水槽の加温…サーモとヒーター
  


00.12.10 / 06.12.21:改定


 
 水槽の水を加温する方法には、大きく分けると2つあります。(1)水槽を暖める、あるいは、(2)部屋ごと暖める、の2つです。後者は一般的なストーブやエアコンを使用するので改めて説明する必要はないでしょう。そこで前者(1)について、以下、その大まかに説明してみたいと思います。

 

 

1.加温に必要な器具

 水槽だけを加温するには一般的に2種類の器具が必要になります。 1つは、自身が発熱して水を暖める“ヒーター”。そして、自動的に水温を感知してヒーターへの通電を入/切する“サーモスタット”の2種類です。

2.ヒーター

 まずは“ヒーター”です。現在市販されているヒーターには様々な種類・タイプがありますが、構造の違いという点では、だいたい次の4種類に分かれます。

 

(1)石英管型

 ひとむかし前まで主流だったタイプです。“石英管の中に電熱線と珪砂などを入れて口をパテで固めたもの”、と説明すれば構造をだいたい想像してもらえるでしょうか。見た目はセラミック型とあまり変わりません。太い試験管のような石英管に詰められているのでボディーがちょっと太めなぐらいです。
 以前はサーモスタットと一体になっている製品もありましたが、最近はあまり見かけません。ただ、設定温度が固定されているオートタイプでは今でも石英管型を時々見かけます。
 設置に関しては、セラミック型と同じです。底床の上に置くか、水槽の内側に貼り付けて使います。

長所:大きなW数のものも多い、自分で分解修理し易い
短所:太くて白くて目立つ、破損し易い、電熱線が切れる故障が多いものがある、定期的な点検と補修が必須

 

(2)セラミック型

 現在販売されているヒーターの主流となっているものです。電熱線など発熱部分がセラミックの筒の中に固め込まれた構造になっているものが多いでしょう。。
 サーモスタットと連結させて使うタイプが大多数ですが、最初からサーモスタットと一体になっていて分離できないタイプもあります。また、設定温度が固定されていてサーモスタットが不要な“オートヒーター”タイプもあります。
 設置方法は、まずサーモスタットに接続し、そしてヒーター本体を底床の上に置くかガラス面(内側)に貼り付けるのが一般的です。ごく少数ながら濾過槽の中に入れるタイプやフィルターのホースの途中に設置するタイプなども存在します。

長所:石英管型より割れにくい、壊れにくい、色や長さ太さにバリエーションが多い
短所:石英管式と比べると若干高価、壊れた時に修理ができないものがほとんど

 

(3)パネル型

 薄い金属板に電流を流して発熱させるタイプや、電熱線を樹脂の薄い板の中に封入してあるタイプなどいくつかのタイプがあります。全般的に言って、W数の小さい製品が多く(方式的に仕方がない)、そのため小さな水槽か、中型水槽で補助的な役割で使われるぐらいで、大型水槽ではあまり使われていません。
 ほとんどの製品がサーモスタット不要のタイプで、一定の範囲内の温度で推移するように設定されています。
 水槽の中の底床下に敷いて使うタイプもありますが、水槽のガラスの下(外側)に敷くタイプが多いでしょう。“シート型”、“マット型”などと呼ばれることもあります。
 熱帯魚用としてはあまり普及していないためか定番的な製品が見当たりませんが、その中でみどり商会の『ピタリ適温』に関してはよく見かけます。おそらく小型動物の飼育において定番製品の一つとなっているためでしょう。熱帯魚用には防水型のもの(『スーパー1』)があるようです。

長所:セラミック型だとサイズ的に難しい超小型水槽の加温に使える、小型水槽で邪魔にならない、局所的に加熱してしまう危険が小さい
短所:選択肢が少ない、入手が困難、固定的な温度設定ができないものが多く温度のコントロールが難しい、大型水槽用としては能力的に不足、加温能力に対して割高、水濡れ厳禁の製品もあるので取り扱いが厄介

