■GOOD AQUA■

CO2コンパクトミキサー


03.05.25


 
 市販のCO2ミキサー(溶解器)は、抜群の溶解効率の高さが魅力的ですが、値段が高いのと場所をとるのが難点です。
 そこで、以前もっとコンパクトなミキサーを作ってみたことがあります。ここではそれを新たにもう1つ作りながら紹介してみたいと思います。…と言っても、誰でも思いつきそうなもんなんで、まぁ、適当に読んで下さい。

 私が使ったのはテトラ社の古い型の小型拡散筒ですが、今売られている緑色のものでも同様に作れます(ちょっと大きくなってしまいますが)。家に古いのを転がしたままにしておられる方は、これが一番加工しやすいので有効活用してみて下さい。
 また、別に小型拡散筒が無くても透明な筒さえあればちょっと手を加えるだけで作れてしまいます。透明な筒はホームセンターや東急ハンズといったお店で売られています。もっと簡単に手に入るものとしては、お菓子の容器などがあります。「ええ歳して駄菓子屋に行けるか〜!」という場合は子供の手を引いて行って「しゃ〜ないなぁ。ほんならお菓子買ったるわ」などとブツブツつぶやきながら買えばOK。

 ちなみになぜ「透明な容器」かと言うと、透明だとバブルカウンターも兼ねさせられるからです。最近は安くて扱いやすいバブルカウンターがほとんど売られていないので、容易に目で気泡の数を確認できる一体型が便利なはずです。

 

<完成図>

こんなものを作ります。

  
<仕組み>

全体の仕組みです。

・上下を閉じた筒の上部に、シャワーパイプから水を引き込みます。
・水は筒の下部に空けた穴しか出て行くところがないので、筒の中で複雑な流れを作りながら最終的にはここから外へ出て行きます。
・CO2は筒の下部の反対側から送り込みます。CO2の気泡は軽いため、上部へ向かって昇って行こうとします。
・したがって、筒の下部へ向かおうとして複雑な流れを作っている水と、上部に昇って行こうとする気泡とがぶつかります。このとき、気泡の半分ぐらいが水に溶け込みます。
・溶け込み切れなかった気泡は筒の上部の水面まで到達しますが、さらにここで上から落ちてくる水流に叩かれクルクル回っているうちにその大部分が水に溶け込むことになります。
・また、それでも溶け込みきれなかった気泡ははじけて筒の上部に一部が留まりますが、筒の中の水面が波立つのですぐにその水面から溶け込んでしまいます。
 このようにして、CO2のほぼ100パーセントを水に溶け込ませることができる仕組みです。

 

作った装置は水槽内にこのように設置します。

 筒を着ける場所ですが、シャワーパイプの先端の方だと中に入ってくる水の勢いが弱くなるのでできるだけ根元の方が良いと思います。具体的には、シャワーパイプとL字パイプをつなぐために使うホースの部分(図の赤い部分)に着けるのがおすすめです。ホースをちょっと長めにし、そこに穴を空けて突っ込むようにすればうまくいきます。

 また、この装置は、シャワーパイプの根元の方に着けておくと、筒の中にガスが溜まったまま放置したためにCO2がシャワーパイプへ流れ込んでくるようになってしまった場合でも、CO2がシャワーパイプの中で溶けてくれるのでCO2のムダな放出が少なくなります(この現象はあとで説明します)。

 CO2のチューブはスピードコントローラー(=スピコン)から引っ張ってきますが、筒とスピコンの間に、水の逆流を防ぐ逆止弁を少なくとも2つは挟んでおきます。筒の中の圧力が高くなる仕組みのため水の逆流の可能性が増すからです。

 


 
<用意するもの>

1.ペンチ
2.はさみ、カッターナイフ
3.ホースに穴を空けられるもの(ハンダゴテなど)
4.フィルターのシャワーパイプとホース
5.透明な筒
6.キスゴムなど筒を固定するもの
7.逆止弁 (2つ以上)
8.エアチューブつなぎ 2〜4個
9.ゴミ箱から拾い上げたナイロン袋 少々
10.耐圧チューブ 少々(必要に応じて)
11.エアチューブ 少々
12.塩コショウ 少々
13.ニンニク・ショウガ 少々
14.豚バラ200g

 

 今回使った筒はこれです。テトラの小型拡散筒の古いタイプです。右側に飛び出している給気のためのノズルですが元々は筒の両側についていました。私が誤って片方を折ってしまったため片方しか残っていません。

