密閉式フィルターの掃除の仕方
  


 

 密閉式フィルターの掃除は、いったん要領を覚えてしまえば、右手で鼻クソをほじりつつ左手1本でできてしまうような簡単なことですが、初心者のうちはなかなか難しいです。コツを知っていれば、わざわざ「呼び水」なんてめんどうなことも必要ないのですが、その辺のところを詳しく説明している記事も少ないです。
 そこで今回は、実際に掃除を行っているところを画像で見ながら、できるだけ具体的に説明してみたいと思います。

 説明に使っているのは、現在、水草水槽用として最もポピュラーであろうと思われる機種、また私の一番のお勧めの機種でもある「エーハム2213NEW」です。
 外部密閉式フィルターの構造は、どの機種でもそう大差はないので、以下の例を応用すればお手持ちの機種に対応できると思います。

(すみません。↑ 少々強気にですぎました。鼻クソをほじりながら掃除をすると「鼻血ブー」となる危険が多々あります。お気をつけ下さいm(_ _)m)

 

< 掃除が必要な時期の判断 >

 初心者の方とベテランの方の差が大きく出るところの1つに、フィルター掃除の頻度があります。
 始めたばかりのうちは、少し水槽の調子が悪くなっただけで「フィルターの中に硝酸塩が溜まってしまったかも」と心配になったりして、頻繁に掃除をしがちです。
 一方、ベテランでは、フィルター内の濾材が目詰まりして水流がほとんどなくなるぐらいまで掃除をしない方も珍しくありません。
 実際のところ、水草水槽をそれなりにでも維持できていれば、フィルターの中の状態が問題になることは、まず無いはずです。初心者のうちは、水槽の中の不調の原因を発見できないために、フィルターの中の状態を原因だと思い込んでしまう傾向があるようです。

 掃除の時期を判断する具体的な方法ですが、一番確実なのは、水流の強さを目で見て判断する方法です。これなら、水流が弱まってくればすぐにわかります。
 ただし、判断にあたっては、少し注意が必要です。
 外部密閉式フィルターは、セットすると、まずウールやスポンジが適度に目詰まりしてきます。このときに、水流が若干弱くなります。そして、初心者のうちは、このときに掃除に取り掛かってしまいがちです。
 しかし、フィルターは、少し目詰まりし始めたときに最も調子が良いのがふつうなのです。状態によっては嫌気濾過も盛んに行われるようです。ですから、このタイミングで掃除をしてしまってはもったいないです。目詰まりが原因で問題がでるほど水流が弱くなるには、さらに相当の時間が経過してからです。
 したがって、少しぐらい水流が弱くなっても慌てて掃除をしないように注意しましょう。

 ちなみに、密閉式フィルターにはこのような傾向があるため、そのモーターの良し悪しを判断するときには、濾材が詰まり始めたときにどのぐらいパワーを発揮するか、という点も考慮に入れるべきでしょう。

 それから、あまりにも長期に渡って掃除せずに放置しておくと、濾材がすっかり目詰まりしてしまい、まったく水が出てこなくなってしまっていることがあります。
 そして、そういう状態まで置いておくと、濾過器の中の圧力が下がって、濾過器内に空気が入り込んでしまうことがあります。そうなると、モーターが空回りしてしまいます。そのままの状態が長く続けば、まず無いとは思いますが、発火する可能性もゼロではありません。濾材が詰まって空気が入り始めたら、モーターが変な音を立て始めるはずなので、「音がおかしいな・・」と思ったら、水が出ているかどうかをすぐに確かめるクセをつけておきましょう。

 

< 掃除にあたっての注意点 >

 ご存知の通り、フィルターの中は、水を浄化する微生物の固まりです。そして、そこを掃除しようというのですから、掃除のあとは水槽全体の浄化機能は、当然、大幅に低下してしまいます。
 そこで、フィルター掃除による水槽へのダメージを一定以内に抑えるための重要なポイントが2つあります。
 1つは、「綺麗にし過ぎない」ということです。濾材をよく洗ったり、漂白したり、全部入れ替えたりといったことはもちろん、水槽水で濾材をゆすぐにしても、あまり徹底的にしてはいけません。感覚的には、「ついている汚れの半分程度を落とす」というぐらいに留めておきましょう。
 ちなみに、洗濯洗剤のコマーシャルみたいに、「白い濾材って、ス、テ、キッ!」と、歌いながら踊り回るのはそれぞれの自由です。
 そして2つめは、「底床掃除や大掛かりなトリミングと、フィルター掃除の間には、1月ぐらい空ける」ということです。同時にやると、直接的に濾過バクテリアの数が減ってしまうのはもちろん、間接的には、水槽内の水質が大きく変わってそれが原因で濾過バクテリアやプランクトンの大量死滅を招く恐れもあります。

