■GOOD AQUA■

水草水槽のミニ知識


 ここには、水草水槽に関して、私が得た雑多な情報を集めてあります。学問的に証明されているものもあれば、経験から得た知識もあります。実践的から学んだ知識には、世間的に常識とされていることと異なるものもありますが、気にせずにそのまま書いてあります。お含みおきください。またこのコーナーは初心者むきコンテンツの拡充の一環ですので、内容は基礎的な知識が中心になります。したがって、中・上級の方には常識的なことばかりであまり役に立たないと思います。読み飛ばしてください。
  できれば、同じテーマの内容が揃った段階で、別のコンテンツとして編集し直そうと思っています。 03.11.01〜


●ヒーターカバーは生体の種類次第
 ヒーターは通電すると全体が熱くなるわけではなく、ヒーターの一部だけが高温になる。したがって、その部分が生体や他の器具に触れてダメージを与えるのを防ぐため、“ヒーターカバー”というものが市販されている。このヒーターカバーをヒーターに着けるかどうかは、水草水槽のキーパーの間で意見が分かれるところだ。水草や水槽のガラスを傷める危険を考えれば着けた方が良さそうに思える。一方、水草水槽には火傷をしがちなディスカスやプレコ、エンゼルといった大きな魚を入れることがほとんど無い。また設置場所に気をつければ
水草や他の器具に傷める危険性も低い。
 しかし、水草水槽でよく問題になるのは小さな生物のカバー内へのもぐり込みだ。クーリーローチやカラシンの稚魚などは、ヒーターカバーの中によく自分で入る。また、ミナミヌマエビやクリスタルレッドシュリンプなどの小型のエビも隠れ家にしたいのか、よくもぐり込む。そういった生体の場合、ヒーターに通電されたときにその熱を感じて素早く逃げてくれることがほとんどだが、そのまま茹ってしまうのもいる。ヒーターカバーの構造によっては逃げにくいので少なからぬ数が犠牲になる場合もある。
 したがって、もぐり込もうとする性質をもつ生体を収容する水槽では、ヒーターカバーを着けるかどうかには慎重な判断が必要だ。

●ヒーターの設置は慎重に
 ヒーターは水槽のどこにでも適当に放り込んでおけば良いというものではない。次のような設置の仕方はダメだ。
・ 縦にして着ける (水槽からプラケースで水を掬っただけでヒーターが水面から出てしまったりする)
・ 水槽のガラス面にひっつける (ガラスの一部だけが熱せられて割れてしまうことがある)
・ 水草にひっつける (水草がおひたしになってしまう)
・ 水流が弱いところに置く (ヒーターの周りだけが熱せられて水槽全体が温まらない&水温の変動が大きくなる)
・ 底床の中に埋め込む (ヒーターの周りだけが熱せられて水槽全体が温まらない&水温の変動が大きくなる)
・ キスゴムに近づける (キスゴムが早く劣化する)
・ 水槽のシリコンボンドに近づける (シリコンの傷みが早くなる)
・ サーモのセンサー部分のそばに置く 
  (センサーがすぐに反応してしまうので通電の入切が頻繁になり器具の劣化を早める。特にセンサーの真下に置くのは最悪)
・ 水温計のそばに置く (まともに測れない)
・ キスゴムでヒーターを固定しない (トリミング時など、気づかないうちに位置を動かしてしまいガラスにひっつけてしまったりする)

●ミニ水槽にはシート型ヒーターという手もある
 一般的なヒーターの他に、爬虫類の飼育などでよく用いられるシート型のヒーターも使える(「フィルムヒーター」とも呼ばれる)。自動感知で温度を一定の範囲内で維持してくれる。ふつうのヒーターを入れると大き過ぎて目立ってしまうミニ水槽にはありがたいものだ。
  水槽の下に敷い使うタイプが一般的だが、製品によっては水の中に入れられるものもある。
  定番品としてはみどり商会の「ピタリ適温」が有名だ。少々値がはるが、ブラインシュリンプを孵化させるときなどにも使え、何かと便利だ。

●大きな流木のアク抜きはナイロン袋を使うと便利
 大きな流木を買って来た場合、アク抜きのときに困る。それが収まるような大きな鍋がなかなか無いからだ。そんなときは、ゴミを出すときに使う大きなナイロン袋を活用すると良い。中にお湯を入れて流木を包めば、大きさ的にも形的にも自由度が高くて重宝する。
  ただし、売られている流木の中にはADAの「オールドブラックウッド」のようにお湯につけるとタール分が木の表面に浮いてきてしまうものがある。したがって、袋に入れるのを水にするかお湯にするかは、流木の種類を見て決めなければならない。
  また、ナイロン袋は1枚だけだと流木が刺さって穴が空いてしまうことがある。よって、何枚か重ねて使うこと。