 この筒の調達方法ですが、個人売買のオークションにときどき出品されているようです。今となってはジャンク品のようなものですから相当安いはずです。またショップで余らせていたりもしますから懇意にしているショップがあれば余っていないか聞いてみましょう。その他、ホームセンターや手芸店で売られている透明な筒も同様に加工すれば使えます。使い易いものとしてはお菓子の容器があります(カバヤ「ジューC」の容器など)。

 


 
<手順1>

 まずは、筒の上部に挿し込んで水を引き込むための部品を作ります。
 使うのは、エアチューブをつなぐためのジョイントで、「プラジョイント」などの名前で売られています。
このジョイント部品を密閉式フィルターのシャワーパイプかシャワーパイプをつなぐホースの途中に挿し込み、その水の一部を筒の中に引き込むのですが、ジョイントをそのまま突っ込んでも水はジョイントへあまり流れてきません。
 そこで、ジョイントの片側を扇のように切り開いて水の流れに多くの面積があたるように工夫します。

1.プラジョイントの側面を1ヶ所、カッターで削ぎ落とします。

2.切れ目を深く入れます。

3.ペンチを使って扇のような形になるように整形します。
 この部分をシャワーパイプ(ホース)に突っ込み、この部分が水流の中に入ることによってより多くの水を引き込むわけです。したがってこの整形は慎重にしないといけません。


4.シャワーパイプかシャワーパイプをつなぐホースに、熱したハンダゴテで穴を空けます。

※換気に注意。
※穴は小さめに。
※キリやドリルでも可能。
※穴を空けて突っ込む位置は、固いシャワーパイプよりも、伸縮性のあるホースの方が、プラジョイントが固定されやすい。


5.穴が空いたら扇形に切り開いたプラジョイントをねじ込みます。
※ここでプラジョイントがホースに空けられた穴の中で固定されているのを確認します。やむを得ない場合にはシリコンボンドなどで固めても良いと思いますが、そうするとあとで掃除をしたくなったときに外しにくくて困ります。

 

<手順2>

 次に筒の両端を加工します。

6.まずは筒の下端を密閉します。
ナイロン袋の切れ端などをリングやテグスで留めるだけで十分です。

 はみ出たナイロンの端にはコケがつきやすいのできれいに切り取っておきましょう。
 

7.上端にはプラジョイントを着けます。

8.そしてこのプラジョイントとシャワーパイプに突っ込んだプラジョイントを短いエアチューブでつなぎます。

 

<手順3>

 加工したものを組み立てます。

9.この例では、シャワーパイプとL字パイプとをつなぐホースに穴を空け、そこに扇形に整形したプラジョイントを突っ込んでいますが、レイアウトの都合などでシャワーパイプに穴を空けてそこに挿し込んでもOKです。但しその場合、プラジョイントを挿し込んだ部分をシリコンボンドなどで固めないといけないことが多いです。
 フィルターの流量の少なさなどが原因で筒の中に入ってくる水の量が少ない場合は、ホース(シャワーパイプ)と筒をつないでいるエアチューブを外し、筒とホースを整形したプラジョイント1つで直接つなぐようにします。そうすると水の量が多くなります。但しこの場合、何かのはずみでちょっとシャワーパイプや筒に触れただけでもその接続部分から水が横へ漏れてしまう可能性が高まります。ですから直接つなぐなら、シリコンボンドなどで固めた方が良いかもしれません。
 但し、いずれもボンドで固めるとやはり掃除のときに困ります。
10.この装置の場合、筒の中が陽圧になるため、CO2の供給が止まる夜間に水がCO2を供給しているチューブの中を遡ってくる可能性が高まります。したがって、スピコンとの間に、念のため逆止弁を多めに着けておきます(ここでは筒のなるべく近いところに1つ追加してみました。もちろんスピコンの前にも逆止弁をもう1つはさんであります)。

 

<手順4>

 組み立てられたものとスピコンの間を耐圧チューブでつなぎます。

11.L字型のエアチューブつなぎで図のようにつなげば水槽の中がチューブでごちゃごちゃせずすっきりおさまります。しかし、このL字のジョイントはあまり売られているのを見かけません。

 図にある緑のジョイントはアクアショップで購入しましたが、アクア用のものではないはずです(アクア用のものが存在しないわけではありません)。

 

