■GOOD AQUA■

底床材の追加の仕方


04.01.13


 
 底床材は、いったん水槽に敷いてしまったら変更も追加もそう簡単にできません。無理に行えば中が濁りでものすごいことになってしまいます。でき上がってる水槽内のバランスも大きく崩れてしまいます。したがって、いったん底に敷いて水を入れたらできるだけ手を触れないのが良策です。

 しかし、「追加だけはしたい」という場面がどうしても出てきてしまうものです。たとえばソイル類を使った場合です。ソイルは使っているうちに水を軟水にするはたらきが衰えてきます。短ければ半年、通常なら2、3年で寿命を迎えるでしょう。そうなれば、もちろん全部を交換すれば一気に解決するはなしなのですが、また一から水槽をセットし直すのはたいへんです。激しい濁りが発生しますし、底床の下にある何らかの物質が問題を引き起こすことさえあります。
 この点、ソイルの全部を入れ換えるのではなく一部だけを新しいものと交換できれば助かります。一部だけの交換ならば水槽をバラさずにすみますし、新しいソイルがまた水を軟水にしてくれるようになります。
 また、「最初に敷いた底床材が少な過ぎた。足したい。」というような場合もあるでしょう。

 よってここでは、底床材をうまく追加、あるいは一部交換する方法を書いてみたいと思います。
 それには、実はちょっとしたコツがあります。そのコツさえ知っていれば、濁りなどの問題を最小限に抑えることができます。また水槽のバランスが崩れる危険性も小さくできます。

 

ポイント1 = 古い底床材はホースで抜く

 古い底床材はスコップやカップですくい出しても良いのですが、それをすると水が激しく濁ってしまいます。また場合によっては底床の下からガスが出て近くにいるエビや魚が昇天してしまうことさえあります。したがって、できるだけホースで水とともに吸い出すのが無難でしょう。
 ホースで吸い出す泥水はいったんバケツなどに溜めて静置しておきます。しばらくすると底に底床材が沈殿するので、上澄みを流し、残った底床材だけを廃棄物として処理するようにします。水とともに排水口へ流すと一発でパイプが詰まってしまうので必ずこうします。

 
ポイント2
 = 底床材を水中で踊らせない

 水面からバラバラ入れるのがダメなことは容易に想像できるはずです。では、どうすれば良いかと言えば、方法は大別して2つあります。底床材を(1)まとめて底まで持って行くか、あるいは(2)パイプで底に流し込むか、という2つの方法です。前者については画像が要るので下で改めて説明します。後者は簡単です。パイプを水槽の中に突っ込み、先が底床の表面近くにくるように手で支えます。そしてパイプの中に新しい底床材を流し込んで底床の表面に広げるだけです。そっと丁寧に行えば濁りが最小限に抑えられます。

 
ポイント3
 = 底床全体を新しい底床材で覆わない

 底床の表面全体を覆ってしまうと、底床面で生活している微生物に甚大な被害を与えてしまいます。そうなると、今まで水の浄化のために働いていたものが極端に減るわけですから、「底床を追加したあといつまでたても濁りがおさまらない」とか、「グリーンウォーターになってしまった」とかいった現象につながります。よって、新しく入れる底床材は底床面全体を覆ったりせず一部を覆うだけにしておきます。
 経験的に、この画像ぐらいの面積割合なら、新しい底床材で覆っても水槽のバランスに大きな影響が出にくいはずです。

 

 

=====以下は、底床の一部の交換を底床面に底床材をまとめて持って行く方法で行う場合の説明です。

 
<手順1>
 まずは、フィルターやヒーターなどを止めます。これを忘れるとあとで痛い目にあいます。

<手順2>
 ソイルの場合は、団粒が砕けて軟水化(陽イオン交換)のはたらきをしなくなった部分=泥を、水と一緒に吸い出します。
 吸い出す道具は、ふつうのホースで構わないのですが、できればアクアリウム用に売られている専用のものを使います。水作社の「プロホース」のような道具だと、パイプの中で泥が回転し、崩れて細かくなった泥だけが吸い出されて大きな粒は吸い出されないようになっています。使うときは、ホースの中間点を2つ折りにして握り、握る力を入れたり弱めたりして水の流量を調整します。
 この手順で重要なのは「吸い出す面積」です。広い面積から吸い出してしまうと底床の表面に棲んでいる微生物が大きなダメージを受けてしまいます。したがって、吸い出すのは新しい底床材をの載せるつもりの面積分だけに抑えておきます。
 水質を調整する機能をもたせたセラミック砂の場合は、ソイルと同じように砂に寿命がありますから、寿命が切れたら同じようにして吸い出します。粒が大きくて吸い出しにくい場合はふつうのホースを使いましょう。
 大磯砂の場合、交換の必要性がなく追加の場面だけしか起こり得ないので、この手順は飛ばします。