●複数つけているヒーターの点検は必ず1本ずつする
 1つのサーモスタットに複数のヒーターをつけている場合、通電の点検は1本ずつ行うこと。みなつけたままだと壊れていてもなかなか気づかないからだ。
 点検する際は、点検するヒーターだけをサーモに残し、いったんヒーターに通電されるところまでサーモの設定温度を上げて調べる。これをそれぞれのヒーターについて行えばOK。その際、ヒーターは水に浸かった状態にしておくこと。空気中で点検すると安全装置が働いたり壊れたりする。また、点検が済んだらサーモの設定温度を元に戻すのを忘れないこと。

●病魚の隔離用に器具を1セット用意しておく
 きちんと飼っていれば魚の病気の発生はそうそうあることではないが、どうしても何かのはずみで発生してしまうこともある。そのような突発的な場面に備えて道具は一揃い余分に持っておくべきである。とは言っても、そんなに大げさなものでなくてOK。必要なものは次の通り。
・プラケース(大と小1つずつ)
・エアポンプ、エアチューブ、分岐コック、エアストーン
・サーモスタット、ヒーター
 病気が発生したら、すぐに小さいプラケースに掬って入れ、そのまま水槽に浮かせておく。ただしそのままだとすぐに酸欠になるしアンモニアも蓄積してしまう。よって、同時に大きなプラケースの準備も始める。大きなプラケースの方に受け入れの準備ができたら魚を移す。薬はその都度、状態を見て専門家に相談した上ですぐに購入してくること。
 隔離用の容器は大きなプラケースではなくバケツなどでも良いのだが、透明な容器の方が病気の状態を確認しやすい。

●安いグッピーは買って来てもすぐに死ぬ
 ショップに行くと、1ペア300円ぐらいの値段のグッピーが「初心者向き」としてよく売られている。実はこのような値段のグッピーはほとんどが東南アジアで養殖されたいわゆる「外産(外国産)グッピー」と呼ばれるものである。
 問題は、この外産グッピーは病原菌を持っている可能性が高い、ということだ。買って来ても病気が進んでしまってすぐに死ぬことが珍しくない(もちろん、買ってきてからの扱いが不適切であったため、という場合もある)。もし病原菌をもっているグッピーを水槽に入れれば、元から水槽にいた元気なグッピーまで道連れにされてしまう。
 したがって、外産グッピーは「初心者向き」として売られていても購入を避けるのが無難だ。慌てて購入せず、水槽に導入する前の薬浴の方法や治療の方法、水合わせの方法などをマスターし、それから挑戦すれば良い。
 もちろん、そういった外産グッピーの病気の問題を真剣にとらえ、病原菌を持たない外産グッピーのみを販売しているショップもある。また、一般に「国産グッピー」と呼ばれる日本国内で殖やされたグッピーもある。こういったグッピーを購入すれば病気の問題に悩まされることも無い。ただし、国産グッピーは安くても1ペア1000円ぐらいはする。

●グッピーと水草の組み合わせは意外に難しい
 グッピーは水が少しぐらいアルカリ性に傾いても酸性に傾いても調子を崩しにくい丈夫な魚だ。したがって、酸性側に傾いた水を好む水草とも、アルカリ側に傾いた水を好む水草とも一緒にすることができる。
 しかし、最近主流の南米アマゾン産の水草を中心に水草水槽を作り上げるつもりならグッピーは避けた方が無難だ。アマゾン産の水草を育てていると水草の種類によっては水をぐっと酸性に傾けなければならないことがある。そうなると、いくら丈夫なグッピーでも調子を崩してしまいがちだ。また大きなヒレが綺麗に育たないことも多くなる。
 逆に、グッピーを中心に考えてグッピーの好む水質に合う水草だけを選ぶという手も考えられる。しかしこの場合は選択できる水草の種類がずいぶん限られてしまう。
 そのような理由があって、グッピーと水草を組み合わせるのは意外に難しいのが実際だ。
  ちなみに外産のグッピーは、導入直後は酸性の水に弱い。その上、病気を水草水槽に持ち込んでしまうと使える治療薬も限られてきてしまう。よって更に治療が難しくなりかねない。

●ヒーターにはサーモスタットが要らないタイプもある
 通常、サーモスタットとヒーターはセットで使わないとダメなしくみになっている。しかし、中にはヒーターだけで済む製品もある。“固定式”などと呼ばれるタイプで、設定された温度になるようにヒーター自身が電気の入切を自動で行う。市販されている製品の設定温度では、「22度」「24度」「25度」「26度」といったあたりが多い。「22度」など設定温度の低いものは金魚などの飼育向けなので、熱帯の生体を育てるつもりなら25〜26度あたりのものを選ぶこと。
  この「固定式」タイプは、温度調整できない代りに、サイズがのコンパクトなのでミニ水槽に使ってもあまりじゃまにならないという利点がある。
 ちなみによく似たタイプに、ヒーターとサーモが合体して長いヒーターのような形になったものがある。しかしこちらは最近売られているのをあまり見かけなくなっている。

