■GOOD AQUA■

ピンセットに関する情報
  


水草の植栽に用いるピンセットの情報を載せているページです。

03.06.25〜08.12 11.01

 水草の茎や根に与えるダメージをいかに少なくして植えることができるか、いかに効率よくヘアーグラスを植え込めるか、いかにして気分良く作業できるか・・・などなど、水草水槽のキーパーにとって意外に重要なのがピンセットの良し悪しです。水草の種類によっては、最初に根や茎を傷めずに植えられるかどうかがその後の生長に大きく影響を与える場合もありますし、何より、使いやすいピンセットを持っていると水草の手入れを少し気分良くすることができます。
 この点、「植えられたらええやないか!」、「そんなもん、指で『ズボッ』っといっとけ、『ズボッ』っと!」といった、ごくごくまともなご意見もあるとは思います。しかしそんなことを言ってしまったらこの後を続けられなくなるので、そういう意見はあえて無視。


1.総論

【材質】

売られているピンセットの材質には実にいろいろなものがありますが、大きく分けるとだいたい4つぐらいでしょう。竹製、プラスチック製、セラミック製、そして金属製の4つです。

 ペットショップで売られている竹製のものは、主に爬虫類に餌を与えるときに使われています。材質が柔らかいため口を傷つけにくい優れモノです。しかし、水槽の水に浸けて使うとなると竹製は耐久性が問題になります。ピンセットの腰が弱るだけでなく、底床に何度も刺していると先がささくれてきます。

 プラスチック製のものは柔らかくて軽く、酸性物との化学反応などの問題も起きにくいことから、精密部品の選別作業や化学物質を扱う作業などでよく用いられているようです。しかしプラスチック製もやはりその性質上、耐久性が問題になります。したがって工業生産の現場では「使い捨て」として用いられることが多いようです。プラスチック製は概して安価ですし。このプラスチック製のものを水草に使っているとやはり疲労で折れてしまうことがときどきあります。また先があまり鋭利でないため底床の中にも突っ込みにくいものが多いです。アクアリウム専用として売られているものもありますが、私が使った限り、とても使いやすいとは言い難いです。ただし、金属製のものだとサビの問題が起きる海水魚水槽での餌やりなどには便利です。

 水草を植えるのに最も適していて、かつポピュラーだと言えるのが金属製のピンセットでしょう。たとえばグロッソスティグマを植えるめに酷使したとしても折れることはありませんし、使用後に風通しの良いところに置いておけばサビることもまずありません。また先が細く加工されているので底床にスムーズに刺さりますしスムーズに引き抜けます。
 金属製には、18-8ステンレスのもの(錆びにくい)の他に、鉄にニッケルメッキを施したもの、チタン製のもの(錆びにくい・耐薬品性が高い・軽い・高価)、真鍮にクロームメッキを施したもの、13クローム製(=ハイカーボンステンレス/硬い・やや錆び易い)のものなどがあります。これらのうち水草用に売られている長いタイプのピンセットは、ほとんどが18-8ステンレス製か13クローム製となっているようです。


【先の形状】

 細く真っ直ぐな形状が一般的ですが、他に「く」の字に曲がっているものや平たくなっているものもあります。こういった形状のものは限られた場面で抜群の働きをしてくれますが、一番使える場面が多いのはやはり真っ直ぐなタイプです。1本持っていれば大抵の場面に対応できるでしょう。


【先の内側のすべり止め】

 ピンセットによっては先端部の内側に、対象物を滑らせて逃がさないようにギザギザ(グリップ)がつけられています。このギザギザは、「つまんだときに水草を傷める」として嫌われることもありますし、「ギザギザが無いと滑ってつかみにくい」と言われることもあるようです。したがって“ギザギザがある方が良いか、無い方が良いか”は、使う人や使い方次第ということになるでしょう。ちなみに私はギザギザの無い方が好きです。と言うのも、ソイル類を底床材に使っている場合にギザギザがあると使いにくいからです。ソイル系の底床に先を突っ込むと、底床が周りからギュッと締め付けてきて抜けにくくなります。このとき先にギザギザがついていると、抜こうとしているピンセットと一緒に今植えたばかりの水草が抜けてきてしまうことがあるからです。