 

< 掃除仕方の実際 >

1. まず、ヒーターにつながっているサーモスタットのプラグと、フィルターのプラグを両方とも抜きます。
 サーモを切り忘れると水槽内に局所的に熱いところができてしまいます。そういう事態を引き起こさないために、両者は必ず同時に抜くクセをつけましょう。
2. 次に、ダブルタップのレバー(吸水側・排水側、合わせて4つのレバー)を倒します。
3. そして、タップとタップの間のリングを緩めてホースの接続をはずします。
 画像には写しませんでしたが、この接続をはずすとき、スプーン2杯分ぐらいの水がこぼれます。ですから、接続部分に雑巾をあてながらはずすことをお勧めします。
 さて、これでフィルター全体を移動させられる状態になりましたね。
4. ここで、別途、水槽の水をバケツに半分ぐらい取り出しておきます。汚れた濾材をゆすぐための水です。濾材をゆすぐ水は、バクテリアなどに与えるショックを小さくするため、その水槽の水が良いのです。味見は不要です。

 

 次に、フィルターの内部の掃除に取り掛かります。

5. 濾過器の内部の水を抜くために、まず、吸水側のホース(フィルターの下部につながっているホース)の先を洗面器に向け、レバーを回してタップを開けます。そうすると、勢いよく水が出るはずです。(顔にかかることあり。注意!)

6. ただし、この水はすぐにチョロチョロに変わってしまいます。そこで、排水側(フィルターのモーターヘッドから出ているホース)のタップも開けます。そうすると、フィルター内の水が連続して洗面器に出てきます。

7. 中の水が抜けたら、周りの爪をはずしてモーターヘッドを取ります。
8. 開けたフィルターの中からは、ヘドロにまみれた汚い濾材が・・・げげげ。
9. 次に、この汚い濾材を、勇気を出して、先ほど取っておいた水槽の水で「とりゃ〜!」と洗います。
 洗い方は、中身を取り出さずにバスケットごとゆすったり振ったりすれば十分です。
 ウールは、再利用する分を少しだけ残し、あとは捨ててしまいます。長期間使ったウールは、コシが無くなっていて、再利用してもすぐに目詰まりしてしまうからです。

 

 モーターヘッドの中は、滅多なことでは洗いません。モーターヘッド内が詰まって問題が発生するようなことは、ほとんどないからです。ヘタにいじると、かえって、セラミック製のシャフトを折ってしまったり、回転の中心がずれてしまったりといったトラブルを引き起こすことがあります。よほどひどい状態になっていなければ、開けて掃除をする必要は無いと思います。

10. 今回のこのフィルターの場合、モーターヘッドを開ける必要は無かったのですが、撮影のためにあえて開けてみました。

 まずは、フタの「押さえ」部分の羽を回して、この「押さえ」をはずします。

11. そして、その下にあるツマミをつまんで、フタを開けます。
12. そうすると、磁石とシャフトと水送り羽が一体となったユニットが取り出せます。このユニットは、シャフトを痛めないように、真っ直ぐにそっと取り出します。

13. そして、ブラシなどを使って、穴の中の汚れを適当にこすり、先ほどのバケツの汚い水でざっと流せば、掃除としては十分です。

 

 次は、掃除し終わったフィルターのセットの方法です。

14. まず、ゆすいだバスケットを別のバケツに取り出します。そして、新しいウールを適量(多過ぎると目詰まりしますし、少な過ぎると濁りが取れにくいです)と、今まで使っていたウールを少量、合わせてセットします。

15. ここで、吸水側(本体の下部から出ているホース)のタップを閉じます。

16. そして、バスケットにフタをつけてケースに戻したら、ケースのフチのOリング(パッキン)があたる部分を、綺麗に拭き取ります。
 この部分に髪の毛が一本はさまっていただけでも、そこから水漏れすることがあります。ですから、この部分の掃除は大切です。
17. もちろん、パワーヘッドの側のOリングを取り付ける部分も同じです。ここも綺麗に掃除します。掃除した後は、ゴミがついていないか、目でよく見て点検します。
18. 次にOリングを取り付けますが、その前にOリングにヒビが入っていないか、点検します。少々のヒビなら、ワセリンを塗れば大丈夫です。
19. ここで、排水側(パワーヘッドについている方のホース)のタップが開いていることを確認します。このタップを開けておかないと、パワーヘッドがはまりにくいです。

20. そして、吸水口・排水口の向きと爪の位置に気を付けながら、パワーヘッドを本体に載せて爪で固定します。爪で留めたら、必ずOリングがきちんとはさまっているか点検します。