●現在のサーモスタットの主流はIC式
 現在市販されているサーモスタットは、ほとんどが「IC(集積電子回路)式」のものだ。そして昔からある「バイメタル式」のものもまだ少数ながら売られている。
 IC式のものはダイヤルを目盛に合わせるだけで温度を設定できる。一方、バイメタル式は設置時に水温計を見ながら時間をかけてつまみを調整しなければならない。また,、バイメタル式は接点が焼きついて通電しっぱなしになる故障が起きやすい。よって年に1回、稼動の季節の前に接点を磨くなどの手入れが必須である。この点、IC式のものは故障するにしても、切れて通電しなくなる故障の方が多い。手入れも特別なことはしなくてすむ。
 値段に関しては、IC式がやや高めで実勢1300円程度から。
バイメタル式の方が実勢800円程度からとなっている。

●ヒーターとサーモスタットは火災対策つきの製品を!
 選択で一番大切なのは「安全対策が施されているかどうか」だ。地震や水漏れでヒーターがむき出しになってしまった場合、その状態で通電が続けば火災が起きる。日本では毎年のようにどこかでこれが原因となって火災が起きている。この現状を必ず考えるべきである。阪神・淡路の震災のときも水槽のヒーターが原因で何件も火災が起きた。
  したがって、ヒーターとサーモスタットの選択にあたって一番大切な判断基準は「安全対策が施されているかどうか」と断言できる。
  安全対策が施されている製品は、施されていないものよりも数百円高いのがふつうだ。しかしその数百円を惜しんで家族を焼死の危険にさらすのはあまりにも愚かな行為と言える。
  大切なことなので繰り返し言っておく。たかが趣味のことで、それも数百円のことで、家族や隣人を焼き殺すリスクを負うのは本当に愚かだ。ここで数百円を惜しまないとダメな人はそもそも水槽など持つべきではない。
  しつこく言っておく。「ヒーター・サーモは必ず火災対策つきを買うべし!」

●ヒーター・サーモの安全対策の種類
 市販されている製品の安全対策としては、いくつか種類がある。
・ヒーター:温度が上がり過ぎると回路が切断されて通電が止まるもの(冷めたらまた使える)
・ヒーター:温度が上がりすぎるとヒューズが切れて通電が止まるもの(冷めても使えない=使い捨て)
・サーモ:温度が上がりすぎると回路が切断されて通電が止まるもの(冷めたらまた使える)
・サーモ:水位センサーが水位の低下を感知して通電を止めるもの
・サーモ:過電流を感知して通電を止めるもの
・水位センサー:水位の低下を感知して通電を止めるもの。サーモと接続して使う。

●ヒーターのW数は適切なものを選ぶ
 よく「ヒーターは余裕をもって大き目のものを」と言われるが、それは聞かなくてよい。もちろん小さ過ぎて常に通電しっぱなしになるようなヒーターは問題外。設定したい温度まで水温を上げることさえできないからだ。しかし大き過ぎるものも良くない。大き過ぎると、通電と同時に水温が急に上昇することがある。サーモスタットの種類によっては水温が1度ぐらい下がったところで通電を開始し、設定温度の1度上まできた時点で通電をやめるものもある。そうしたサーモスタットに大き過ぎるヒーターをつなげると、水温が一気に“2度”も上昇することになってしまう。これが生体にとって良いわけがない。特にエビには相当の負担になる。
 したがってヒーターのW(ワット)数は、設定温度に達せられないほど小さ過ぎると困るが、大き過ぎるのも困る。水温がゆっくり上がって設定温度まで戻る程度の大きさのものが最適だ。

●ヒーターの最適なW数は「水量」で考える
 最適なW数は製品ごとに異なるが、それは製品の箱などに表示してあるので必ず確認して買う。一般に、外気が5度程度になる時期に水を26度に保持しようとすれば、60リットル(60センチ水槽ぐらい)に150W、240リットル(90センチ水槽ぐらい)に450W程度あれば足りる。
 注意点は2点ある。W数の決定にあたっては水槽のサイズではなくて水量を基準にする、という点と、水槽のサイズが大きくなればなるほど水量に対するW数の割合は小さくて済む、という点だ。後者については体積と表面積の関係を考えれば分かる。