【握り部分のすべり止め】

 ピンセットを握る部分にも滑り止めのギザギザがついているものがあります。私は、このギザギザはついている方が使いやすいと思います。ギザギザがついていないピンセットで長時間植え込み作業を続けていると、ついているもので行ったときよりも明らかに疲れが大きいからです。
 製品によっては、ギザギザではなくてボディーにくぼみがつけてあるものもあります。ADAのピンセットはこのタイプです。くぼみが滑り止めになるはずなのですが、私はあまり使いやすいとは思いません。くぼみ以外の部分、たとえば先の方とかお尻の方とかをつかんで作業したい場合もけっこうあるからです。


【腰の部分の形状】

 腰の部分の形状は大きく分けて3つぐらいあります。1枚の板を2つ折りにしてあるタイプ(画像の一番下のタイプ)と、2枚の板の端を接着してあるタイプ(真ん中)と、2枚の端を接着した上でそこに成型を施してあるタイプ(一番上)です。
 水草の植栽には全長の大きいピンセットが好まれますが、長いピンセットのほとんどは一番上のタイプか真ん中のタイプになっているようです。形状によって握ったときの感じがまったく違っているのですが、ピンセットの材質によっても握りの感触は変わってくるので一概にどれが良いか言うのは難しいところです。


2.各論

(1) 小型のピンセット

小型のピンセットは、傷の手当てに使うためのものが救急箱に入っていたりするので比較的簡単に手に入るはずです。100円ショップでもよく売られています。

 小型のピンセットは安価なものが多いためか、あまり高い評価を聞きません。しかし「使う場面次第」で便利なピンセットです。小型のものでないと手際良く植栽できない場合もあるからです。
 たとえば、前景にグロッソスティグマやテネルスを密に植えるレイアウトを新しくセットする場面を想像してみて下さい。それを水草専用として売られている長いピンセットでこの作業を行おうとするとどうなるでしょうか。[水草をつまんで→植える]という一続きの大きな動作が必要ですし、その動作を何度も何度も繰り返すことが必要になります。手を動かすエネルギーに加えてピンセットを握る力も要ります。その上、全体が長いので力の入れ具合の調整がめんどうです。
 しかしこういった小型の水草を密植させる場合は、まず水槽の中の水位を下げ、植えようとする水草をみな水面に浮かせておくと楽に作業できます。浮かせた水草を[パッとつまんではパッと挿す]という動作で植えていくのです。すうすれば手を動かす距離が短くなるため格段に早く植え終わります。そして、このような作業は小型のピンセットでないとうまくできません。長いピンセットだと必然的に動かす動作が大きくなってしまうからです。こういった場面では小型のピンセットでないと困ります。

 ところで、短いピンセットで効率良く、たとえばグロッソスティグマを植えていくとしても、一つ困ることが出てくるはずです。それは植えたばかりの芽がまた抜けて浮いてくる問題です。小さな水草はそれだけ底床に埋め込む部分も短くなるためせっかく植えてもまた底床から抜けてしまうことがよくあります。
 そんなときに便利なのが、小型のピンセットで先が「く」の字に曲がっているタイプです。先を底床に突っ込んだら手首でちょっとひねるだけで茎の先の角度を変えることができます。こうすれば草体が浮こうとする垂直方向と違う方向に茎を向けられるので抜けにくくなります。
 また、先に角度がついているので水面に浮いている水草をつまむときに根に対して先が横向きにしやすいピンセットです。その角度で水草をつまめばつまみ損ねがぐっと減るのでイライラせずにすむのも良いところでしょう。

 小型のピンセットにはもう1つ、先が平たくなっているタイプがあります。切手の整理によく使われるものです。このタイプは小型のクリプトコリネや根の多い小型のエキノドルスを植えるときに便利です。根全体を大きく挟めるので、植えるときに根の傷みが少なくてすみます。

 
 先がストレートタイプの小型ピンセットは色々な場面にそれなりに対応できるオールマイティーなピンセットでしょう。「特にこの場面ではこのピンセットでないと。」といったことは無いと思いますが、細かい作業をする場合には長いピンセットよりはやはり使いはずです。

ところで、安価なピンセットには先の噛み合わせがズレてくるという難点があります。ただ、安価なものは柔かい材質のものが多いので自分で曲げて簡単に直せるでしょう。

もう1つ難点があります。腰が弱くなるのが早いのです。特に材質的に弱く二つ折りの形になっているタイプでは顕著です。グイッと広げてある程度直すことも可能ですが、やり過ぎると腰の部分から折れてしまうので慎重さが必要です。

