以下の水槽ばかり設置していますが、大型水槽も、小型水槽も、どちらもそれぞれに特徴があり、どちらも面白いと私は思います。

 

 (B)の、小さな水槽をいくつも並べて楽しむのは、特定の種類の魚をコレクションしたり・遺伝的に系統を維持したりする場合に多いスタイルです。
 具体的には、アピストグラムマという小型魚、ベタ、卵生メダカやグッピーなどの飼育でよく見られるスタイルです。これらをコレクションしたり、系統的に繁殖したりしたいと思っている場合は、最初からこのスタイルで始めるのが良いと思います。
 このスタイルでは、手入れのし易さを重視して底砂を敷かないことも多いです(=ベアタンク)が、環境の安定を狙って底砂と水草を入れてセットする場合もあります(こちらは「水草水槽」の1種)。このあたりは、その人の考え方や維持の仕方次第でしょう。

 水槽は、大きな棚に並べて1つ1つに保温をつける方法と、ショーケースのような園芸用のガラス(ビニール)ケースの中に並べてまとめて保温する方法の2つが主流です。もちろん、温帯魚&温帯水草ならば保温は要りません。あと、大きな水槽の中に小さなケースをいくつも入れる方法もありますが、水滴がついて観賞しにくいのでこれはあまりメジャーな方法ではないでしょう。
 「自分には収集癖ある!」と思う方は、最初からこの道を行くと無駄な器具を買わずに済みます。

 (C)の、水中部分に加えて水上部分を楽しむは、「アクアテラリウム」と呼ばれているものです。「アクア=水」と「テラ=陸」の合成語です。
 カエルやカメのような水中と陸上の両方で生活するものを観察でき、たいへん面白いです。
 しかし、水中で問題となるコケへの対処に加えて、水上部分で問題となるトビムシやカビの発生・ガラス面の露つきなどへの対処も必要になるので、ふつうの水草水槽に比べると、維持するのは総じて難しいです。
 したがって、最初1本目の水槽で、いきなりこれに挑戦するのはお勧めしません。テラリウム、あるいはアクアリウムのどちらかを先にマスターしてから挑戦するのが無難だと思われます。
 セットの仕方を説明している書籍は少なく入手が難しいので、主にネット上で得られる情報に頼ることになるでしょう。

 (D)の、クリプトコリネ等のコレクションを楽しむスタイルは、マイナーなようで、意外にファンの多いスタイルです。「クリプトコリネ」という水草が世界中にファンをもっていることがその理由でしょう。
 クリプトコリネは地味な色の水草ですが、育ててみると興味深い点がたくさんあります。加えて、花が独特の形状をしており、種類ごとの違いがまた楽しませてくれます。

 したがって、水中と水上の両方で楽しむことができればその楽しみは倍増するわけです。
 小さな鉢に種類ごとに植えて水槽の中に並べるスタイルは、そのような楽しみ方をしたい「クリプトコリネ」や「エキノドルス」などに向いており、専用の設備は、クリプトコリネに強いショップなどで入手可能です。もちろん専用のものでなく、自分で一般の市販品を使っても組み上げ可能です。クリプトコリネに興味をもったところから水草水槽を始めるのなら、このタイプの設備はぜひ欲しいところです。ここからいきなり水草水槽の世界に入ることも十分に可能です。
 セットの仕方や維持の仕方は、ネット上で得るのが確実でしょう。

  ○ 上段=アクアテラリウム
  ○ 中段=クリプトコリネのコレクション
  ○ 下段=熱帯性スイレン
   (画像は
ささきさんにお借りしました)

  

 

 次に、3について私の意見をば・・。

3.典型的なスタイル
  (ア)
バランスト アクアリウム
  (イ)
「パーフェクト アクアリウム」
  (ウ)
「ダッチアクアリウム」
  (エ)
「アクアート」
  (オ)ネイチャー アクアリウム、 ナチュラル アクアリウム 等
  (カ)
「ネイチャーアクアリウム」 