水作「プロホース」

 


 ソイルの場合、水流があり過ぎると砕けていない粒まで吸い出してしまうので“握り”の調整が重要になります。

<手順3>
 次に、追加する底床材を容器に入れて水槽に沈めます。こうすれば水の中で底床材が踊ってひどい濁りになったりしません。
 ただし、ソイルの場合は容器の形が重要です。容器を水に沈めると、中に水が入ると同時に中から土ぼこりの大きな気泡がゴボゴボ出てきます。このときプラケースのように口が大きい容器だとソイルが水の中に散らばってしまうのです。したがってソイルを補充する場合は口の小さな容器を使います。


 私の場合、ソイル類を補充するときにはもっぱらヨーグルトの容器を使っています。口が小さ過ぎず大き過ぎず、手荒に扱っても壊れず、軽く、加えて容量も適当なので気に入っています。
(この画像では、撮影するために水草を取り払って、濁りを取るためにあえてフィルターを回しています。)

<手順4>
 気泡が出なくなったら、静かに底床の表面に広げます。このとき決して手でソイルを押さえ付けてはいけません。水がひどく濁ります。また最初に予定していた面積以上に広げないよう注意しましょう。上に盛り上がって山になってもなでて広げるのはダメです。広げると、たいてい“広げ過ぎて”水槽のバランスを崩してしまいます。人間が広げなくてもエビや魚が徐々に崩して平らにしてくれます。また、水槽内の水流でも少しずつ少しずつ山は崩れていきます(そのために、私は下向けに吹き出すシャワーパイプの真下に追加するようにしています)。自然に崩れるスピードに任せておけば、底床表面の生物相がスムーズに再構成されるために水槽の中の調子を良いままに保てます。3ヶ月ぐらい経っても平坦にならないようなら、そこではじめて定規で均しましょう。そのぐらい経っていれば手で均しても大丈夫だと思います。

 

<手順5>
 1〜3時間ぐらい放置して濁りがおさまったらヒーターとフィルターを再稼動させます。もちろんこのあたりは、その時の気温や濁りの度合いを見て調整して下さい。
 フィルターを再稼動させてから1日経ったら、必ずフィルターの綿やスポンジを軽く掃除します。目詰まりになるぐらい汚れを吸いつけているはずだからです。特にソイル類を足した場合は土粒が大量に詰まっているので忘れずにしなければいけません。放っておくと水が流れなくなりフィルターの心臓部を傷めてしまいかねません。

 


重要: ソイル、特に有機物を多く含んだソイル(たとえば「アクアソイルアマゾニア」)を水槽に追加すると、有機物が分解される過程でアンモニアや亜硝酸など生体に致命的な害を与える物質が少量ながら必ず産まれてきます。このとき水槽やフィルター内に濾過バクテリアが十分に棲みついていてその有害物の少々の増加にも対応できる水槽であれば問題は無いのですが、セットしてからまだ数ヶ月しか経っていないような若い水槽だと有害物が速やかに分解されず水槽内に滞留する可能性があります。ソイルを追加した直後から徐々に有害物が溜まり始め、多くの場合1週間ほどで致死量を超える量が溜まってその頃から弱い小型のエビなどに症状が現れます。
 また、前から敷いていたソイルが水を軟水化させる能力を失っていて水槽の水のpHと硬度が高めに維持されていた水槽の場合、新しいソイルを急に大量に入れるとpHと硬度が数日間で急落して生体にショックを与えることがあります。この症状も、ソイルを追加して何日かしてから現れます。
 よって、ソイルを追加して数日経ってからエビが死ぬなどの現象が見られた場合には、これら両方の可能性を疑い対処しなければなりません。
 また、こういった危険性が予想されるときはエビを前もって別の水槽に移動させておくなどの対策をとっておく必要があります。 



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