 

(4)ケーブル型

 水草水槽用として販売されているものがほんどで、樹脂などで被覆されたテープ状あるいは紐状・糸状の電熱線に少量の電気を間欠的に流して発熱させるしくみになっています。使い方は製品ごとに異なりますが、水槽の底面にキスゴムで“S”字を書くように固定しその上に底床材を敷いて使うものが多いようです。
 現在、日本ではケーブル型は底床を暖めて水草の生長を促すことが設置の主目的になっていますが、実際のところ、底床を暖めなければならないようなことがあまりないため、ほとんど使われていないのが現状でしょう。滅多に見かけません。
 特に注意が必要なのは、ケーブルヒーターがあくまでも底床内を暖めるためだけのものである点です。能力的に水槽全体は暖められません。水については別系統の保温器具が必要になります。つまり、2系統の加温設備が必要ということです。
 ちなみにこのケーブル型は、 “ケーブルヒーター”と呼ばれる他、“コードヒーター”、“テープヒーター”、“ラインヒーター”、“リボンヒーター”といった名称で呼ばれることもあります。

長所:極寒下で根の生長促進・底床内の代謝促進などが可能、自然な水の対流を作り出すとといった工夫も可
短所:製品の選択と入手が困難、水草に対する効果が薄い、通常のヒーターとは別にタイマーつきの配線が必要でコスト高&水槽周りが複雑、ケーブルに根が絡む、底床の掃除や入れ替えがしにくい

 

3.サーモスタット

 サーモスタットには、大きく分けて電子式(IC)とバイメタル式の2つの方式があります。

 

(1)バイメタル式

 以前はポピュラーでしたが、次に紹介する電子式が発売されてからはあまり見かけなくなりました。
 機械部分が太目の試験管の中に収められていて、その口がゴムで閉じられている構造です。重ねられた伸縮率の異なる2枚の薄い金属板が温度の上下によって互いに接触したり離れたりすることでヒーターへ通電したり遮断したりするようになっています。
 金具で水槽の縁に引っ掛け、電極部分が水面下に来るように設置して使います。
 温度の設定は、本体に電気式のように設定温度の目盛りがついているわけではないので、水槽の中の温度計をにらみながら頭の部分のツマミを少しずつ回して調整せねばなりません。また、2枚の金属板が接触する部分は電気の火花によって煤がつきやすく、定期的な点検と掃除が必須です。怠ると、溶着してしまって通電が止まらず水が沸き立ってしまうような事故につながりかねません。一方、構造が単純なので自分で修理・改造しやすい、という利点が備わっています。

長所:電気式と比べて安価、修理・改造が容易
短所:点検・手入れが必須、温度設定がめんどう、容量(W数)が概して小さい、水槽の中で目立つ、水槽の構造によっては設置しにくい場合もある

 

(2)電子式(IC)

 現在のサーモスタットの主流は、この電子式です。ダイアルを回して目指す温度にセットするだけで温度設定は完了です。バイメタル式に比べると、手入れも要らず故障も少ないので新しくアクアリウムを始める人には手軽で確実だと思います。
 このタイプはバイメタル式に比べると連結できるヒーターのW数に概して余裕がありますが、それでも機種によってその適応W数は大きく異なっています。したがって、購入の際には必ず適応するW数を確認しましょう。容量の小さいサーモスタットに大きなヒーターを連結すると危険です。
 また、売られている電子式サーモスタットの値段には、安いものから高いものまでけっこう幅があるものです。それは適応するW数の大小も関係していますが、同時に品質にも関係しています。サーモは値段の高低と品質の高低がわりに連動していると言える器具なのです。したがって、ある程度値がはっても信頼できるものを選ぶことが肝要です。

長所:温度設定と調整が容易、定期的な手入れが不要、W数の大きなヒーターを使える機種もそろっている
短所:バイメタル式に比べると高価、子供にいたずらでダイヤルを回され易い

 



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