 (ア)の、バランスト アクアリウムは、日本で作るなら温帯産の魚と水草しか使えないことになります。となると、魚の種類はアカヒレやメダカ、水草は冬場も枯れないアナカリスやコカナダモといった種類に限られてしまいます。
 このような水槽も、よく観察すればとても面白く、設置した本人は十分に楽しめるのですが、「家族ウケ」という点で大きな問題があります。興味の無い人からみれば、どうしても綺麗な水槽ではないからです。
 「あんたぁ、そんなもん、そこに置いといたら子供が手ぇ突っ込むやないの!」
 「そんなきったないもん、何がおもろいねんなぁ」
 「なんでそんなもんにお金使わなあかのん!」
といった容赦無い攻撃に曝されること、請け合いです。
 したがって、バランスト アクアリウムを作ってみたい場合は、まず別途「綺麗な水槽」を作りその水槽で家族のアクアリウムに対する理解を得てから、2本目の水槽で取り組むことをお勧めします。夫婦喧嘩のとばっちりで、金属バットで殴り割られた悲惨な水槽の話しを聞いたこともありますので・・。(-_-;)

 ただ、他のスタイルの水草水槽はどうしてもある程度のお金がかかります。その額は、中学生や高校生の小遣いでは普通はまかない切れない額です。したがって、お金を自分で稼いでいないうちは、この「バランスト アクアリウム」しかできる水草水槽が無いと思います。私自身も、子供の頃は、親のお下がりでもらったヒーターでセットした水槽を除けば、みなこの「バランスト アクアリウム」でした。これなら、容器だけ用意すれば、すぐに始められます。また、「バランスト アクアリム」を通じて色々なことを学ぶことができました。
 セットの仕方などの情報は、ハヤカワ文庫の「ソロモンの指環」などにちょっとだけ載っています。他は雑誌の「Be−PAL」で夏場に特集が組まれたりするぐらいで、残念ながらあまり情報が流通していないのが現状です。

 (イ)「パーフェクト アクアリウム」は、趣味の範囲で実現するのはまず無理なので、「パス」。

 次に、(ウ)「ダッチアクアリウム」ですが、これは1の(A)で挙げた大型水槽の中のレイアウトとして作られることが多いものです。
 前ページで説明したように、これは確定的なスタイルではないので、例を挙げることが難しいのですが、「有茎草を幾何学的にレイアウトしてある水槽をいう」と主張している立場の方も多いので、そういう立場からは、そのようなレイアウトの水槽が「ダッチ」ということになるのでしょう。
 この立場に立てば有茎草を密植させることになるので、トリミングが大変という欠点があります。
 最近洋書が簡単に入手できるようになってきたこと、そして、インターネットで海外のサイトを自分で見られるようになったことから、ヨーロッパ(特にドイツやオランダ)の水草水槽の現実を容易に知ることができるようになりました。それにつれ、この画一的なレイアウトの存在を主張する人はほとんどいなくなりましたが、日本で作られたレイアウトの一(いち)スタイルとして、自分で実際に作ってみるのも面白いはずです。
 まとまった情報としては、入手しにくいかもしれませんが「水草の楽しみ方」(吉野敏著、緑書房、3689円、ISBN4-89531-626-2、平成3年3月31日発行)という本があります。

 (エ)「アクアート」ですが、以前は毎月雑誌に作例が紹介されるぐらい人気がありました。しかし最近は実践例をあまり見かけなくなっています。ネット上で情報を探しても見つけにくいかもしれません。
 日本独自の最初のレイアウトスタイルなので、実践してみるのは面白いと思いますが、特に日本式などは今流行している「ネイチャーアクアリウム」の中に強い影響が残っているので、遡って、あえてこのスタイルに挑戦しても、現在主流のレイアウトスタイルとあまり違いのないものができ上がりそうな気がします。
 このスタイルに挑戦してみたい方は、「アクアリウム プランツ オール ベスト テクニック 水草百科 上/下巻」(山田洋著、ハロウ出版社、2400/1800円、ISBN4-7952-3007-2/4-7952-3006-4、1984年9月20日初版/1986年7月1日初版)という本を探してみて下さい。設置方法や作例などを一通り学べます。

 (オ)ネイチャー アクアリウム等のスタイルは、自然発生的に生まれてきたようなものであって厳密な定義があるわけではないので、「挑戦したい!」と思っても、どうしたら良いのか、あるいは作り上げたものがこのスタイルにあてはまるものなのか、はっきりしないなんとも曖昧なものです。
 あえて特徴を挙げるとすると、前出の「バランスト アクアリウム」が器具を用いないの対し、こちらはフィルターやヒーターなどを用います。そして、その上で、自然に近い生物バランス(食性、CO2やO2のバランスなど)を保つよう維持する水槽です。
 せっかく作り上げても、「次の『ネイチャーアクアリウム』とどこが違うのか?」など、ツッコミどころ(ツッコマレどころ)満載なので、最初から挑戦する水槽としてはお勧めできません。

