コケ取り用のエビの選択
  


02.06.02


 

 ご存知のように、水草水槽のキーパーは、むかしから色々なエビをコケ取り用として試してきました。
 最近は、不思議なことにヤマトヌマエビだけが“コケ取り用”として発見されたかのように大々的にクローズアップされていますが、もちろん他のエビのコケ取り能力が急に無くなったわけではありません。ヤマトヌマエビだけが“ヒーロー”にされても、文句も言わず、よく働いてくれます(笑)

 そのようなエビの中でも、私がもっとも水草水槽に向いていると考えるのが、「ミナミヌマエビ」です。20数年前、私の通っていた何軒かのショップでは、一番よく入荷するのが「ヌカエビ」、次がこの「ミナミヌマエビ」と「ヌマエビ」、そして次に「ヤマトヌマエビ」という感じでした(・・・と言っても、これらのショップは釣具屋さんで釣りエサを買って来ていたのですが)。

 ミナミヌマエビは、
身体の大きさがちょうど良いために、魚に食われ過ぎず、ヤマトのように水草を食い過ぎません
水槽の中で殖えるので、殖えないヤマトやミゾレのように使い捨てになりません
・ヤマトのように値がつり上げられなかったので、今でも適価で購入でき十分な数を揃えられます
・いろいろな色彩のものが出るので観賞面でもおもしろいです。

 どうでしょう? 水草水槽にはミナミヌマエビが向いていると思いませんか?

・値段がつり上げられ、
・水槽内で繁殖しないために多くは使い捨てにされ、
・その上、大き過ぎるハサミによる食害に悩まされ、
「それでもヤマトヌマエビが良い!」というのでなければ、ミナミヌマエビは水草水槽のコケ取り部隊としてピッタリだと思います。

 なぜか、この10年、「水草水槽の定番はヤマトヌマエビ」とされ、ショップもみなその流れに同調して仕入れを増やしていますが、果たしてなぜそう言えるのか、冷静に考えてみてください。賢明な方なら、なぜヤマトヌマエビが「定番」となってしまっているのか、すぐにお分かりになるはずです。

 

 さて、ミナミヌマエビの入手方法ですが、たとえば、こちら→「片山フィッシュフード」のようなお店で通販購入できます。

 この「片山フィッシュフード」さんは、釣りエサの問屋さんですが、このような釣りエサ屋さんでミナミヌマエビを購入するときには、注意点がいくつかあります。

 販売されているのは、あくまでも“釣りエサ”であって“観賞エビ”ではありません。このことをよく分かっておかねばなりません。鑑賞魚を買うときと同じ感覚で注文してはダメです。

1. 釣りエサは、通常、“グラム”や“キロ”で扱われます。よって、注文して届くエビは“まとめて何グラム”です。熱帯魚ショップのように、1匹ごとに取り扱われるわけではありません。「5匹だけ売って欲しい」とか、「赤っぽいのを選んで30匹欲しい」など、熱帯魚ショップと同じような注文の仕方は、間違い無く迷惑になります。

2. また、大量に送られて来るかわりに、たくさん死にます。到着時にすでに死んでいるのもいれば、到着直後に死ぬものも多いです。熱帯魚ショップに注文したときのような感覚でいると、「10匹も死んでる!!」などと大騒ぎしてクレームをつけそうです。
 しかし、あくまでもこれは“釣りエサ”ですから、そのようなことは“ふつうのこと”です。1匹ごとに値段のつけられている熱帯魚と同じ感覚で捉えてはダメです。1匹も死なせたくないなら、熱帯魚ショップで「1匹いくら」で買いましょう。
 ただし、上記の「片山フィッシュフード」さんの場合、たくさん死ぬ分も見込んで、注文よりもだいぶん多めに送られてきます。

3. 安易に「割安だから」と考えて多めの量を注文すると、到着してから飼育に困ります。
 ミナミヌマエビは、水槽の中ですぐに殖えるので、たとえば60センチ水槽なら、最初に50匹入れれば半年後には200匹とか300匹とかになります。最初に欲張って例えば200匹を入れれば、濾過能力がまったく足りなくて悲惨な状況になるかもしれません。
 上述のように、釣りエサ店は死着分を含めて発送してくれることが多いので、欲張ってたくさん注文しないように気をつけてください。

4. 注文にあたっては、前もって収容する水槽と水などの用意をしておくことも大切です。この点については、以下に具体例を示しておきます。

 

 

=== “釣りエサ”のミナミヌマエビの受け入れ方  ===

 