●ヒーターとサーモスタットの両方のW数を確認して買う
 サーモは、製品ごとにつなげられるヒーターのW数が決まっている。「300Wまで」と書いてあれば、つなげられるヒーターのW数の合計は300Wまでだ。300Wのヒーターなら1本、150Wのヒーターなら2本までつなげられるということになる。もちろん100Wのものを1本だけ、あるいは200Wのものを1本だけつなげて使うこともできる。ただし、製品によっては「70〜300W」と書いてあるものもある。そのようなサーモの場合、例えば50Wのヒーターをつなげたとしてもサーモが正常にはたらかないので注意が必要だ。
 また、サーモには製品によってヒーターをつなげるためのコンセント部分が2口や3口になっているものと、1口しかないものとがある(適応するW数の大きなサーモは大抵複数口になっている)。したがって、ヒーターをヒーター切れ対策のため複数着けるつもりならば、コンセント部分を確認してから買うこと。ただ、市販の分岐プラグを使って口数を増やすことも可能ではある。

●ヒーターは消耗品。予備は必須
 シーズン中に何度も何度も入切を繰り返すことになるヒーターは、フィルターのモーターなどと比べると寿命が短い。“当たり”の製品であれば2シーズン、3シーズンと長持ちするが、1シーズンでダメになるものも多い。これを「壊れたときに換えればいいか…」と甘く考えていると痛い目に遭う。冬場など、すぐに気づけば問題無いが、長く飼っていて水に馴染んでいる魚などは2日、3日ぐらい平気だったりするから余計に危険。気づいたときには手遅れ、ということが珍しくない。したがって生体の安全を考えるなら、まだ使えるヒーターであっても早め早めに交換すべき。「それはあまりにももったいない」という場合は、常に予備のヒーターを持っておき、毎日朝晩に水温計を点検して異常があった場合はすぐに交換すれば良い。

●サーモとヒーターの故障による危険は「点検」でしか回避できない
 サーモやヒーターの故障によって生体を死なせないようにするには、まめに自分の目で温度計を見て点検するしか方法がない。故障による水温の急変を避けるためにこれまで様々なアイデアが出されているが、未だ決定打は無いのが現状だからだ。
 例えば、サーモ&ヒーターを水槽に2回路着けておくのはなかなかに有効だし、300Wのヒーター1本よりも150Wのヒーターを2本にした方がヒーターが故障したときの危険を回避しやすい。しかし、こういった方法だと片方が壊れていてももう一方が動いているためかえって異常に気づきにくかったりもする。またヒーターが切れなくなってしまう故障には対応できていない。通電しっぱなしになって魚や水草を煮てしまう危険は2倍に増えている。
 よって、やはり故障は自分の目で点検して見つけるしかない。
  ちなみに、高価ではあるが水温の異常を検知するセンサーも市販されている。

●サーモスタットの品質は値段に比例しやすい
 アクアの器具には「こっちの製品とこっちの製品、ちょっと違うだけで何でこんなにも値段が違うんだ?」というものが多いが、サーモスタットは比較的値段と品質が釣り合っている製品の一つだ。安いものだと数100円から売られているが、上は5000円以上のものもある。買った直後のシーズンにはそれぞれ大差無いが、2シーズン目、3シーズン目を迎えるとだんだんと差が出てくる。安いものだと設定温度にならないものが出てくるのだ。この点、性能は同じなのに高価な製品にはそういうことは滅多に起きない。複数年に渡って使用するなら、サーモにはあまりお金をケチるなかれ。

●サーモとヒーターは別々に買うべし
 サーモスタットとヒーターは、個々の製品をプラグでつないで使うタイプのものと、両者が最初からつながっているタイプのものとがある。値段はつながっているタイプの方が安め。しかし、つながって一体となっているタイプだと、どちらかが壊れたときに両方まとめて買い直さなくてはならなくなる。別々になっているものだと壊れた方だけ買い直せば済む。したがってサーモとヒーターの寿命にけっこう差がある現状を考えれば、複数年使う場合は別々になっているものの方が得になることがほとんどだ。

●水槽に使える「流木」
 一口に「流木」と言っても、実は水に浮かんでいたものではなく地上で採取されたものもある。両方に共通しているのは、“腐敗・分解されにくい部分である”ということだ。木が水上や地上で風雨にさらされ虫や微生物に分解されてそれでも残った部分、というのが水槽のレイアウトに使える部分ということになる。分解されずに残った部分だからこそ水槽の水に浸けて使うことができるのだ。

●「流木」の種類
 そもそも木は水に浮くものである。にもかかわらず、水槽のレイアウト用の木は水に沈む。すなわち、水槽のレイアウトに用いられる木は特殊なもの、と考えるのが正しい。
  代表的なのは、目が詰まっていて重い種類の木である。よく流通しているのが紫檀と黒檀の仲間だ。これらは水よりも重い。したがって水を染み込まさなくても沈む。次によく売られているのが木の芯の部分である。柔らかくて目の詰まりのゆるい部分が分解され、中心の目が詰まっていて堅くて分解されにくい部分が残り、これが採取されてくる。このグループのものはある程度水にを染み込まさないと沈まないことが多い。