 (カ)「ネイチャーアクアリウム」というスタイルは、なぜかこんな一般的な単語がその名前としてつけられていますが、ADA社・天野尚氏の提唱する独自のスタイルです。
 このスタイルは、見た目がとても美しく、家族のアクアリウムの趣味への理解を得やすいこと間違いなしです。最初に挑戦する水草水槽として、私のお勧めです。
 ADA社が、設置や維持の仕方についての情報も、器具も、作例も、すべてトータルで提供してくれています。したがって、その通りに実践していけば、最初から相当程度のレベルの水草水槽を作り上げられます。
 設置の方法についてはADAのサイトで、器具や作例については毎年1回無料で配布されるパンフレット本で、細かい情報についてはADA発行の月間「アクアジャーナル」で得ることができます。器具も情報も入手が簡単なので初心者がとっつき易いはずです。

 

 では、ここまでの各スタイルに<費用><手間><美観>の3要素を加味して総合的に見てみましょう。

1.<費用><手間><美観>
  (1)お金はうまく節約 & 手間はそこそこ & 水槽内の美しいレイアウトを目指す
  (2)お金も手間もできるだけ節約 & 水槽内のレイアウトはそこそこ
  (3)お金も手間も惜しまない & 水槽の中も外も美しく

 最初に作る水草水槽として、私が一番にお勧めするのは、上述の通り、ADAの「ネイチャーアクアリウム」です。
 理由は、
 ・ 情報と道具がトータルで提供されていて、しかも入手し易い
 ・ 「言われた通りに」手順を踏めば高い確率で綺麗な水草水槽を実現できる
 ・ 水槽の中だけでなく外側にも注意が払われているので見映えが良い
 ・ 他にこれだけ情報と道具をトータルで提供しているメーカーはない
といったところです。

 この4つ目の理由ですが、情報と道具をトータルで提供しているメーカーは、実は他にもあります。ドイツのデュプラ社やデナリー社などです。これらは、ADAよりも社歴があり、情報・道具とも実によく考えられていて、なおかつ実績があります。
 ただ、どちらも日本では情報・道具の入手が困難なのです。マーケットをヨーロッパに絞っており、日本には注力していないようです。(見捨てられた…)
 したがって、コンスタントかつトータルで情報と道具を入手できるのは、「ADAだけ」というのが現状です。

 ところで、お勧めの「ネイチャーアクアリウム」ですが、もちろん難点もあります。

 ADAのメソッド(方法論)では、毎日少量の添加剤を入れることや定期的な換水をすることなどが必須となっていますから、それだけの手間は最低限覚悟しておかねばなりません。また、道具はアクアリウム器具メーカーとしては最も高価格なので、かかる費用も他社と比較して最高額となります。

 したがって、「ネイチャーアクアリウム」の実践は、必然的に(3)お金も手間も惜しまない & 水槽の中も外も美しく」というスタイルになります。

 「ネイチャーアクアリウム」で幅60センチの水槽をADAのメソッド通りにセットすれば、最低でも220,000円、別に魚や水草やピンセットなど細々した物が80,000円程度かかります。照明を流行のメタルハライドランプにしたりすると、プラス24,000円。初期投資の合計は324,000円にもなります。
 これらを2割引のお店で揃えたとしても
259,200円ぐらいが必要となり、さらに、年間の維持費として50,000円ぐらいが別途に必要になります。
(デュプラ社やデナリー社の製品で揃えた場合は、この6〜7割ぐらいで済むはずです。)
 この点、例えば海外旅行に1度行けばこのぐらいの費用はかかるものです。そのことを考えれば、大人の趣味としては高いことはないかもしれません。加えて、「言われた通りに道具を買って、その通りにセット・維持すれば、高い確率で綺麗な水槽がトータルででき上がる」という点は他のスタイルには無い大きな利点だと思います。
 ただ、仕事の忙しい社会人にとっては手間のかかることだけは困りものではあります。
 