 ミナミヌマエビに限らず、ヌカエビやヤマトヌマエビなど日本で採取・自家繁殖されたエビは、概ね問屋さんで低温でキープされています。そして、発送も、暑い時期なら「クール宅急便」で送られてくることが多いです。
 したがって、
届いたエビを、26度もあるような熱帯魚の水槽にいきなり導入することはできません。時間をかけて、ゆっくりゆっくりと水質と温度を合わせる必要があります。

 

 そこで、受け入れにあたっては、次のようなものを用意しておきましょう。

1.当然のことながら、受け入れるための十分に濾過が回っている水槽
2.
底面積が大きな容器(発泡スチロールのトロ箱など)
3.
水槽から取った中性〜弱酸性の飼育水
4.
エアポンプエアストーン
5.
換水用の道具
6.
エサになる水草
7.「アクアセーフ」などの
粘膜保護剤

 アルカリ側に傾いた水を使うと、アンモニア中毒が進行します。必ず酸性側に傾いた水を用意しましょう。

 

 ミナミヌマエビを注文する前に、エビを収容する予定の水槽の濾過の調子は必ず確かめておきます。

 

到着前日

 届く前日には、水槽の飼育水を多めに容器に入れ、エアレーションしながら室温に下げておきます。この水は、届いたエビの水合わせに使います。

 

到着当日

 たとえば「片山フィッシュフード」さんのところへ注文すると、このような箱で、「クール宅急便」で送られてきます。
 もちろん「クール」ですから、そうとう冷たいです。

 

 届いたら、すぐに開梱します。エビがたくさん入っているので、しばらく置いておくだけで、どんどん死んでいきます。

 開梱すると、こんな状態です。薄いブルーの紙は、同梱されていた取扱いの注意点が書かれた紙です。

 

 このときは、「100グラム」の注文です。
 中には2つの大きな袋が入っていました。

 

 袋はすぐに開け、大きな容器に両方とも中身をあけます。

 開けると、アンモニアの匂いがプンとするはずです。

 

 アップにするとこんな感じです。一応「100グラム=300匹」とされていますが、どう見てもその倍はいます。
 また、死んでしまっているのも数十匹はいます。このあたりは、“エサ”なので仕方がないと考えましょう。
 「100グラム」を注文すると、死ぬ分を差し引いても、60センチ水槽に60匹ずつ入れて水槽5本分になります(私の場合、ミナミはすでにたくさんいたので、増設した水槽にだけ入れ、あとは知人に分けました)。

 このとき、水温を測ってみると、5度でした。したがって、いきなり26度もある本水槽の水で水合わせを始めると、まず間違い無くエビは大量に死んでしまいます

 そこで、まずはゆっくりと室温に慣らしていきますが、袋に入っていたアンモニアたっぷりの水のまま温度を上げるのは危険です。
 まずは容器の水を半分捨て、そこへ前日に用意しておいた飼育水を少量ずつ足しながら徐々に室温へ近づけていきます。

 このとき、私なら粘膜保護剤を規定量の少なくとも3倍ぐらいを混ぜながら作業します。
 また、エサになりそうな傷んだ水草を沈めてやると、足場にもなるので良いです。ただし、タンパク質の多い市販のエサはお勧めできません。さらに急激にアンモニア濃度が上がります。

 ピンネイトを鉛で束ねて沈めてあります。黒山の“エビだかり”になってます。 

 水質合わせと水温合わせのスピードは、できるだけ緩やかな方が良いのですが、中のアンモニア量を減らす必要もあるため、あまりゆっくり過ぎてもだめです。エビの様子を見ながら数時間かけるのが良いです。温度の低い飼育水を大量に用意できるのなら、その水を使って2〜3日かけて徐々に26度ぐらいまで上げれば、もっと確実です。

 同時に、袋から出したら、すぐにエアレーションを始めます。水合わせをしている間も、ずっとエアレーションを続けましょう。アンモニア中毒の防止と酸素補給に効果があります。

 また、死んだエビは速やかに別の容器に取り出します。残しておくと、これもアンモニアの発生源になります。

 室温に合わせたあとは、熱帯魚を導入する時のふつうの水合わせと同じ要領で本水槽に導入します。ただし、水温は時間をたっぷりかけた方が良い結果を得られます。

 

 ちなみに、ここでは1店しかご紹介していませんが、アクアリストにとって良いと思えるお店なのでご紹介しただけで、私は「片山フィッシュフード」さんとは何ら利害関係はありません。他にも比肩できるお店がありましたら、ぜひ情報をお寄せ下さい。

 



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