●拾ってきた流木は要注意
 海岸や渓谷に出かけたときに流木を見つけることもあるはずだ。しかし、それを水槽に使うのは注意が必要である。腐敗・分解があまり進んでいないものだと水槽の中で腐敗の続きが始まってしまう。また、分解がある程度済んだものであるか、あるいはまだまだ進む余地がるのか、それを見極めるのは簡単でない。「沈むかどうか」だけでは判断できない。加えて、海で拾った流木の場合は塩抜きが必要になる。したがって、採取してきて使う場合はある程度のリスクを覚悟しておいた方が良い。

●レイアウト用の流木からはアクが出る
 レイアウト用に売られている流木だが、これを水槽に入れると水がだんだんと茶色くなってくる。流木からアク(本当は灰汁ではないが)が染み出てくるからである。このアクは魚などに良い影響をもたらす場合も多いが(産卵の促進など)、水草水槽の“観賞”という面からはあまり好ましいものではない。「アクが出ない流木」などと謳って販売されているものもあるが、染み出してくるのが速いか遅いかだけの違いがあるだけでやはり染み出してくるので要注意。換水を少なくした維持を考えているなら、流木をレイアウトに使うのは避けるのが賢明だ。アクの染み出しが比較的緩やかなものとしてはADA社の「オールドブラックウッド」が有名。

●流木のアク抜きの方法
 水につけておいても数ヶ月すればアクの染み出しは緩やかになるが、これを短期間ですます方法もある。大きく分けて2つの方法だ。1つは大きな鍋や缶に水と一緒に入れ、グラグラ煮てから冷ます方法。もう1つはミョウバンなどの溶液に浸ける方法だ。前者の場合、流木の中心まで熱が通ったら火を止め冷まし、冷めたら水を換えてまた熱を加える。これを繰り返す。冷めるときにアクが多く出るので何時間もグラグラやるよりもこの方が効果的。後者の場合、水20リットルにミョウバンを30グラム程度溶かしてそこへ3日ほど浸し、次に真水に3日ほど浸す。
※ADAの「オールドブラックウッド」のような流木は熱を加える方法はダメ。煮るとタール分が表面に出てくる。このタイプの流木はざっと洗って水に数日浸けたらそのまま使う。

●流木はアクの塊だと知れ
 流木は、たとえその表層のアクを除去したとしてもその下からまたアクが染み出てくる。表層が邪魔になってそのスピードが遅くなるだけだ。どんなに長く水につけたり炊いたりも、完全にアクを抜くことはできない。流木はそれ自体が“アクの塊”だからだ。5年使い続けた流木であっても、使っていればやはり水は茶色くなる。このことを確かめる方法は簡単。流木を真っ二つに切り、中心部をくり抜いて水に浸けてみるだけでわかる。

●流木の「アク抜き」に過剰な期待は禁物
 「13時間煮込んだ流木!」とか「煮込んで表面を磨き上げた流木!」、「アクが出ない“アク抜き済み流木”!」などといった売り出し文句のついたものが売られていることがあるが、過剰な期待をしてはいけない。何時間煮込んでもアクは完全には抜けない。表層のアクが少なくなるだけである。煮込んだあとでその表面を磨くのなどもっての外。そんなことをすればせっかくアクが少なくなってコーティングの役割をしてくれている表層が無くなってしまう。つまり煮込んだ意味が無くなる。また、重要なのは煮込んだ時間ではなく冷やした回数である。表層のアクが少なくなっても奥からは徐々に染み出てくるので「アクが出ない」などという流木は存在しない。本気でそんなことを言っているとすればそんなショップは要注意。流木は、アク抜きをしたあと水槽に10年入れたままにしていてもアクの染み出しが完全に止まることはない。きちんと経験と知識を備えていればそんなことは常識のはずだからだ。
 「流木のアク抜きは完全には無理」。これ、意外に知られていないのでここで覚えておこう。

●流木の表面のコケは熱湯で掃除
 流木を使い続けているとだんだんと房状のコケがついてくることがある。このコケを除去するときは、流木を水槽から取り出して湯をかけると良い。湯は65度ぐらいあれば用が足りる。かけた後はすぐに水槽に戻して良い。枯れたコケはオトシンクルスやエビの餌になる。「オールドブラックウッド」などの場合、あまり高い温度の湯はかけない方が良い。タール分が表面に出て来るからだ。湯の代わりに食酢をそのままかけたり霧吹きで吹き付けたりしても良い。木酢液も使える。この場合はすすいでから水槽に戻す。また、屋外に放置して直射日光にあてる方法もある。漂白剤をつかってもすすぎをキチッとすればエビに影響が出たりしないが、万が一残っていた場合を考えればお勧めはできない。一番ダメな掃除方法は、表面をタワシなどでこする方法だ。これをやると、せっかくアクが少なくなって中からのアクの染み出しを抑えている表層の膜を全部剥してしまうことになる。