 

 本体のセットは、これでOKです。
 次に、フィルターを水槽に接続しますが、このとき、うまく接続できれば、わざわざフィルターに強制的に水を通す作業(呼び水)が必要無くなります。

21. まず、シャワーパイプの端をちょっと持ち上げて、シャワーの穴の一部が水面から出るようにします。すなわち、シャワーパイプに水圧がかからない部分を作るのです。
22. 次に、フィルターの吸水側のタップを閉じ、吸水側・排水側の両方のタップが閉じていることを改めて確認します。

23. 確認したら、フィルターを元あった位置に戻し、タップとタップをつなげます。この際、まだタップを開いてはいけません。

24. 吸水側、排水側ともタップがつながったら、まず、吸水側のタップを2つとも開けます(間違って、排水側を開けてはいけません)。

 吸水側を開放すると、水槽の水がフィルター内に、少量だけ激しく流れ込むはずです。

25. 流れ込み始めたら、その流れが止まらないうちに、直ちに排水側のタップを開放します。すると、フィルター内の空気が、吸水側から流れ込んでくる水に押されて、シャワーパイプから出て行くはずです。

26. フィルター内の空気が全部抜け、水の流れ込みがおさまったら、フィルターの電源を入れます。こうすれば、呼び水無しでフィルターをスタートさせられるはずです。
 このとき、モーター部から異音が出ても、それが激しいもので無い限り、数秒はそのまま様子を見ます。この異音はフィルター内に残っていた空気を追い出している音だからです。ここですぐに止めると、モーターハウス内に空気が溜まってしまって、改めて呼び水をしないといけなくなることがあります。ただし、しばらくしてもモーターの異音が続く場合は、いったん、プラグを抜いて、もう一度差してみます。

注意!
 激しい異音がしたときは、直ちにプラグを抜きましょう。また、プラグを何度も抜き差しすると、セラミック製のシャフトが折れてしまうことがあります。ほどほどにしておきましょう。

 

 

 さて、フィルターの掃除とセットはこれで完了です。

 しかし、フィルター掃除を完璧に行うには、まだ続きがあります。
 フィルターの中に居たかもしれない稚魚やエビの救出です。

27. フィルターから抜き取った水を、濾材を洗った水と一緒にします。
28. この水は、静置して濁りが沈殿するのをゆっくり待っていても良いのですが、時間が無い場合は、この水を目の細かいネットで漉してしまいます。
29. そして、ネットで漉したものを、水槽の水で満たしたプラケースに投入し、しばらく静置します。
 すると、画像のように濁りが沈殿するので、稚魚や稚エビが混じっていればすぐに見つかります。見つけたら、ピペットなどで水槽へ戻してやります。

 

 以上が、密閉式フィルター(「エーハイム2213NEW)の掃除の仕方です。

 

< ホースの掃除 >  01.11.18

 ここまでにはホースの中の掃除が出てきておりません。というのも、ホースの中の掃除は、モーターヘッドの掃除よりも頻度が低いからです。
 もちろんホースの中にはモロモロ状のものが着きますが、使用上、そうそう支障になることはありません。ある程度着くと、勝手に剥れて取れますし、固まって付着しているところがあるなら、ホースのその部分をちょっとつまんでやれば、取れて流れていきます。また、これらは微生物の棲みかとなっているので、有用なものとも考えられます。
 したがって、私の場合、フィルターの使用上の問題が発生しない限り、ホース内を掃除することはありません。うちで10数年使っている一番古株のフィルターで、今までにホース内を掃除したのは、私の気まぐれでした1回きり、というぐらいしないです。(笑)

 ちなみに、掃除をする場合、その方法には主なところで2つあります。

<ワイヤーブラシを使う方法>

 ワイヤーの先にブラシがついている道具で、ホースの中をゴシゴシする方法です。エーハイムのアクセサリーとして売られています。「ホースクリーナー」という名前で、500円くらいです。
 注: 吸水側と排水側でホースの径が違う機種の場合は、2つ買う必要があります。

<スポンジと水流を使う方法>

 スポンジを、ホースにぎゅうぎゅうになる大きさに切り取り、これをホースに突っ込みます。そして、そのホースを水道の蛇口に取り付けて、蛇口のカランを一気に回すと、水流に押されてスポンジがぐいぐい進んでいき、汚れもきれいに取れます。
 注: ホースの径と蛇口の径が合わないことがよくあるので、合わないときはシャワーの頭の部分をはずして使うなどの工夫が要ります。

01.11.11
01.11.18 <ホースの掃除>を追加



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