 私の場合、水草専用の長いピンセットをメインで使っていますが、小型のピンセットもよく使っています。小型のピンセットでないとうまくいかないために使うこともありますが、小型のピンセットだと「水草に今どのくらいの力がかかっているか感覚的に分かりやすい」というのが一番の理由です。ピンセットのような道具ではこれも重要な要素だと思います。


(2) 「トリミングピンセット」 (ニッソー)

 実売1480〜1680円。ハサミ機能を兼ね備えている長いタイプのピンセットです。
 ※この製品の解説と画像の大部分はゆっきさんが作って下さいました(緑色の文字。一部編集)。
 ※先の動きを表す動画はxtoさんからお借りしました。

 ハサミとして使う場合は、先端部で水草の茎をつかんでねじるようにして切ります。しかしこれが結構固くて切ろうとすると水草が抜けてしまうことがよくあります。そのため結局はハサミまたは手で切ったほうが早いということになってしまいます。

ハサミとして使うときの先端の動きです。
先端にきつい角度がつけてるため、これが刃のようになって水草を切ります。
ハサミとして使うときの握り方です。ものすごく力を入れています・・・手が痛い。
ハサミとして使う場合は、先をずらせて動かします。

 先端部をずらすことで切るという構造上、先端部は面でびたりと合わさるのではなく点で合わさるようになっていいます。それにもかかわらず、先端の内側に滑り止めのギザギザがついていません。そのため水草をつかもうとすると滑りやすくてちゃんとつかめないことがよくあります。

先端部のアップです。このように「面」で合わさりません。

 あと、力の入り具合ですが、力を加える部分が小さいので長時間の作業になると結構手が疲れます。グリップがついているところ以外に力を加えても、力がきちんと先端に伝わりません。特に切るときにはかなり力を加えないといけないです・・・男性の握力・指力ならできないこともないですが、女性にはかなりきついと思われます。主にマツモのトリミングに使っていますが、作業が終わった後、指にピンセットの跡が残ってしまい、痛いくらいです。
 説明書には「慣れるまでグリップから指をずらして使うといいでしょう」といったことが書いてありますが、痛くてとてもそんなことはできません・・・。すんなり使うにはかなり熟練しないといけないでしょう。コツみたいなものがあるのでしょうが、それなら最初からハサミとピンセットを用意しておいたほうがいいと思います。わたしはかれこれ1年近くも使っていますが、いまだに慣れないので・・・。

 茎の細いものを植える作業に関しては使用に問題はありません。グロッソなどを植えるときには使いやすいと思います。ただし、合わさる部分が点になっているので茎の弱いものに使うと組織を潰してしまって水草を傷めがちです。茎の太いもの、もしくは大きいものに関しては使い物になりません・・・滑ってまともにつかめないので。

 以上のことからうちでは現在このピンセットはマツモのトリミングとグロッソの植栽以外にはあまり登場していないです・・・。

(すいらく):この製品に関しては私はショップのレイアウトを手伝ったときに使ったことがあるだけですが、やはりひどく手が痛くなりました・・・。セット済みの水槽のちょっとした手入れに使うのには良いのかもしれないですが、水槽のセットのときに大量の水草をこのピンセットで植えるにはそうとう無理があると思います。
 また、水草を浅く植えるときには大丈夫なのですが、底床に深く植えたいときに、先端の形状のせいでうまくいきません。ピンセットを刺すと底床に穴が大きめに空いてしまうのです。
 持ったときの全体の重さのバランスは良いと思います。全体の長さもちょうどいい感じです。


(3) ピンセットハサミ「草作」 (水作)

○「草作」には、全長250mm、350mm、450mmの3種類があるようです。

○「草作250」 → 実勢で980〜1470円ぐらいだと思います。たいへん使いやすいピンセットで、先への力の伝わり具合・先の細さ・腰の強さ・水中で持ったときのバランスなど、総合点でトップクラスだと思います。

「草作 350」

○「草作350」 → 実勢1750〜1820円程度。「250」と比べると全長が長い分だけ取り回しが少し鈍くなりますが、やはり使い勝手に優れていると思います。空気中で手にしたときには若干重たく感じますが、水中で使ってみるとあまり重さは気になりません。先への力の伝わり具合や先の細さ、腰の強さといった点についても、それなりに満足できるレベルだと思います。「250」ほどではありませんが。