 

●魚は水温の急降下に注意!
 熱帯魚が一番かかりやすい病気は白点病。この白点病は急な温度降下がきっかけになって発病することがほとんどである。緩やかな降下であれば白点病をおそれる必要はない。急に下がるのが危険なのだ。例えば、1時間に2度、とか3度とかいったケースでも白点病にかかる危険がある。たった2度や3度の変化であっても、その水温降下が「急」ならば白点病にかかる危険は高いのだ。特に水換えのときは要注意。温度合わせをせずにいきなり冷たい水を投入すると、ずばりこの危険なケースにあたる。

●お盆になったらサーモの設定温度を上げよ
 水温の乱高下のために魚に白点病が発生してしまったり、エビが死んでしまったりするのは、季節の変わり目によく起きる。昼間は夏のように暑く、明け方はとても冷え込むためだ。水温も昼間は28度とか29度といったところまで上がるが、朝方はサーモスタットの設定温度(たとえば25度とか26度)まで下がってしまう。この差が危険なのだ。地域にもよるが、ゴールデンウィークの前と、お盆を過ぎた頃に気温が大きく変動するようになる。したがって、一般的には、この頃になったら3日ぐらいかけてサーモの設定温度を2度くらい上げておくと白点病に役立つ。

●エビは水温の急上昇に注意!
 水草水槽で飼われるエビはみな、水温の降下には強いが、反面、急上昇には非常に弱い。1時間に2度や3度水温が上がれば、死んでしまう個体がでるのも珍しくない。エビに水温の急上昇を味合わせてしまう典型的な場面は、「換水時」と「購入時」である。換水で温か過ぎる水を入れてしまうとエビは致命的なダメージを受ける。また、ショップから持って帰って来る途中で水温が下がってしまった袋のエビを、短時間の水合わせで水槽へ入れるようなことをしても、やはりエビに致命的なダメージを与えてしまう。また、このようなダメージはすぐには現われず、3日、4日と経ってから死に始めることも多い。

●エビを買うのなら秋と春が安全
 意外と気にされていないが、水草水槽で飼われるエビのほとんどは、わりと低めの水温のところで生活している。川や沼の底にいるのだから、その水温は低いのだ。特にヤマトヌマエビは冷たい水の川に棲んでいるものが多い。したがって、そのようなところで採取されたエビを、夏場、水温の高くなっている水槽にいきなり導入すれば、大きなダメージを受けて当然である。また、冬場、水温5度とか7度とかいった屋外の冷たい水で養殖されていたエビ(たとえばミナミヌマエビ)を、25〜26度に設定されている熱帯魚水槽へ導入するのにもかなり無理がある。水槽に放す前にどんなに丁寧に水合わせをしても、やはり大きなダメージを与えてしまうことが多い。よって、エビを買うなら、水槽の水温と屋外の水温が近い時期がベストだ。

●低温で仮死状態になったエビも復活可能
 冬場にエビを宅急便で送ってもらったりすると、輸送中に水温が下がり過ぎてしまい、届いたときにはエビがひっくり返って死んでしまったかのようになっていることがある。この時、慌ててそのエビを捨ててしまってはいけない。エビは低温には強いのだ。水温が下がり過ぎて動けなくなっていても、実はまだ生きていることがよくある。いわゆる仮死状態になっているだけなのだ。したがってそのエビも、水合わせで水温が上がってくると、何事も無かったかのように活動し始めることが多い。繁殖能力などにも影響は残らないようだ。ちなみに、水温が上がり過ぎて動かなくなった場合は、復活を期待してもまず無理だ。

 

●水草は新鮮なものを、魚は馴染んだものを買う
 水草は環境が変わると新しい葉をつける。したがって、ショップの水槽に適した葉に衣替えしてしまう前に買うのがお勧め。衣替えで体力を使い果たしたものの方が良くない。しかし、入荷から時間が相当経っていて完全にショップの水に馴染んで栄養を十分に蓄えているものなら問題はない。要するに中途半端に馴染んでいるものが一番状態が悪い。一方、魚やエビの場合はもっと適応が早い。したがって、長旅で疲れてヨレヨレになっているものよりも、ショップの環境に馴染んでしっかりと餌を食べて体力を取り戻しているものが一番である。ただし、これらはあくまでも「原則」。「例外」はある(時間が経つほど生体の状態が悪くなっていくショップなど)。