 したがって、「忙しいからお金の面は目をつぶる。だからとにかく手っ取り早く綺麗な水槽を作りたい!」という場合には、このスタイルが向いているに違いありません。
 また、
 「ややこしいことを自分で考えるのは苦手。とにかく言われた通りにするだけで済ませたい」という場合にもこのスタイルがベストでしょう。
 これほど具体的な方法論がしっかり示されているスタイルは他にありません。

 ・・・というわけで、初めて水草水槽に挑戦する方に私が一番お勧めするのは「ネイチャーアクアリウム」なのですが、「ネイチャーアクアリウム」の情報については、ADAから直接仕入れるのが間違いが無くて良いです。会社を挙げてみなで情報を提供してくれているのですから、情報の信頼性という点で、このサイトのような外部の個人サイトとは大きな差があります。
 したがって、「ネイチャーアクアリウム」が私の一番のお勧めのスタイルながら、このサイトには今のところ「ネイチャーアクアリウム」の設置・維持に関する解説は載せていません。
 よって、「よし、『ネイチャー』スタイルでいこう!」と決定された方には、ここからADAのサイトへ移動することをお勧めします。→ ADAのサイトへ
GO 
 

 一方で、「他の趣味もあるのに、水槽にそんなにお金かけられるかいな!」と言う方も中にはいらっしゃると思います(私は、どちらかというとこのタイプです)。
 そういう方は、自動的に(1)の「お金はうまく節約 & 手間はそこそこ & 水槽内の美しいレイアウトを実現」するスタイルを選ぶことになるでしょう。
 実際のところ、ネットでサイトを見て回っていると、このスタイルの人口が一番多いように思います。また情報もふんだんに公開されています。
 そして、このサイトでもこのスタイルについての解説が中心となっています。

 このスタイルを実践している人のレイアウトは、大きく分けると4つになると思われます。
・ アクアート
・ ネイチャーアクアリウムくずれ 
・ 有茎草の密植(ダッチ)レイアウト
・ その他
の4つです。
 このスタイルの人は、概してレイアウトのタイプにはあまりこだわりがないように感じます。私自身もこのスタイルの水槽を持っていますが、レイアウトにはあまりこだわりがありません。「自分で見てきれいやったらええやん」といった感じです。

 ところで、このスタイルは、お金をかけずに水槽内にきれいなレイアウトを実現できるのですが、もちろんその分そこそこ手間がかかるという弱点があります。仕事が忙しい社会人には実践がなかなか難しいかもしれません。
 また、このスタイルには、「これを読めば大丈夫」というような情報をまとめた本が存在していません。ある程度知識を得られる本ならありますが、体系的には学べないでしょう。スタイル自体が定義された確定的なものでないのですから、当然と言えば当然です。
 ですから、このスタイルを実践しようと思えば、自分で色々な情報を本やインターネットから集めてこなければなりません。
  しかし、散在している情報にはけっこういい加減な情報がたくさんあります。たんなる思いつきや偶然の産物も「情報」として公開されていますし、もっともらしい根拠がついているけれども現実とはかけ離れてしまっている方法論も、まともな情報の中に紛れ込んでいます。
 したがって、このスタイルだと、水草水槽をうまく立ち上げて維持できるかどうかは“情報をうまく選別できるかどうか”に大きく左右されることになります。

 ただ、たとえ変な情報を取り入れてしまったとしても、水槽の安定に少し余分に時間がかかったり、レイアウトの寿命が少し短くなってしまうぐらいで済むことが大半です。下手なことをしてしまっても、水草水槽はそれなりに立ち上がります。水槽の中にでき上がる生態系は、それ自体に安定を作ろうとする力があるため、そう簡単に無茶苦茶にはならないのです。
 よって、情報の選別には絶対に気を使う必要がありますが、逆にあまり神経質になる必要はないとも言えます。要は、「ほどほど」が大切、ということです。 
 

 ところで、ネット上のサイトを見て回っていると、ときどき(2)お金も手間もできるだけ節約 & 水槽内のレイアウトはそこそこという楽しみ方をしている方を見かけることがあると思います。このスタイルを実践されている方は、たいてい「私はレイアウトには特にこだわりがないので・・・」と書いてあるので、すぐに分かるはずです。
 このスタイルでは、既に一通り色々な水草水槽を作り続けてきて今は自分なりの楽しみ方に落ち着いておられる方、あるいは、昔から金魚を長い間飼ってきてその延長上で水草を楽しんでおられる方、といったような“ベテラン”の方々に多いような気がします。