○「草作450」 → 実勢2420〜2500円ぐらい。手に持ってみると“45センチ”という長さの実際に驚くはずです。想像していた長さ以上だと思います。もちろん全長が長い分、細かな作業は少ししづらいです。また腰が強く作られているので長時間使っていると手が疲れてきます。手から先までの距離が長い点も、つまんだ水草の茎にどのくらいの力がかかっているのか分かりにくいので困ります。さらに、重量があり過ぎです。水の中に浸けてもやはり重いです。重心が先の方にあるいう難点も、水中に浸けたからといって改善されません。ピンセットの先を下に向けて持っているだけで手が疲れてきます。「草作」シリーズでは“35センチ”と“45センチ”の差は大きいでしょう。

○「草作」を購入すると、樹脂製の小さなハサミが付いてきます。ピンセットの先につけると水草の葉や茎をちょこっと切ることができるものです。しかし残念ながら切れ味はあまり良いとは言えません。使っているうちにすぐ切れなくなってきます。替えのハサミが売られていますが、使い勝手と値段のバランスが良いとは思えません。したがって、付属のハサミにはあまり期待しない方が良いと思います。(替えバサミ→実勢620〜680円・2個入)


○「草作」の腰の部分: 

2枚の板を貼り合わせた構造になってます。

「350」と「450」には穴があります。

「草作」シリーズはどれも、先端が広い面でピタリと合います。また力を強く加えても先がズレたりしません。よって水草をつまんだときに草体のどこか1点だけに無理な力がかかる心配がありません。お見事!


以前売られていた「草作」には先の内側にギザギザがついていました。 モデルチェンジがあったのか、最近のものにはギザギザがないようです。


(4) 「プロピンセット」 (ADA)
○ドイツのゾーリンゲンで作っているそうで、「プロ」の名前がつけられて高めの値段で売られているピンセットです。「M」と「L」の2種類があるようです。

○「M」 → 260mm、実勢3000円前後。  「L」 → 300mm、実勢3400円前後。

○大型のピンセットですが、持ったときのバランスが良く水中ではもちろん空気中でも先が重くありません。

○腰の部分は2枚の板を貼り合わせた構造になっています。

○握りの部分は次の通り。

同じADAから出ている「水草専用ピンセット」シリーズとは違い、握りの部分にギザギザや凹みなどはついていません。(右端に見えているのは“stainless steel by eks Solingen”という文字です。)

○腰の強度に特徴のあるピンセットです。対象物をふつうにつまむ分にはあまり力を必要としません。軽く力を入れるだけでつまめます。したがって大量の植栽を行っても簡単には疲れないはずです。
 ただ、実際の植栽の場面では、水草にかかっている力の強さを自分の手で感じとりにくいピンセットだと思います。かけた力の多くが先端に伝わらずに逃げます。人間の手術に使うのなら、力のかかり過ぎで組織を潰してしまうことを避けられて良いのかもしれません。しかし植栽の場面では、締まった底床に先端を挿し込まなければなりません。そのとき、ある程度力を入れて水草をつまんでいないと水草がピンセットから外れて浮かんできてしまいます。よって必然的に強めの力を入れた状態でピンセットをコントロールしないといけません。その点、この「プロピンセット」は、他のピンセットに比べ、力をかけたままでのコントロールが効きにくく使いづらいと思います。うちではこのピンセットで植えようとすると、水草がプカ〜と浮かんできてしまったり、逆に力の入れ過ぎで茎を潰してしまうことがよく起きて困っています。

○先の部分

水草をつかむ部分(先端の内側)にすべり止めはついていません。

○先の細さは、固く締まった底床に突っ込みやすいので良いと思います(上述の問題は別にして)。細い有茎草を1本1本密植させるのに向いた形状になっています。
 しかし、茎が太めの水草を植えるには明らかに不向きです。使っていると組織を潰してしまうことがよくあります。また、パールグラスやロターラワリッキーのように何本かをまとめて植えることの多い水草にも向いていないです。まとめてつまむには先が細過ぎます。エキノドルスやクリプトコリネのようなロゼット型の水草に使うこともあきらめた方が良さそうです。こういった用途には「プロピンセット(グリップタイプ)」シリーズが別に販売されているのでそちらを使うべきでしょう。

○先の噛み合わせの精度は低いようです。

私が買った「プロピンセット」は、軽く閉じただけの段階でも先がこのぐらいズレます(真横から見たところ)。
力を少しずつ加えていくと、それに合わせて先のズレも「ズズズズー」っと大きくなります。