●水草は環境が変わると草体の一部を放棄する
 水草は、植わっている環境に合った葉や根を生やす。したがって、環境が変わると、前の環境に合っていた葉や根を放棄し(=枯れ落ちる)、新しい環境に合った葉や根をまた新たに生やし直す性質がある。

●水草は短期間で植え替えを繰り返すと枯れる
 水草には、環境が変わると新しい環境に適応した新しい葉や根を出す、という性質がある。したがって、水草は植え替えを繰り返されるとそのたびに新しい芽や根を出し直すことになる。実は、この新しい根や葉を出し直すのが水草のたいへんな負担なのだ。まだ根付いていないのだから、新しい栄養を摂りながら葉などを出すわけにはいかない。草体の中に溜めてあるエネルギーを使って葉を出すことになるのだ。これは水草にとって体力を使う作業である。にもかかわらず、体力の補給をさせる間を与えずにまた植え替えるようなことを繰り返すと、水草は体内のエネルギーが尽きてしまって枯れるにいたるのだ。よって、いったん植えたら、葉などを出すのに使われたエネルギーが回復されるまで、そっとしておくべし。

●購入する水草はある程度状態が良ければそれでOK
 水草には、環境が変わると新しい環境に合わせた草体を作り直し、古い葉や根は放棄して枯れ落としてしまう性質がある。したがって、購入時、ある程度以上の状態が確保できていれば、それ以上の状態(たとえば葉の色つやなど)を要求してもあまり意味がない。どっちみち、自分の家の水槽に移せば、それらの葉は水草自身によって放棄され、枯れ落ちてしまうのだ(もちろん、だからといってすでに溶けているような水草はダメだが・・)。ここは魚の購入とは違うところなので要注意。

●密植させるものを最初からたくさん植えるのは禁物
 リシアやモス、グロッソスティグマ、ヘアーグラス、コブラグラスのように、水槽内や流木に敷きつめるタイプの水草は、最初の量に注意が要る。水草には、環境が変わると前の環境に合っていた草体の一部(葉など)を放棄して枯れ落としてしまう性質がある。しかしそのような性質を知らず、水槽一面に広がるグロッソやリシアの草原を早く実現したいがためにその水草をたくさん購入し、最初からたくさん植えたり配置したりすると、一面のコケ野原が出現することになる。水草が放棄した大量の古い草体(葉など)が腐敗し始めるとともにそこにコケがつくのだ。「リシアやグロッソの購入は少なめに!そして、新しい環境に合わせて出して来る葉で野原を仕上げる!」、これがレイアウトをうまく作り上げるコツだ。

 

●オトシンやプレコの稚魚にゼラチンで栄養補給
 種類によって食わない場合があるが、稚魚の餌にゼラチンが使える。方法は簡単、溶かしたゼラチンをプラスチックの板などに塗りつけて固まったら水槽へ入れるだけ。しかし水温によっては塗りつけたゼラチンがどんどん溶けて水を激しく汚す。よって与えるときは注意が必要。

●寒天とゼラチンは上手に使い分ける
 餌補給用だけでなく醗酵式の二酸化炭素発生装置にもよく使われるゼラチンと寒天だが、うまく使い分けられていないことも多い。寒天は海草から作られる植物質のもので、ゼラチンに比べると高温でないと溶け始めず(85〜95度以上ですべてきれいに溶ける)、固まるのもわりと高い温度だ(25〜40度以下で全部固まる)。一方、ゼラチンは牛や鳥などから作られる動物質のもので、寒天に比べると低温で溶け(20〜25度以上で全体が溶ける)、固めるのにも低温(10〜20度以下)を保たなければならない。両者の違いを知り、水槽に入れる場合は水温を、醗酵式に使うなら気温のことをしっかり考えて使い分けるべし。

●変化がゆるやかなら生体は意外に丈夫!
 水草や魚にはそれぞれ好む環境がある。そしてそれらが適応できる環境には、ある程度の「幅」がある。水草や魚は、環境がその適応できる幅を超えるたときにと弱り始める。しかし酸性度や水温などについては、変化がゆるやかに起きていれば、その生体の一般に言われている適応範囲を超えても元気でいることが多い。つまり環境の変化がゆるやかに進むのなら本来の適応範囲を超えてもわりと平気なのだ。しかし、注意が必要なのは、そういう状態のときは、さらに環境が悪化して一定の限界を超えると急に調子が悪くなることだ。また、だからと言って、大掛かりな掃除をして環境を急に元に戻すのはかえって弱らせることになる。戻す場合も「ゆるやかに」がポイント。

