■GOOD AQUA■

アクアリウムの不確実性1


03.10.12



 「アクアリウムは思ったようにはならない」、これは実際にアクアリウムを維持している人ならほとんどの人が知っていることです。ただし、本やショップではなかなか得られない情報でもあります。
 アクアリウム(=魚やエビだけの水槽も水草と一緒の水槽も含めて)は、工業製品のように「ここを押せばこうなる」という確実な結果が得られるものではありません。同じ手入れが同じ結果につながらなくても、実はそれが「普通」とされる世界です。すなわち、アクアリウムの維持は不確実性を多分に含んだ非常に難しいものだと言えます。

 しかし、本やショップの店員さんが「アクアリウムは難しいですよ」と正直に言ってしまったりすれば、せっかくアクアリウムを始めようとしてやって来てくれたお客さんのやる気を削いでしまいかねません。「アクアリウムは簡単ですよ。誰にでも手軽に始められますよ。」と言った方が当然売り上げにつながります。

 よって、アクアリウムを始めたばかりの方には「アクアリウムは不確実でやっかいなシロモノだ」という情報が届いていないことが多いようです。各所の掲示板に寄せられている相談などを読んでいると「言われた通りにしたけれど言われたようになならない」といった書き込みをよく目にします。
 始めたばかりの方が「本当はとても難しい」という正しい情報を初めて手にするのは、「買って来た水槽が思うようにいかない。アドバイスをもらっても一向にそのアドバイスの通りにならない」という現実に直面したときだと思われます。さらに、そこで気づいた方は良いのですが、気づかないまま迷宮に入り込んでしまう方も少なくないでしょう。

 そこで、以下、アクアリウムの不確実性を示す実例をいくつか見ていきたいと思います。まだ本当の情報に出会えていない方には新鮮な情報と感じられるはずです。



1.水槽の立ち上がり方の違い その1 

 次に挙げるのは、幅315*奥185*高244・12リットルの水槽をエビ飼育用として立ち上げた例です。

<設備>

・底床材:ADA「アクアソイル アマゾニア」
・肥料:無し
・照明:ニッソー「フラットインバーターライト600」を両方にまたがらせて設置
・濾過器:FivePlan「簡単ラクラクフィルターM300」
・ヒーター:無し (右側には着いているが無通電)

<経過>

(1)4月の中頃に、同じ環境を備えた水槽を2台設置しました。

(2)3日経過した様子が次の画像です。

4日目の様子。右側の水槽はすっかり濁りがおさまっていますが、左側の水槽は設置時よりも濁りがかえってひどくなっているのが分かると思います。もちろんこの間、2つの水槽の維持はまったく同方法で行われています。

(3)設置後2週間が経過したところで、それぞれの水槽にロターラの仲間を6本とクリスタルレッドシュリンプを6匹ずつ導入しました。

(4)1ヶ月経ったときの様子が次の画像です。

この時点になると2つの水槽間で大きな差が出てきたのが分かると思います。左側の水槽ではロターラの生長は思わしくなく、根元が溶けて草体が水面に浮いてしまってます。

右側の水槽を拡大してみたところです。
水草の生長はあまり良いとは言えないですが、それなりに育っていてコケの発生も目立っていません。

一方、左側の水槽は傷んだロターラにミドロの仲間が絡みついて悲惨な状態になっています。

(5)3ヶ月経過した時点で、2台の水槽間で条件に少し差をつけるため、中身の入れ替えを行いました。
 両方の水槽のクリスタルレッドシュリンプとロターラをを取り出し、代りに左側にはレッドチェリーシュリンプを10匹、右側にミナミヌマエビを10匹投入しました。同時に左の水槽にだけウィローモスを巻きつけた小さな流木を設置しました。

(5)そして、そこからさらに6ヶ月経過した時点の様子が次の画像です。

両方の水槽はまったく違った状態になっているのが分かると思います。

右の水槽は、底床の表面にフワフワしたコケがたっぷりと生い茂っています。
もう少し育てたらメロン風味の綿菓子になりそうです。

左の水槽にはコケがまったく見られません。代りにスネールがガラス面にちらほら観察されます。
(底床の表面に穴が掘れているのは、単にフィルターからの水流が流木ではね返ってそこに当たっているからです。特に意味はありません。)

 

 

2.油膜の発生の違い

 次は、別の例で油膜の発生具合を見てみましょう。


 同じように水とウィローモスとエビを入れたプラケースを窓際に並べて設置し、経過を観察してみました。

右の画像は、2ヶ月が経過した時点の様子です。ここまで、光の当たり具合と温度を揃えるために毎日ケースの左右を入れ替えながら維持してあります。  
両方のプラケースとも中はすっかり落ち着いた状態になっていてバクテリアなどの微生物も定着しているようですが、左側のプラケースにはずっと油膜がはったままでまったく消えることがありません。

しかし、右側のプラケースには、分かりにくいかもしれませんがまったく油膜が見あたりません。ウィローモスの生長も油膜がないのが原因なのか、明らかに右側のプラケースの方が良い状態になっています。

  「アクアリウムの不確実性2」へ続く

 



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