 先が細いタイプのピンセットで「噛み合わせが悪い」というのは致命的です。水草をまともにつかめません。力を加えると茎が横にこねられてブチュッと潰れてしまいます。

 私の場合、買ったお店へ交換してもらいに行ったのですが、お店の在庫にあった他の「プロピンセット」もみな同じように先がズレることが判明。買ったのと同じLサイズはお店に2本残っていましたが、それらの方がズレがひどかったためそのお店での交換が不可能でした。
 きっとまともな製品もたくさん出回っているのだと信じたいですが、私はまともにでき上がっている製品を探すのにたいへん苦労しました。

・ピンセットの購入にあたっても“賭け”のドキドキを楽しみたい人
・ホームページのネタ作りのために3000円を出してみたい人
・水草の茎がどうなろうと使いやすさがどうであろうと高価品であることが重要だと考える人、
などにはお薦めの一品です。

 ちなみにこの「プロピンセット」、手入れのために蒸留水を購入しなければなりません。使ったあとは蒸留水で洗って乾かすように取扱説明書で指示されています。水道水で洗ったりすると黄褐色のシミがつくそうです。
 

(5) 「水草専用ピンセット」 (ADA)

○ショップで最もよく目にするピンセットではないでしょうか。比較的良くできている製品で愛用者も多いはずです。

○「L」「M」「S」の3サイズがあるようです。
  「L」→270mm/実勢2800円前後、「M」→210mm/2300円前後、「S」→160mm/2000円前後となっています。

○握りの部分には浅い皿状の凹みがつけてあります。握ると親指と人差し指がこの凹みに合うようになっていて手が滑るのを防止してくれます。
 ただ、ピンセットの角度を変えて作業する場合、握りの位置や握り方も当然変わってきます。そのようなとき、必ずしも指先はこの凹みの位置にくるわけではありません。つまり、凹みが手の滑り止めになってくれるのは一定の持ち方をした場合のみとなります。

○腰の部分

「水草専用ピンセット」シリーズは、「プロピンセット」と同じく2枚の板を合わせた形になっているタイプです。

○先の部分

先にはすべり止めのためのギザギザがついています。

○腰の強弱には「プロピンセット」とよく似たクセがあります。軽くつまむ分には力のコントロールがしやすいのですが、強くつまむときのコントロールが難しいと感じます。たとえばピンセットにかける力を1から10で表すとすると、「水草専用ピンセット」は1〜5の間の力の調整はしやすいのです。しかし6〜10の間は調整が難しいです。滑らないぐらいの強さでつまんでいるつもりでいたら、実はぜんぜんつまめていなかったり、逆に強すぎて茎の組織を潰してしまっていたりといったことが起きます。
 このようなクセは、ある一定の維持方法の中では使いやすく感じられるでしょうし、別の維持方法の中では使いにくく感じられるはずのものです。よって自分のスタイルに合っているかどうかを実際に触って確認してから購入する必要があるでしょう。

○先の噛み合わせの精度については、マイナスの評価を見聞きすることがほとんどありません。
 しかし、問題が無いわけではありません。力を少し強くかけただけで先が開いてしまうのです。このピンセットで、たとえばミニヘアーグラスのような小さな水草を植えようとすれば、うまくつまめるかどうか以前に、まず「つまめない」という問題が発生してしまいます。

少し力を強めに入れると先端にこのような隙間ができてしまいます。弱い力でのみ使われるように設計されているのかもしれませんが。

 

(6) 「TAKE ピンセット」(スドー)

○このシリーズには3種類(2種類+1種類)があるようです。

○画像の上から順に、「ピンセットL」→450mm/実勢2400円前後、「デラックスピンセット(ピンセットDX)」→270mm/1800円前後、「ピンセット」→185mm/600円前後、といった感じでしょう。

○一番長い「ピンセットL」(45センチ)とその次に長い「デラックスピンセット」(27センチ)は、水作の「草作」と作りも使用感も同じような感じです。
 「ピンセット」(18.5センチ)は、小型ピンセットとほぼ同じ使用感です。

「ピンセット」(185mm)

 