●変化が急なら少しの変化でも弱ることが多い!
 水草や魚は環境がゆるやかに変化するのには平気だが、逆に変化が急だとその変化の幅が少しであっても、調子が悪くなることが多い。たとえば、だんだんと水槽の水が酸性に傾いていき、ついにはひどく酸性に傾いた水槽があるとする。こういった水槽で魚を飼っていたとしても、魚は意外と平気である。しかし、同じ種類の魚を、ちょっとだけ酸性に傾いた水に「急に」移せば、死なせてしまうことが多いのだ。水草やエビも同様。

 

●水草水槽の立ち上げと熱帯魚水槽の立ち上げは異なる
 水草水槽では水槽の底に土(ソイル)などを敷くことが多く、あるいは大磯砂などを使ってもその下に肥料を敷いてセットすることが多い。また、水草水槽では最初から水草を植えることが多い。したがって、通常、水槽を最初にセットした直後から土や肥料に含まれた有機物や、水草の枯葉の分解が始まる。つまり、魚を入れていなくても水を浄化するバクテリアの餌がそれなりに供給される。一方、底床材を敷かない熱帯魚水槽や大磯砂しか敷かない熱帯魚水槽などでは、魚の排泄物がバクテリアの主要な餌になる。したがって、魚を入れた段階から本格的なバクテリア増殖が始まる。よって、水草水槽と熱帯魚水槽では、当然、水槽内が安定するまでの経過に差がでる。また、立ち上げ方の方法にも差がある。

●ショップの魚の調子は上で手をヒラヒラさせるとよく分かる
 ショップで丁寧にコンディションを整えられた魚は、ショップで餌をもらい慣れている。よって水槽の前や上の方で手をヒラヒラさせると「餌をもらえる!」と思って寄ってくるようになっている。人影におびえやすい性質の小型魚も、ギュウギュウ詰めで餌取り競争が激しいショップの水槽では、餌の気配に敏感に気づいてすぐに寄ってくるものだ。よって、どの種類の魚にでも使えるわけではないが簡単に魚の調子を判断できるので覚えておくと便利な方法と言える。ちなみに水槽のガラスを叩いて魚の反応を見るなどの方法はもってのほか。

●ショップでやっていた餌の種類を尋ねるべし!
 エンゼルフィッシュやネオンテトラのように色々な種類の餌をこだわり無く食べる魚は問題ないが、スカーレットジェムや小型シクリッドなどには食べなれたものでないと口にしない種類がいる。そういう魚の場合、新しい環境に慣れる前に弱って死んでしまうことがよくある。したがって、初心者のうちは魚の種類にかかわらず新しい魚を買うときに必ずショップの店員さんに、そのショップで何を与えていたかを聞いておくと良い。家の水槽に慣れるまでは同じものを与え、それから徐々に他の餌に慣れさせていく。

●人工着色された魚があることを知っておく
 ショップに行くと、体の縁を蛍光色に光らせた透明な魚が「カラー ラージグラス」といった名前で売られていることがある。しかし実はこの魚、もともと「ラージグラス」と呼ばれる透明で地味な魚である。輸出元でその魚に人工的な着色をほどこしているのだ。注射器で蛍光塗料を体内に注入すれば、透明な体のためそれが透けて見える。ただ、この塗料は時間が経つにつれて体外に排出されてしまう。したがって、やがて元の透明な地味な魚に戻ることが多いので注意が必要だ。
 このように蛍光剤が体内に注射されて売られている魚としては、あまり見かけないがコリドラスやメダカなどでもある。

●同じ種類の魚・水草でも呼び方はいくつもある
 たとえば、体長数センチで、尾びれを少し下げ気味に泳ぐ可愛らしい小型魚がいる。日本では「ペンギン・テトラ」あるいは「ペンギン・フィッシュ」と呼ばれている魚だ。この魚には別に「Thayeria boehlkei」という学名もある。また、英語の「Boehlke's Penguin」という名前も与えられている。さらに原産地のポルトガル語だと「Santamariae」という名前がある。そして、やっかいなことに、熱帯魚ショップで売られる場合、このうちのどの名前で売られるかはそのショップ次第である。決まりなどない。よって、一般に、初心者が図鑑などで名前を覚えて買いに行っても目当ての魚を見つけるのは難しいかもしれない。そういう場合は、恥かしがらずにすぐにショップの店員さんに尋ねよう。名前を全部覚えるなんてことは簡単にはできないからだ。

●飼育道具と魚は同時に買ってはいけない!
 魚が健康に育つための環境は、水槽をセットすればすぐにでき上がるものではない。水槽の中に有用な微生物が定着するまで待たなければならない。したがって、絶対に飼育道具と魚を同時に買ってきてはいけない。まずは水槽と水草をセット。そして水槽が落ちついてから魚を購入する。



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