 このスタイルの最大のメリットは、“忙しい時期にも水槽を手放さなくて済む”というところです。
 水槽を長い間趣味にしていると、人生の中で、水槽に手間をかけていられない時期がどうしても出てきます。受験勉強や就職活動、転勤、結婚、出産など、「水槽どころではない」という時期が必ずあるはずです。そのような時期に、毎日添加剤を投入したり毎週水換えをしないといけない「ネイチャーアクアリウム」のようなスタイルでは、とても水槽なんか維持していられません。
 多くの方が、そういった忙しい時期に水槽を崩壊させ、そのまま水草水槽から離れていってしまっています。
 しかし、手間をかけなくても維持できるスタイルを楽しんでいたなら、そういった特別な時期でも水槽をキープしておけます。このスタイルの実践者にベテランの方が多いのは、ベテランだからこのスタイルを採っておられるのではなく、このスタイルを採ったからこそ忙しい時期を乗り越えてベテランになった、ということかもしれません。

 このスタイルの具体的な設置方法と維持方法ですが、みなさんがそれぞれ自分の手間をかけられる範囲で工夫しておられるので、画一的ではありません。
 あえて言えば、大人の方に多いのが、水槽の維持をできるだけ全自動化する方法です。家電用の安いタイマーを使って照明や二酸化炭素の電磁弁のON/OFFを自動化したり、簡単に換水できるようにホームセンターで買ってきた水道パイプで配管したりといった工夫で時間と手間を省く傾向があります。レイアウトは、伸びて水面から突き出してくることの少ない水草(エキノドルスの仲間や、アヌビアス類、モス類、シダ類など)を中心に作り上げます。
 学生の場合は、そのようなお金さえないのが普通だと思います。特に小学生や中学生の場合は、そもそも照明や二酸化炭素の添加装置にさえ手が届かないことが多いと思います。したがって、学生の場合は「バランスト アクアリウム」で実践することになるでしょう。実際、私も子供の頃は、金魚用の鉢や漬物のプラスチック樽でバランスト アクアリウムを作って観察していました。これは最初以外、ほとんど手間とお金がかかりません。

 

■ まとめ

 ということで、少々長くなりましたが、みなさんがご自分のスタイルを決める上で少しでも参考になるように、できるだけ情報を詰め込んでみました。
 お読みになって、「よし、わしはこの方向でいこう」というようなものはあったでしょうか。
 何か疑問に思うところがありましたら、掲示板にでも書き込んで質問して下さい。こういった情報は検索エンジンにもあまり引っかかってこないので。

<03.09.27>このページを読んでいただけたのか、最近徐々にこの手の情報が公開されるようになってきています。一応、検索エンジンでも検索してみて下さい。(「水草水槽j」「レイアウト」「スタイル」といった語で。)

 ところで、ときどき尋ねられることがあるので最後に私の「現在の」スタイルも念のために書いておきます。
 プロフィールにも少し書いてありますが、私自身は他の趣味の傍らで長いこと水槽をいじってきたために、色々なスタイルを細く長く経験しています。家具調の大きな水槽に凝っていたときもあれば、アクアテラリウムにはまっていたこともあります。
 で、現在は、と言うと、大きな水槽はすべて60センチ以下に入れ替えてしまっています。これは、色々な事柄を水槽間で比較して情報を得やすくするためです。前からそのような傾向で維持していたのですが、すべての水槽を60センチ以下にしてしまったのはここ数年のことです。
 そしてそれらの水槽を別々にセットして、ある水槽は手間を十分にかける「ネイチャーアクアリウム」式で、またある水槽は手間をかけない「バランスト アクアリウム」式で、また別の水槽は「エビの繁殖専用」として、またあっちの水槽は「大磯砂の底床」で、そしてその下の水槽は「赤玉土の底床」で・・・といったように1つずつ全部違った条件になるようにし、比較しながら観察して楽しんでいます。
 条件の組み合わせをよく考えて設置すれば、このような方法によって、スタイルごとの長所や短所・各社のフィルターの比較・各種の底床の特徴など、実にたくさんの情報が、あまり手間を掛けずに手に入ります。
 ・・・ ということで、飽きっぽい性格なので今のこのスタイルがあとどのくらい続くかわかりませんが、今のところはこんな感じです。ご参考までに・・。
 

 



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