(7) 医療用ピンセット〜先の太いタイプ

 “水草専用”として売られているピンセットには、医療用のものが転用されている場合が多いようですが、次の画像のピンセットは医療用そのものです。先が丸いため、対象物をしっかりとつかめるのが特徴です。
 ADAからはほぼ同じものが「プロピンセット(グリップタイプ)」という名称で販売されています。参考までに書いておくと、「ADA プロピンセットL(グリップタイプ)」が310mm/実勢3400円程度、「同M」が255mm/3000円程度、「同S」が210mm/2500円程度といったところでしょう。

こちらは医療器具の販売店から購入したものです。上側が300mm、下側が230mm。

このタイプは、腰の部分が非常にしっかりと造られています。2枚の板をただ貼り合わせただけではなく精巧に成型してあり、腰の強さを絶妙に調整してあります。

つかむ部分にすべり止めのギザギザがついてるものが多いと思います。
このピンセットの場合、先端部がワニの口のような噛み合わせになっていて、ギザギザの1山1山がピタリと合わさる精巧な造りになっています。
横から見ると、こんな感じになっています。

 ちなみに、このタイプのピンセットは持ったときの全体のバランスは良いのですが、重量自体がけっこうあります。うっかり手から滑らせるとえらいことになりかねません。足の指の上に落としたりすると目から火花が出ます。この前、300mmのものを落としたら下に置いてあったプラケースの底に一発で穴が空き、中の水がジョボジョボジョボ〜とこぼれ出て大騒ぎになりました。水槽のガラスに落としていたら恐ろしいことになっていたはずです。うっかり手から落とさないように注意しなければいけません。

←災害現場。

 先が太いこのタイプが活躍できる植栽の場面は限られています。1つは、クリプトコリネやエキノドルスの仲間のように根が多くついている水草を全体的にしっかり握って植えなければならない場面です。もう1つは、オランダプラントやピンネイトのように茎が柔らかく太めの水草を植える場面です。ADAの「水草専用ピンセット」のように極端に先が細く尖っているピンセットではよく茎が潰れてしまいます。また、細い水草を何本かまとめて植えるときにもこのタイプだと植えやすいです。

 しかし逆に、このタイプで細い水草を1本ずつ植えるのはまず無理でしょう。大磯砂に植えるならまだしも、ソイルの場合、底床に刺し終えたピンセットを引き抜くと同時に水草も抜けてしまいます。先が太いため刺すときにソイルに大きな穴が空いてしまうからです。


3.各論のまとめ 

● さてここで、「以上の中から1本だけ買うならどれか」、と考えてみると、
 私のお薦めは水作の「草作250」です。これ1本あれば水槽をセットする時の大量の植栽も手の筋肉痛を伴わずに行えますし、セット後時間の経過で固くなっている底床にも楽に植えることができます。また先端が“適度な細さ”なので、細い水草を1本1本植えるのにも、まとめて植えるのにも支障がありません。さらに、茎の太い水草をつかんでも組織を潰しにくいピンセットです。その他、全体の重さのバランスも良いですし、長さも取り回しがしやすい適度な長さです。力の入れ具合を調整しやすいことや、値段も手頃であることなども長所として挙げられるでしょう。“最初の1本目”としてはやはりこれがお薦めです。

「草作 250」

 

● しかし、場合によっては「長めのものが欲しい」ということもあるはずです。“水槽が深い”とか“水槽台が高くて水槽の奥に手が届きにくい”といった事情がある場合です。そういう場合は「草作350」が良いのではないでしょうか。腰の強さや重さのバランス、先端の形状など、「250」ほどではないですが、それに次ぐ使いやすさです。
 ちなみに「メンテのときに手を濡らしたくない」という理由で長めのものが欲しい場合、「草作450」だともっと長いので良さそうに思えるはずです。私もそう思って買ったことがあります。しかし実際に「450」を使ってみると、あまりにも重過ぎます。重過ぎて手が疲れます。その上、長さが45センチあっても、実際に手で持つ場所はお尻の端から5分の2ぐらいの位置になります。したがって60センチ水槽(実質、水深28センチ程度)でも、手は濡れるか濡れないかギリギリの位置にくることになります。90センチ以上の水槽だと手を濡らさず済ますことはさらに難しくなります。すなわち当初の「メンテのときに手を濡らしたくない」という目的は「450」であっても達成できないでしょう。また、50センチ以上の長さのピンセットも別メーカーから売られはいますが、そこまで長いと、今度は水草水槽に必須の細かい作業ができなくなってしまいます。よって、「メンテのときに手を濡らしたくない」という要求をピンセットで実現するのはあきらめた方が良いでしょう。手を濡らしたくない場合は、別に売られているマジックハンドのような器具を使うのが賢明でしょう。例えば、GEX(ジェックス)の「メンテナンスアーム」やテトラの「プラントトング」(←廃番製品かも)といった製品です(ただし、どれもお世辞にも使いやすいとは言いがたいのですが…)。