 L字のジョイントが手に入らない場合は、耐圧チューブでL字部分を作ります。
 ガスコンロの遠火で全体をあぶって柔らかくし、曲げたところで冷水で一気に冷すとすぐにでき上がります。
 これをふつうのプラジョイント2つでつなげばOK。

 

これで完成です。あとは水槽へ取り付けてスピコンを調整するだけです。

 


 
<溶解の様子>

実際に設置すると、こんな感じで動くようになります。
(以前に作った別の装置なので筒の左側からCO2が出ていますが、はたらきは同じです)

筒に流れ込む水で圧力がかかっているため、CO2は気泡になって出てくるときから溶け始めます。

気泡は筒の中の複雑な水流に阻まれながら上昇していきます。
上昇していく途中でも徐々に溶けます。
部に近づいた時点で気泡の1/3ぐらいが溶けています。
上部に到達すると、上から落ちてくる水で気泡がクルクル回され短時間でそのほとんどが溶けます。
 拡大するとこんな感じです。

 


 
<メンテナンス>

この手の装置の場合、使っているうちにだんだん中に気体(ガス)が溜まってきます。この気体は水の中に溶けていた酸素や窒素などであって溶け切れなかったCO2ではありません。
したがって、この手の装置だと仕方がないのですが、例えば1日に1回といった頻度でこの気体(ガス)を人の手で抜いてやらねばなりません。

その点この装置の場合ガス抜きは簡単です。ホースの途中をつまんでやるだけでできます。
ホースをつまむと筒の中に溜まっているガスがシャワーパイプの中へコポコポと自然に抜けていってくれます。
(フィルターのコンセントを抜いてもできますが、毎日繰り返すと間違い無くシャフトを傷めるので止めておきましょう。)

ただ、もしこのガス抜きの作業を忘れたとしても、筒をシャワーパイプの根元の方につけていれば大した問題は起きません。
まず、ガスが筒の中にたくさん溜まってくると、ガスの浮力のせいで上部のプラジョイントから水が入って来なくなります。そうするとガスにCO2が加わることで急速にガスの溜まり方が速くなります。そしてある一定量を超えて溜まると、ガスが一気にプラジョイントを通じてシャワーパイプへ流れ込みます。要するに、勝手にガス抜きが行われるのです。
但し、筒の大きさやプラジョイントにかかっている圧力の関係などで、抜けても半分ぐらいしか抜けず相変わらずプラジョイントから水が入ってくる状態には戻らない、という装置の場合もあります。そういう場合はガスが少し抜けてはシャワーパイプの中で攪拌されて溶け、また少し抜けてはシャワーパイプの中で攪拌されて溶け・・・といったことが繰り返されることになります。
※この点、筒をシャワーパイプの先の方につけていると、溶かされることなく大部分がそのまま水槽内に排出されてしまうことになります。(だから筒はシャワーパイプの根元につけておいた方が良いのです)

 

それと、このような装置に限ったことではありませんが、水槽の中に器具を設置していると早かれ遅かれコケがついて見苦しくなってきます。このコンパクトミキサーの場合は筒の内側にも水垢がついてきます。そうなると筒の中の気泡の様子が確認しづらくなってきます。
そこで、必要になるのがコケ落としと洗浄です。

1番簡単な方法は、装置を丸ごと取り外して濃い目の台所用の漂白剤液に2時間ぐらい浸けておく方法です。筒の外についたコケも内側についた水垢も、簡単にペロペロ〜と剥けて取れてしまいます。水が流れにくくなったプラジョイントの穴もきれいになります。あとは漂白剤と剥れた汚れを水でよく洗い流すだけです。

この「洗浄」のことを考えれば、最初にこのミキサーを作るときにボンドで固定することをできるだけ避けようとした理由が分かっていただけると思います。ボンドでどこかを固定してしまうと、水槽から取り外すにも洗浄するにもとても難儀してしまうのです。

 

 ところで、このコンパクトミキサーの最大の難点は、「水槽の中で目立つ」ことです。
 水槽のレイアウトを写真に撮るために一時的に取り外したくなったときにもけっこう面倒です。
 また、加工するのも面倒臭いです。
 ですから、お金と置き場所に余裕があるのなら、市販のミキサーを買うのが正解でしょうね・・・。

 ま、「こんなのもできる」、っちゅ〜ことで。

 



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