←GEX「メンテナンスアームL」(1600円前後)

● 上に挙げた「有茎草を束ねて植えたい」とか「エキノやクリプトの根をなるべく傷めずに植えたい」といった場面が多いときは、「草作」に加えて2本目として先の太いピンセットを買い足すのが正解だと思います。つまんだときに水草に触れる面積が広くて根を傷めにくいです。「プロピンセット(グリップタイプ)」(ADA)が手に入りやすいのでお薦めです。小型のピンセットで先が平たくなっているものも、テネルスやネヴィリーなどを植えるときには便利です。

● ADAが提唱している「ネイチャーアクアリウム」の方法で水槽を設置・維持する場合は、以上とは別に考えないといけないでしょう。やはりADAの「プロピンセット」か「水草専用ピンセット」が良いと思われます(どちらもLサイズがお薦め)。
 「ネイチャーアクアリウム」では、最初から大量の水草を植えます。そしてそのあと伸びた水草の頭をピンチカットしながら水景を維持していくのが基本とされています。すなわち、水草を大量に植えるのは底床がまだ固く締まっていない最初の時点に限られます。時間が経って固く締まった底床に植え込む場面はほぼ無いわけです。そうすると、ピンセットに求められるのは“一度にたくさん植えても手が疲れない程度の腰の柔らかさ”と、“次々1本ずつ植えても底床が乱れにくい先の細さ”という条件となります。固く締まったところに植え込む場面はあまり無いのですから“力を加えてもうまくつまめるか”といった点は重要でありません。
 「ネイチャーアクアリウム」の特殊性を考えると、「ネイチャーアクアリウム」にはやはり「プロピンセット」か「水草専用ピンセット」が最適だと思わます。もちろんいろいろな種類の水草を植栽していればこの2つだと先が細すぎてうまく植えられない場面も出てくるでしょう。しかし、そういう場合には「プロピンセット(グリップタイプ)」が別に用意されて売られているので、それを別途購入して使えば問題無いはずです。
 よって、「ネイチャーアクアリウム」方式で設置・維持するなら、「プロピンセット」か「水草専用ピンセット」(←私はこちらがお薦め)のどちからと、「プロピンセット(グリップタイプ)」の、合計2タイプを揃えればバッチグー(死語)という結論になります。


4.その他のピンセット

 店頭で見かける機会が少ないかもしれませんが、水草用のピンセットは他にも売られています。


(8)「JAQNO 水草専用ピンセット」(明新ジャパン)

○「L」が300mm/実勢1700円程度、「M」が220mm/1300円程度。

画像提供:かにとりむしさん

「JAQNO 水草専用ピンセット M」

 先端を閉じたところです。

 
腰の部分はこうなってます。→ 

(9)「Creative Tools(水草お手入れセット)」(Dupla)

○ピンセットとカーブ型ハサミのセットで販売されています。セットで実勢4000〜5000円程度。

画像・情報ともささやんさんのご提供


全長270mm、45g、バネの硬さ約600g

 
先端を閉じたところです。  

 先の内側はこんな感じ。

 
腰の部分はこうなってます。  

○ささやんさんのコメント :

【ADAの「水草専用ピンセットM」との比較】(長さが違うので意味が無いかもしれませんが)

ADA 水草専用ピンセットM」=重量30g バネの硬さ約500g
「Dupla Creative Tools」のピンセット=重量45g、バネの硬さ約600g
*バネの硬さは、秤に乗せてグリップ部を押し、先端が接触したときの目盛りを読んだものです。
実際に握った感触ではDuplaのほうが軟らかく感じます。

Dulpa=直線的、ADA=曲線的(O脚?)なので軽く握ったとき先端はDupla=面で接触、ADA=点で接触する感じです。またこの時のグリップ部の隙間はDupla=狭い、ADA=広い形になります。
強く握った時は、先端に伝わる力はADAのほうが強いです。すいらくさんの表現で「力の入れ具合を1から10で表すと」とありましたが、Duplaは1から5までしか無い様な印象です。それ以上力を入れようにもグリップ部がくっついてしまいます。

私はDuplaのピンセット、好きです。



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